第43話 それから・・・
「おねえちゃんっ!!」
アベリア村からサルビアの町に戻って来た私は、カローナと別れてディックたちと共にジョルナルドの安らぎ亭へと帰った。
そして、宿の前にジョルナルド一家が総出て立っているのを見つけた。どうして宿の前にと疑問に思っていると、私に気づいたニコちゃんが声を上げて飛びついてきた。何だか既視感を覚える。
「皆さんおかえりなさい」
「おかえりなさい」
「ただいま」
抱き上げているニコちゃんからは、ずずっという鼻をすする音が聞こえた。
……私はまた、ニコちゃんを泣かせてしまった。
セレナさんたちが宿の前にいたのは、私たちの帰りを待っていてくれたのだろう。
「心配をおかけしてすみませんでした」
いつもだったら朝に出かけて、夕方には戻って来る訪問診療だ。それが一日帰って来なかったとなれば、優しいこの人たちの事だ。心配するに決まっているじゃないか。村の人にお願いして、一言「今日は帰れない」と連絡をするべきだったと後悔した。
「ちょっと予定よりも時間がかかってしまって、村で一泊させてもらったんです」
帝国の兵士との戦いについては話せない。言ったら余計に彼らを心配させてしまう。
私は、宿につくまでの間に考えていた帰って来れなかった理由を伝えた。
「そうだったのね……。何事もなくて良かったわ」
「ディックさんたちは?」
「仕事先でまたガルアさんがやらかしてね……」
アルドくんに聞かれてキールさんが答えれば、その一言で「あー」とグレイグさんたちが納得の表情を見せた。ガルアさん……。
どうやらディックたちはグレイグさんたちには仕事に行くと言って、アベリア村まで来てくれたようだ。
昨日は話を聞く暇がなかったから、あとでディックに助けに来てくれた時の事を詳しく聞いてみよう。気になっていたから。
「おねえちゃん、けがない?」
「どこも怪我してないよ。また心配かけてごめんね」
心配してくれたニコちゃんに謝れば、ニコちゃんはぶんぶんと首を横に振った。
すると、ニコちゃんの視線が私の来ている服に止まる。
「……? なんでおようふくちがうの?」
おおっ、そこに気づくか。……いや、見たら気づくか。
「治療の時に汚しちゃってね……。着替えたんだ」
本当は帝国の兵士たちとの戦いで汚しちゃったからだけど、そんな事ニコちゃんたちに言えるわけがない。
「ニコ。フィリアたち疲れてるだろうから、飯用意して休んでもらおうぜ」
「うん!」
「ニコ、食器の準備しよう」
「する!」
ニコちゃんを地面に下ろし、アルドくんがニコちゃんの手を取って宿の中へと消えていく。セレナさんも二人について行った。それを見送っていると、グレイグさんが意味ありげな視線を向けて来た。
「治療で汚しちまうとは……大怪我した村人でもいたのか?」
「いえっ! 治療しようとしてすっ転んで薬を被っただけですよ」
「……ま! そういう事にしといてやるよ」
……はい。そういう事にしといてください。
「ところでフィリア。帰って来て早々悪いが、ひとつ仕事を頼んでもいいか?」
「なんでしょう?」
「実は俺たちの大事な大事な愛娘が、ものすごく寂しい思いをしちまってなぁ……。フィリアには今日一日、遊び相手になってもらいたいんだが……もちろん、無償で!」
「喜んで!! 務めさせていただきます!!」
なんなら今日一日と言わず、今週は冒険者業を休んですべての時間をニコちゃんに捧げさせていただきます!
「ハハッ。よろしく頼むな」
「はい!」
さあて。まずはニコちゃんと何をして遊ぼうかな?
これにて、『モブに転生しました。』は完結となります。
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