第42話 帰ろう
「お世話になりました」
「いやいや! 命の恩人にこれくらいするのは当然じゃよ」
帝国の兵士たちを撃退した私やディックたちは、アベリア村のみんなのご厚意で村に一泊させてもらった。
「ただ、これくらいしかお返しができず申し訳ない……」
「いえいえいえ! 昨日のは私が勝手に飛び出してやった事ですし! 泊めてくれて、ご飯とか替えの服まで用意してもらって、十分すぎる程です!!」
昨日の帝国の兵士たちとの戦いで、私が来ていた服や防具は彼らの返り血がついてしまい汚れてしまっていた。それを見たムラク村長が着替えを用意してくれたのだ。
「あの状態のまま帰ったら大騒ぎだったろうな。ニコとかアルドは絶対に気絶するだろ」
ディックの言葉に、私は大きく頷いた。あれを見せたら絶対に二人にトラウマを植え付けてしまっていた事だろう。替えの服を用意してくれたのは本当に助かった。
「診療については後日また改めて伺います」
「わかりました。よろしくお願いします」
カローナがムラク村長に伝えた。
帝国の兵士たちが襲ってきたせいで、その日の訪問診療が全て行えなかったのだ。他の回る予定だった村にも事情を説明しに行かなければならないと、カローナは言っていた。
それを聞いて私も一緒に回ると言ったら、「フィリアちゃんはお休みしなさい!」と怒られてしまった。村で十分休ませてもらったから、全然大丈夫なんだけどなぁ……。
「ムラク村長、みなさん。本当にありがとうございました!」
「もう何言ってるのフィリアちゃん! お礼を言うのは私たちの方よ!」
「そうそう! 兄ちゃんたちもありがとな!」
「いや、俺たちは……」
ディックたちの周りに村のみんながわらわらと集まっている。
あらあら? ディックってば、若い女の子に囲まれちゃってまぁ……。あんなに戸惑っている様子のディックは初めて見た。ちょっと面白い。ルディさんやキールさん、ガルアさんまでもがモテモテだ。
しばらくディックの様子を見ていれば、ムラク村長に声をかけられた。
「ところでフィリアさん。あの石材は本当に貰ってもいいのかい?」
ムラク村長が言う“あの石材”というのは、昨日砕いた岩壁の土砂で作った石のブロックの事だ。
昨日中にすべての岩壁を壊し終えた私は、積もりに積もった土砂を片付ける為、地属性魔法の“ストーン”という魔法を使用した。これは砂を固めて石を作り、相手に飛ばす技だ。
これを利用して、私は石のブロック作りに挑戦した。
最初は思った通りに土砂を固めることが出来ずに苦労したが、何度も繰り返しやっていくうちにコツを掴む事ができ、形の整った石のブロックを作り出すことが出来た。
「はい! ぜひ! 私が持っていても使う時がないので……。なんだかいらない物を押し付けるみたいですみません……」
「ああいや、とんでもない! これだけの石材を無償で貰えるのは、こちらとしては大変有難い事じゃよ!」
「そう言っていただけて嬉しいです!」
「訪問診療といい、今回の事といい、フィリアさんには助けてもらってばっかりじゃのぉ……。それなのに私たちの方はちゃんとお返しが出来ないのが本当に申し訳ない……」
「いえいえそんな!」
「何か困った事があったら何でも言っておくれ。フィリアさんの頼みなら、喜んで引き受けるからの」
いやもう本当に十分にお返ししてもらいましたよ!
マルタさんからは大きな白菜をたくさん頂いちゃったし、他のみんなからも色々と頂いて、着替えの服だって用意してくれた。それから美味しいごはんも食べさせてもらったし、これ以上は――……あ、そうだ!
「それじゃあ、お言葉に甘えてひとついいですか?」
「なんじゃ?」
「まだ片付けられてない土砂があるので、また石ブロックを作りに来てもいいですか? 魔法の練習になるので……」
「! もちろん! いつでも大歓迎じゃよ」
「ありがとうございます!」
良かった! 許可を貰えた!
さっそく明日、また村に来よう。こういうのは感覚を忘れてないうちにやった方が良いだろうから。
とりあえずはもう少し正方形とか長方形の石のブロック作りに専念して、今よりも早い時間で作れるようになったら、今度は他の形の成形に挑戦してみよう。
「フィリアー! 帰るぞー!」
「はーい!」
ガルアさんに呼ばれて、彼らの元へ走る。
アベリア村のみんなに見送られながら、私たちは用意してもらった馬車に乗りサルビアへの帰路に着いた。




