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第36話 ジークからまさかの・・・


「はい。確認しました。納品いただいたサルサの実とレドの実はすべて高品質ですので、依頼達成となります」

「ありがとうございます」

「同時に受けたマッシュルの討伐依頼と合わせた報酬額はこちらになりますが、いかがなさいますか?」

「口座に送金でお願いします」

「かしこまりました。手続きいたしますので、少々お待ちください」


 Fランクの時は基本的に素材採取中心で依頼を受けていたから、受け取れる報酬はそんなに多くなかった為すべてその場で受け取っていたけれど、Eランクになってからは魔物討伐の依頼を多く受けるようになり、またFランクよりもEランクの方が貰える金額が大きいので、こうして複数依頼を受けて多くの報酬額が受け取れる際などは基本的に口座に送金してもらうようにしている。


「お待たせいたしました。手続きが完了しましたので、こちらをお返しします」

「ありがとうございました」

「お疲れ様でした。……そういえば、フィリアさんクリスマスはどのように過ごされたんですか?」


 ん? なぜ突然クリスマスの話題に?

 ヴィーラさんの質問に意図はわからなかったが、私は普通にグレイグさんたちやディックたちとパーティーとプレゼント交換をして楽しんだ事を伝えた。


「プレゼント交換?」

「はい。各々が持って来たプレゼントに紐をつけて、どれにつながってるかわからないようにしてからそれぞれ紐を選んで引っ張った時について来たプレゼントを貰うっていうやつです」

「まあ! 楽しそうですね!」

「ヴィーラさんはどうでした? クリスマス。どなたかと過ごされたんですか?」


 何気なく聞き返して見れば、プレゼント交換の話を聞いて笑っていたヴィーラさんが固まった。


 ……あれ? 私、もしかして聞いちゃいけない事を聞いちゃった……?


「ダメですよ~、フィリアさん! ヴィーラさんにその手の話題を振っちゃ!」

「ラナさん!」

「クリスマスを一緒に過ごす予定だった彼氏が二股してたことが発覚して、ヴィーラさんは一人さみしーくクリスマスを過ごしたんですから!」

「え゛っ!?」


 耳打ちしてきたラナさんの話に私は言葉を失う。

 知らなかったとはいえ、とんでもない事を聞いてしまった!


「ヴィ、ヴィーラさんすみません! 私……!」

「いえ……。フィリアさんは知らなかった事ですし、仕方ないです……が! ラナ! そんな事フィリアさんに言わなくていいでしょう!」

「え~? だって、ヴィーラさん咄嗟に答えられなかったじゃないですか~」

「うっ……。そ、それに! クリスマスは一人で過ごしたわけじゃないわ! 同僚と一緒にパーティーしたもの!」

「とか何とか言ってますけど、クリスマス当日の夜に突然呼び出されたんですよ。“飲むわよ!”って。もう~あの時のヴィーラさんは大変だったんですから!」

「ラナ!!」


 何と言うか……。お疲れ様でした……?

 そして、ヴィーラさん本当にごめんなさい。


 それにしても、ヴィーラさんみたいな美人と付き合えているのに二股するなんて……相手の男はとんだ大馬鹿野郎だな。


「そういえばフィリアさんがさっき言ってたプレゼント交換? 面白そうですね! ヴィーラさん、来年私たちもやりましょうよ!」

「ええ、そうね。フィリアさん、プレゼントにつける紐は何でもいいんですか?」

「何でもいいですよ。……あ! でも、色は一色に統一してください。どのプレゼントにつながってるかわかりにくくするために」

「なるほど……。わかりました。ありがとうございます」

「ところで……」


 何やらニヤニヤしたラナさんが私にすり寄って来た。何だろう? ちょっと気持ち悪い。


「そのプレゼント交換でディックさんからはどんなプレゼントを貰ったんです?」

「へ?」


 なぜにディック?


「ディックのプレゼントは当ててませんよ」

「「えっ!?」」


 おおっ。ラナさんとヴィーラさんの声がハモッた。


「私が当てたのはニコちゃんのプレゼントの肩たたき券です!」

「か、肩たたき券……」

「そ、それじゃあディックさんから個別にプレゼントを貰ったり……」

「? 貰ってませんよ?」

「「ええっ!?」」


 またハモッた。それに二人共何だか残念そうな表情だ。私がディックのプレゼントを当てられなかったから?

 ……でも、なんでだろう?


「ちなみに、ディックさんが用意したプレゼントは何だったんですか?」

「髪留めです。セレナさんが当ててましたね」


 シルバーの金属で出来た蝶を模した透かし彫りの髪留め。緑色の石がはめ込まれた綺麗な髪留めは、割と値段が張りそうなものだった。

 ちょっとセレナさんを羨ましく思ってしまったのは、ここだけの秘密だ。


「あっ! フィリア!」

「ジークさん!」


 何やらこそこそとヴィーラさんとラナさんが話している様子を不思議に思っていれば、ジークさんがやって来た。


「良かった、会えて」

「どうかしたんですか?」

「これを渡したくて」


 少し照れた様子でジークが差し出してきた綺麗にラッピングされた袋を手に取ると、何やら硬い物が入っている感触がした。


「これは……?」

「開けてみて」


 言われたままに袋を開けて中に入っている物を取り出して見れば、それは髪留めだった。ディックが用意した物と同じシルバーの金属で作られたものだが、こちらは薔薇に似た模様の透かし彫りで、所々に赤色の石がはめ込まれている。


「綺麗……」

「クリスマスプレゼントだよ」

「え……?」

「と言っても、もう過ぎちゃったけど……。当日に渡したかったんだけど、タイミングが合わなくて……」


 ……嘘でしょう……?


 ジークが……私にプレゼントを?


「お店で見つけて、フィリアに似合いそうだなって思ってさ」

「あ、ありがとうございます……。大事にします……!」


 嬉しい……。嬉しすぎて涙が出そうだ……。

 これはもう家宝にしよう。もったいなくて使えない。


「……あ! でも私、ジークさんに何の用意も……」

「いや! これは俺が勝手に用意しただけだから、お返しも何もいらない。喜んでもらえただけで十分だよ」


 ジーク!! イケメン!! 本当にありがとうございます!!


 こんなに嬉しい事があっていいのだろうか!?

 まさかの推しキャラからのプレゼント! これは私、明日死ぬんじゃなかろうか!?



「――ヘタレディック……」



 ジークからのプレゼントに感激していた後ろで、ラナさんがそんな事を呟いていた事に、私は気づかなかった。




がんばれ、ディック!!

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