番外編 とある黄金色の髪の冒険者のお話
2022.1.16 第1章内整理の為再掲です。
偶然立ち寄った森の中で出会った冒険者――フィリア・メルクーリ。
そいつはジャイアントラビットに襲われていて、俺たちは助けるために動いた。
恐怖で動けないのか、ジャイアントラビットの攻撃を受けて動けないのか。そいつは見るからになりたての冒険者で、対してレベルは高くないだろうに、なんでジャイアントラビットになんて戦いを挑んだのか。「バカじゃねえの?」と思った。
だけど、違った。
そいつは――フィリアは、騙されたのだ。キブシ村の村長に。
高額な依頼料を払えないからという理由で偽った内容の依頼を出した村長に対して怒りを覚えた。確かに村が貧しいという事情があるのはわかるが、だからと言って虚偽内容の依頼を出していい理由にはならない。結果、フィリアは死にかけたのだ。
キブシ村の村長は偽った内容で依頼を出したことを謝りはしたが、「討伐依頼なのに女の冒険者が来るとは思わず……」とかぬかしやがった。それを聞いた瞬間、俺の中で何かが切れた。
「はあ!? テメッ、マジでふざけんなよ!」
俺は村長を怒鳴りつけた。
けど、色々と言いたいことがあったのに、途中でキールさんに頭を殴られて止められてしまった。言い足りなくて、ちょっとばかりキールさんを恨んだ。
大体、こいつもこいつだ。騙されて、村長のせいで死にかけたのに、なんでこいつは怒らねぇんだ? さっきキールさんに止められたからか? それにしたって、一言くらい何か言ったっていいだろう。
「……お前、あのクソ村長に文句言わなくてよかったのか?」
サルビアに帰る道中、俺は気づいたらそう尋ねていた。
きょとんとしていたフィリアは、それからどこかすっきりした様子で笑った。
「言おうと思ってたんですけど……ディックさんが全部言ってくれたので、それで十分です」
……なんだそれ。意味わかんねえ。
フィリアの笑顔に、なんだか胸がざわついた。
ジョルナルドの安らぎ亭で倒れて、まごころ診療所から戻って来たフィリアは、突然俺に「稽古をつけてほしい」と頼み込んできた。
「強くなりたい」と言ったあいつの瞳は、何かを決意したかのような強い光を宿していた。
断る理由もなかったので頼みを聞き入れれば、あいつは嬉しそうに笑った。
……あいつの笑顔は心臓に悪い。
なんでこんなにざわつくのか。その答えはある日突然降ってきた。
フィリアが武器を片手剣から双剣に変えてしばらく経ち、特訓の為にフィリアが受ける討伐依頼に付き添う為冒険者ギルドに来た日。依頼の手続きをしてくれたヴィーラさんから「二人は仲が良いんですね」と言われて、恥ずかしいというかなんだかむず痒い気持ちになった。
でも、それを知られたくなくて俺は眉間にギュッと力を込めて気持ちを誤魔化した。
「フィリアさん、浮気は良くないですよぉ……」
突然背後に現れたラナさんに驚いたけど、それよりも“浮気”ってどういうことだ?
「私、浮気なんてしてませんけど……」
「してるじゃないですかー。ジークさんがいるっていうのに、ディックさんにうつつを抜かして~」
「「はあ!?」」
フィリアが俺にうつつを抜かしてる!? 何だよ、それ!?
っていうか、なんでジークの名前が出てくるんだよ! 「ジークさんがいるっていうのに」って……まさかこいつ、ジークと付き合って――。
「私はジークさんの恋人でも何でもないですからね!?」
なんだ、そっか。よかった……。
……ん? よかったって、なんだ?
「ディックもただの友達ですし!」
“ただの友達”という言葉が胸に刺さった。……なんでだ?
それに、なんでさっきあいつがジークと付き合ってない事がわかって安心したんだ?
なんだかこれじゃあ、俺がフィリアを好きみたい、じゃ――。
「ディ、ディック……? おーい」
ハッと我に返る。
「大丈夫? どうかした?」
「あ? 別にどうもしねぇよ」
「そう……?」
心配そうにこちらを見てくるフィリアの顔を直視できない。
……おいおい、嘘だろ? 何かの冗談じゃないのか!?
別にフィリアは美少女でも美女でも何でもない平凡なヤツだぞ? 特に目を引くところもない……事もないかもしれないけど、俺がこいつを好きとか、そんな馬鹿な事――。
チラッとフィリアの顔を盗み見れば、その先にいたヴィーラさんやラナさんの表情が目に入って、一瞬のうちに沸騰したみたいに全身が熱くなった。
「手続き終わったんだろ!? さっさと行くぞ!」
「え!? あ、うん!」
自分の気持ちを自覚したのと同時に、ヴィーラさんやラナさんには俺の気持ちが筒抜けになっていることを知って恥ずかしくなる。
それにルディにも完全にバレてる。
あー……クソ! これからこいつとどう接していいかわかんねぇ……。
お読みいただきありがとうございます。
今回はディック視点のお話でした。
楽しんでいただけましたら幸いです。




