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第35話 クリスマスパーティー


 ガルアさんがサンタさんを信じているニコちゃんに、無情にも真実を暴露してしまった日から数日。とうとうクリスマス当日を迎えた。


 あの後、セレナさんが泣きじゃくるニコちゃんをなんとか宥めようとしたけれど、幼心を傷つけられたニコちゃんの涙はそう簡単には治まらず。

 しまいにはニコちゃんは「プレゼントなんていらない!」「クリスマスきらい!」とまで言い出してしまった。

 本当になんてことしてくれたんだ、ガルアさん!!


 泣いているニコちゃんをセレナさんだけでなく、私やディックたちも加わって落ち着かせることに成功し、それからクリスマスの日をどうしようかと考えた。


 サンタさんの正体はガルアさんのせいでバレてしまったわけだし、もうニコちゃんはワクワクとした気持ちでプレゼントを待つことなどできない。このままではパーティー自体もあまり楽しめないかもしれない。


 そんな寂しい思いはさせたくない私が思いついたのは――。



「はーい! 皆さん、全員紐は持ってますかー?」



 そう! プレゼント交換!


 この世界ではプレゼント交換という文化がなかったのか、最初に提案した時はみんな首を傾げていたが、説明をしていくうちに面白そうだと賛同してくれて、ニコちゃんも「やりたい!」とすっかり笑顔を取り戻していた。


「持ってるぞー」

「それじゃあ、掛け声と共に紐を引いて下さいね。せーの!」


 私の掛け声とともに、みんなが一斉にプレゼントにつながっている紐を引っ張った。各々がプレゼントを手に取り、何だろうかとどこかワクワクとした表情で開けていく。


 私が取ったのは、小さな袋。とても軽くてカサッという音がしたが、一体何が入っているのだろうか?

 ドキドキしながら袋の口を開けて見てみれば、中には短冊形の紙が一枚入っていた。取り出した紙には“かたたたき券”と書かれている。使用回数が五回ある肩たたき券だ。


 この字は間違いなく……。


「あっ! それニコのプレゼント!」


 やっぱりそうだ! ニコちゃんらしい、なんとも可愛らしいプレゼントだ。


「素敵なプレゼントありがとうね、ニコちゃん」

「えへへ~」

「ニコちゃんは何貰ったの?」

「えっとねー……」


 ニコちゃんが持っている座布団程のサイズのある割と大き目な袋に包まれていたものは、袖や裾にレースやフリルがあしらわれたワンピースだった。ニコちゃんにとてもよく似合いそうだ。


「かわいいっ!」

「本当だね」

「気に入ったか? ニコ」

「うん!」


 グレイグさんがやって来て、ニコちゃんの頭を撫でる。


 ……ふむ。どうやらあのプレゼントを用意したのはグレイグさんのようだ。嬉しそうにワンピースを持ってクルクルと回っているニコちゃんは、すっかりご機嫌だ。良かった。

 それにしても、あのプレゼントをもしニコちゃん以外の人が取っていたらどうなっていただろうか……。


「なんだ? これ……」


 ディックの声がして振り返って見れば、彼の手には私が用意したプレゼントがあった。


「私のプレゼントはディックに当たったんだね」

「え?」

「それ、ミサンガって言うの。お守りだよ」


 どこかお店で買った物を用意してもよかったのだが、どうせなら何か手作りの物を送りたいなと考えた結果、おしゃれだしお守りにもなるミサンガを編むことにした。


「ミサンガなんてお守りあるんだねぇ。初めて知ったよ」

「フィリアの村では流行ってるのか?」

「えっ!? い、いえ! 前に本で読んだ事があったので、作ってみただけですよ」


 ミサンガって、この世界では存在しない物なのね……。焦ったぁ……。


「お守り、ねぇ……」

「その紐が切れるとね、願いが叶うんだって。白と赤とオレンジのやつは勝負運を上げるもので、利き足の足首につけてね。白と赤とピンクのやつは恋愛運を上げるものだから、利き手の手首につけてね」


 ディックにミサンガについて説明していれば、彼の肩がわ振るえていることに気づいた。


「ディック? どうかした?」

「どうしたもこうしたもねえ!! なんで恋愛運なんか上げなきゃいけねえんだよ!?」

「まあまあ、そんな怒らないで。せっかくフィリアがディックの為に作ったプレゼントなんだからさ。ね? フィリア?」


 ディックの為というか、このプレゼントを手にした人を想って作った物なのだが……まあ、結果的にディックが手にしたのだから、ディックの為というのは嘘ではない……か?


「うん」

「……!?」

「えっと、こっちが手首で、こっちが足首ね。……よし! 出来た!」

「あっ!? ルディ! テメッ、勝手に……!」


 なぜかディックが固まっている間に、ルディさんが二つのミサンガをそれぞれディックの利き足と利き手につけた。


「フィリアァ……」

「うわっ!? びっくりした……。どうしたんですか? ガルアさん」


 突然背後から暗い声がして驚いて振り返れば、何やら落ち込んだ様子のガルアさんがそこにいた。一際存在感を放っていた両手剣は、ガルアさんの手に渡ったようだ。


「なあ、このプレゼント交換やり直さないか?」

「え? なんでですか?」

「自分で用意したプレゼントを自分で引いちまったんだよぉおおお!!」


 あー……その武器、ガルアさんが用意したんですね。なんとなくそんな気はしてましたが……。


「自業自得だ、ガルア。男ならうだうだ言ってんじゃねえぞ!」

「でもよ~」


 両手剣を抱きしめながら泣き崩れたガルアさんをどうしようかと悩んでいたところに、グレイグさんが来てくれた。ガルアさんはグレイグさんにお任せしよう。


「おねえちゃん! おねえちゃん!」

「ん? どうしたの? ニコちゃん」


 駆け寄って来たニコちゃんが手招きをするので、しゃがんで目線の高さを合わせてみれば、ニコちゃんがこそこそと耳打ちした。


「またみんなでプレゼントこうかんやろうね!」


 ニコちゃんはこのプレゼント交換がすっかり気に入ったようだ。楽しめたようで、本当に良かった。


「うん。またやろうね!」






 ――この時の私は、来年もまたみんなで楽しいクリスマスパーティーができると信じていた……。




お読みいただきありがとうございました。

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