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第34話 言っちゃダメ!!


「もうクリスマス一色って感じだな」


 この間の訪問診療も特に何事もなかったなぁ、とディックと共に魔物の討伐依頼を終わらせた帰り道に何気なく考えていると、町の様子を見てディックが言った。


「うん。明後日だもんね、クリスマス」


 ゲーム「オリヴィリア」でのクリスマスと言えば、ジークたち攻略キャラとの恋愛イベントを思い出す。クリスマスを迎えるまでに攻略キャラと恋人関係になっていれば、クリスマスの前日に攻略キャラからデートのお誘いがあって、当日にはサルビアの広場にある大きな樹の下で愛を紡いでくれるのだ。


 ゲームにはボイスの実装がされていなかったからテキストで流れる文字を読んで自分の脳内で声を想像するしかなかったけど、今の私はジークの生声を何度も聞いているからね! その声であのイベントシーンを脳内で再生すると――ヤバイ。顔がにやけてしまう。

 彼のあの声で「……俺は君が好きだ。これから先も、ずっと……俺のそばにいてほしい」なんてプロポーズまがいのセリフを言われた日には、私はきっと嬉しすぎて昇天してしまうだろう。


 ……なーんて。そんな事絶対にありえないけどね。


「キモイ」

「藪から棒に!?」


 ディックがとても冷たい目で私を見ている。普通に傷つくのでその目で見るのはやめてほしい。


「にやけ面がキモイ」

「二回も言わないでよ! しかも具体的に!」


 ゲームのジークのクリスマスイベントをボイス付きで脳内再生していた時の顔を見られてしまったのか……。恥ずかしい……。

 というか、なんかディックってば私がにやけてる時の当たりが強いような気がするんだけど……?


「さっさと帰んぞ」

「あ、待ってよ!」




◇   ◆   ◇




「ただいま戻りましたー」

「おかえりなさーい!」


 ディックと共にジョルナルドの安らぎ亭に戻って来れば、食堂からニコちゃんがパタパタと駆けて来て私に飛びついた。


「ごはんできてるよ! たべる?」

「うん! 荷物を置いたら食べに行くね」

「わかった!」


 私から離れたニコちゃんは、また食堂へと戻っていった。その姿を見送って、私は荷物を置くためにディックと共に二階へと続く階段を上る。


「そういえば、ディックたちって大部屋に泊まってるよね?」

「あ? ああ。ちょうどベッドが4つあるし、一部屋ずつで泊まるより安上がりだしな」

「賑やかそうでいいねぇ」


 今までは特に気にした事はなかったが、グレイグさんたちやディックたちと知り合ってから毎日が楽しくて、一人で部屋にいるのがなんだか寂しく思う時がある。ニコちゃんもすっかり回復して、一緒に眠らなくなって久しいし。


 私って、こんなに寂しがり屋だったっけ……?


「賑やかなんて可愛いもんじゃねーよ……」

「え?」

「部屋を散らかせばキールさんに怒られるし、夜はガルアさんのいびきがうるさくて眠れねーし。ルディからは……」


 そこでディックの言葉が止まった。ルディさんがどうしたのだろうか?

 チラッと私に視線を向けたディックの行動の意味がわからず、首を傾げる。


「……まあ、いいや。とにかく大勢で泊まっても良い事なんてねーよ。むしろ一人部屋のお前が羨ましいぜ」

「とかなんとか言って……自分だけ一人部屋にするっていう選択はしないんだね」

「は……?」

「なんだかんだ言って、ディックはガルアさんの事たちが大好きなんだねぇ……」


 本当に嫌なら一人だけ一人部屋を取って泊まる事は出来るはずだ。それをしないって事は、そういう事でしょう。

 ふふ。いいなぁ。


「テメェ、フィリア!!」

「うわ~。ディックが怒った~」

「待て、コラ!!」


 今の怒鳴り声は全然怖くなかった。これは、“照れ”だね!

 ディックに捕まらないように、私は自分の部屋に飛び込んだ。




◇   ◆   ◇




 支度を済ませてディックと共に一階に降りて食堂に入る。席に着けば、アルドくんとニコちゃんが夕ご飯を運んで来てくれた。

 そして、いつもと同じようにアルドくんとニコちゃんと一緒にご飯を食べる。


「ニコね! サンタさんに“おっきなぬいぐるみをください”っておねがいしたの!」

「そっかぁ。ニコちゃんは良い子だから絶対に来てくれるよ!」

「ほんとうっ!?」


 ぱあっと顔を明るくさせたニコちゃんは、「はやくきてくれないかなぁ、サンタさん……」と呟く。その様子が可愛くて、思わず笑みが漏れる。

 私もニコちゃんくらいの年齢の時には、同じようにサンタさんからのプレゼントが楽しみで楽しみで仕方がなかった。


「楽しみね、ニコ」

「うん!」


 そういえば、私は何歳までサンタさんを信じていたんだっけ……。

 私がサンタさんの真実を知ったのは、確か――。


「何言ってんだ、ニコ。サンタなんて存在しねぇぞ! プレゼントを用意してくれてんのは、グレイグやセレナなんだぜ!」


 そうそう。確かこんな風に、小学校に上がる前に幼稚園で同じクラスだった男子にバラされたんだっけ……って、え!?


 驚いて振り返って見れば、そこには仕事から帰って来たガルアさんとキールさんとルディさんがいた。キールさんとルディさんは、信じられないといった様子でガルアさんを見ている。私も彼らと同じ気持ちだ。


「ちょっ……!?」

「ガルアさん!!」

「何言ってんですか!?」


 それ小さな子供に対して絶対に言っちゃいけないやつ!!

 これから先、いつかニコちゃんがサンタクロースの真実を知る時が来るだろうけど、今のはダメだ! 絶対に!!


「ガルア、テメェちょっと表出ろ……」

「え?」

「手伝いますよ、グレイグさん」

「おう。ありがとな、キール」

「え?」


 ああ……グレイグさんが今まで見た事もないくらいにものすごく怖い! 直視できない!

 ガルアさん……自業自得とはいえ、ご愁傷さまです……。


 ……さて。ニコちゃんをどうフォローしたものか……。




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