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第37話 訪問診療


 年が明けて、今年二回目の訪問診療の日となった。

 いつものようにまごころ診療所までカローナを迎えに行って、彼女から荷物を受け取り一緒に馬車に乗って訪問先であるアベリア村に向かった。


「おお。カローナ先生、フィリアさん、こんにちは」


 村に入った時、丁度村長であるムラクさんと出会った。彼に続いて丁度外に出ていた何人かの村人たちも私たちに気づき、わらわらと集まって来た。


「二人共見とくれよ! 立派な白菜ができたんだ!」

「まあ!」

「おっきいですね!」


 村人のマルタさんが持って来た白菜は、普通のものより一回りも大きい白菜だった。こんなにも大きい白菜は、前世でも見た事がない。


「たくさんあるからね! たくさん持ってっておくれよ!」

「えっ!? いえ、そんな頂けませんよ!」


 こんなに大きいのだから、それだけ高い値段で買い取ってもらえるだろう。そんな大事なものをタダで貰うなんて出来ない。


「そんな事言わずに! 二人にはいつも世話になってるから、そのお礼だよ! ……まあ、在庫処分っていうのもあるんだけどね?」

「え……?」

「ぶっちゃけて言っちゃうと、こんだけ大きく育っちまうとね、出荷にかかる費用も高くなっちまうんだよ。加えてこんな大きさだと店先に数が並べられないし……。豊作貧乏ってヤツさ。かといって、丹精込めたこの子たちを廃棄するのもねぇ……。だから、二人に貰ってもらえたら嬉しいなーってね」


 なるほど。そんな農家事情があるのか……。

「ごめんねぇ」と謝るマルタさんに、私もカローナも首を横に振る。こちらとしては、こんなにもおいしそうで大きい白菜を貰えるのは有難い事だから。


「ありがとうございます。頂きます」

「こちらこそ! ありがとうねぇ」

「それじゃあ、カローナ先生。フィリアさん。今日も宜しくお願いしますね」

「はい!」


 各家庭に訪問する際に邪魔になってしまうので、マルタさんから貰った白菜をマジックバックに仕舞う。


 さて! 今日も頑張って手伝うぞ!




◇   ◆   ◇




「ありがとねぇ、フィリアちゃん」

「いえいえ~。でも、もう無理しちゃダメですよ?」

「ははは……」

「もっと言ってやっておくれ! フィリアちゃん!」


 高いところにある物を取ろうとして腰を痛めてしまったというスヴェルおじいちゃんを、光属性の回復魔法“キュア”を使って治療する。すっかり治ったスヴェルおじいちゃんは立ち上がると、「おおっ! 痛みが消えたわい!」と元気に動き回る。また痛めてしまわないか心配していると、案の定、奥さんであるネルおばあちゃんに「調子に乗るんじゃない!」と怒られてしまったスヴェルおじいちゃんを見て、ちょっと笑ってしまった。


「お疲れ様、フィリアちゃん」

「いえいえ!」

「スヴェルさん。これ、いつもの塗り薬です」

「ありがとう。助かるよ」


 カローナがスヴェルおじいちゃんに渡したのは、訪問診療に来れない間にまた腰など身体を痛めてしまった際に塗る、痛みを和らげる効果のある塗り薬だ。


「ネルおばあちゃんの方はお加減に変わりはないですか?」

「アタシの方は大丈夫だよ! 見ての通りピンピンしとる」

「それは何よりです。それじゃあ、次のお宅に行きましょうか」

「はい!」


 スヴェルおじいちゃんとネルおばあちゃんに見送られて、私たちには家をあとにする。


「えーっと、次のお宅は……」

「ジョレノさんの家ですね!」

「ふふ。フィリアちゃん記憶力良いわよね。若いって良いわねぇ……」

「カローナさんもまだまだ十分若いですよ!」

「あら、ありがとう」

「おい、なんだアレ?」


 カローナさんとお喋りしながら次の訪問先に向かっていれば、傍を通った村人の一人が何かに気づいた。

 何だろうかと彼の視線の先を追って村の入り口の方を見てみれば、何やら土埃を起こしながら何かが村に向かって来ているのが見えた。


「ちょ、ちょっとあれ……!! 帝国の旗じゃ……!?」


 段々と村に近づいてくるそれは、馬に乗った数十人の兵士たちの一団で。その一団はルーイン帝国を象徴する己の尾を噛んで輪の形となっている竜が描かれた旗を掲げていた。

 私は無意識に拳を握りしめていた。


 ――ついに、来た……。

 アイツらが村を襲い、村の人たちやカローナの命を奪った帝国の兵士……。


「どこ行くの!? フィリアちゃん!?」

「カローナさんは帝国の兵士が来た事をムラク村長に伝えてください。それから、皆さんは安全な場所に避難していてください!」

「フィリアちゃんはどうするの……?」

「とりあえず、何しに来たのかを聞いてきます」


 まあ、聞きに行かなくてもゲームをやっていたから話は知っているんだけどね。アイツらはこの大陸を手中に収めるために、まずは国の中でも防衛力の低い村々を襲っては恐怖を煽ってくるのだ。

 確か、ゲーム開始時点ではもうどこかの国を支配下に置いていた気がするが……。


「やめとけよ! あいつら、半年前にアセビ王国を奪い取ったヤツらだぜ!? あぶねえって!!」


 ああ、そうだ。アセビ王国だ。ルーイン帝国との戦争に負けて、帝国の支配下に置かれてしまった国。ゲームだと主人公がルーイン帝国を倒したおかげで帝国の支配から解放されて、王国の再建に励んでいるという事がエンディング後に語られていた。


「そうよ! 逆らった者は容赦なく殺すって話だし……。ここは村長の意見を仰ぎましょう!?」


 それじゃあ、アベリア村はあの兵士たちに逆らったから襲撃されたという事か……?


 ……いや、それは違うだろう。


 確かゲームでは帝国に従う意思を見せた人が殺されるシーンがあった。

 それにゲームでのルーイン帝国はこの国――カルミア王国を手に入れるために、一方的に幾度も襲い掛かってきた。……まあ、それはすべて主人公に返り討ちにされているが。

 だから、今この村に向かって来ているあの兵士たちも逆らう逆らわないにかかわらず襲ってくる可能性がある。それこそ、恐怖を煽る為に。


「あんまり待ってくれるような人たちには見えませんけど……」

「それでも、あなたが危険を冒す必要はないわ!」

「大丈夫ですよ、カローナさん! 私、これでも結構強いんですよ?」

「フィリアちゃん……」

「あー、でも……私が時間を稼いでいる間にバレないように救援を呼んで来てもらってもいいですかね?」


 さすがにあんな大人数を一人で相手するのは骨が折れそうだから。


「あ! あと、カローナさん荷物預かっててもらっていいですか?」

「え? ちょ……!」

「それじゃ、行ってきます!」

「フィリアちゃん!!」





 カローナさんを、この村のみんなを、絶対に助けるんだ!!




お読みいただきありがとうございました。


いつもブックマークや評価を頂き、ありがとうございます。とても嬉しく、励みになっております。また感想とレビューもありがとうございます!

これからもどうぞ『モブに転生しました。』を宜しくお願い致します。

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