第38話 戦闘開始
残酷な描写がありますので、お読みになる際はご注意ください。
「何だ貴様は?」
「この村の者です。見たところ、皆様はルーイン帝国の方々のようですが……このような小さな村に何のご用でしょうか?」
村の入り口から出たところで帝国の兵士たちを出迎える。ざっと見たところ、帝国の兵士は30人はいた。奥にもまだ兵士が並んでいるから、30人以上いるのは確実だ。やっぱり救援を呼んで来るように頼んで正解だった。
「貴様のような小娘に話す事などない。今すぐにこの村の長を呼べ!」
「あいにくと村長は所用で出かけておりまして……。祖父の代わりに私がお話を伺います」
「ほぉ? 貴様、村長の孫か?」
「はい。そうでございます」
嘘だけどね。
応援が駆け付けられるよう、少しでも多くの時間を稼ぐ為に出来る限り話を引き延ばさないと……。
「そうか……。では、単刀直入に言う。我らが偉大なる王――ヴォルスト皇帝陛下に忠誠を誓え」
……はい?
唐突にやって来て他国の王に忠誠を誓えとはこれ如何に。
「今ここで忠誠を誓えば、貴様たちの命は助けてやろう」
……うん。意味が分かりません。
「あの、大変申し訳ございません。仰っている意味がよくわからないのですが……」
目の前にいる、一人だけ鎧の形が違う恐らく隊長であろう兵士に聞いてみれば、彼は苛立った様子を見せた。
「この国も大陸も、近いうちに我らが偉大なる王のものとなる! 今この場で我らが偉大なる王に忠誠を誓い、我らに力を貸すならば、貴様たちの将来を保障すると言っている!!」
うん。ごめん! やっぱり意味がわからない!
「ぐあああっ!?」
どう返答しようか悩んでいると、突然小さな爆発音と叫び声が聞こえた。それも帝国の兵士たち側から。……なんで?
「隊長!」
あ、やっぱり隊長で合ってた。
「どうした!?」
「と、突然この者が爆発しました!」
見てみると、黒焦げになった帝国の兵士がひとり地面に倒れていた。身体からは煙が立っているし、お腹の辺りがぽっかりと穴が開いてしまっている。
段々と嫌な臭いが漂ってきて、思わず鼻と口を手で覆う。それに亡くなった兵士の余りの無残な姿を見て、気持ち悪くなってきた。
「き、貴様ぁ!! 私の大事な部下を殺したなぁ!?」
はいぃいいいいい!?
何でそうなるの!? 私、今一歩も動いてないし、魔法だって発動してませんけど!? 一体何がどうして……ハッ! まさか――!?
「下手に出てみれば、こちらの提案を拒否したばかりか部下を殺すなど……!! 鬼畜の所業!!」
いや、最初から最後まで高圧的な態度で下手になんて出てなかったし、最後の言葉はそっくりそのままお返しします!!
あの兵士……おそらくは身体に爆弾を仕掛けられていて、それを爆発されたのだろう。帝国側が村を攻撃する理由付けの為だけに……。
その証拠に、さっき目の前にいる隊長がにやりと笑ったのを見逃さなかった。
帝国は、目的の為なら平気で味方を殺すのか――!!
「同胞の無念を晴らす為、貴様らは全員皆殺しだぁああああああああああ!!」
「ウォオオオオオオオオオオ!!」
隊長が腰に差していた剣を抜いて叫べば、それに同調して他の兵士たちも次々と武器を手に取り雄叫びを上げた。
「ロックウォール!!」
私は地属性の魔法を用いて村を守る為の岩壁を築いた。突然現れた岩壁に帝国の兵士たちがたじろぐ。
「フィリアちゃん!!」
後ろから叫び声が聞こえて振り返って見れば、必死の形相で私の方へと走ってくるカローナがいた。
私は彼女を心配させないように、笑った。
「大丈夫です!!」
自分の背後にも岩壁を築く。これでそう簡単に帝国の兵士はアベリア村に侵攻できなくなった。
私は二本の剣を抜き、構える。
「……フッ……フハハハハハハハッ!! 貴様のような小娘が一人で我らの相手を!? まったくもって滑稽だなあ!!」
隊長が大笑いしている。それにつられるようにして周りの兵士たちも笑い出した。
辺り一帯に帝国の兵士たちの笑い声が響き渡る。
「小娘一人で我らに敵うわけないだろう!? ……いや。貴様、見た目はそこまで悪くないからな……。相手をするというなら、武器ではなくその身体で相手をしてもらおうか」
下卑た笑いを浮かべた隊長が馬から降りてこちらに近づいてくる。その顔はとても不快で、気持ちが悪い。
「それに村にも若い娘がいるだろう? どうだ? 今ここで降参すれば、貴様たちを――」
ゴトリ、と地面に首が落ちた。
結構簡単に人間の首って落ちるものなんだな、と冷静に考える自分がいた。
「え……?」
「た、隊長……?」
彼の部下である兵士たちは、目の前で起きた事がすぐに理解できなかったのだろう。兵士たちが叫び出したのは、それから二拍ほど間をあけてからだった。
「き、貴様ぁああああああ!? よくも……よくも隊長を――!!」
馬に乗り剣を振りかざして向かってきた若い兵士に向かって、ファイアボールを放つ。正面から一直線に向かって来てくれたおかげで簡単に術は命中した。
火の弾を受けた兵士は馬から崩れ落ち、もがき苦しみながら燃えている。
相手は殺す気でかかって来てるし、味方を惨いやり方で平気で殺すような連中だ。何より何の罪もない人を殺そうとした。情けも何もかもいらないだろう。
こちらにはカローナやアベリア村の人たちの命がかかってるんだ。
彼女たちを守る為ならば、鬼畜にでも何でもなってやる。
「うおぉおおおおああああああああっっ!!」
残った帝国の兵士たちが一斉に向かってきた。
――不思議と、恐怖はなかった。




