第31話 白状します。
冒険者ギルドでジークたちに私が光属性が使える事がバレてしまった。
けれど、そこはディックの機転で切り抜ける事が出来たのだが、彼に手を引かれてジョルナルドの安らぎ亭に戻った私は、彼から「隠している事全部話せ」と言われてしまった。
「……わかりました。白状します」
ディックたちは逃がす気はないみたいだし、何より誤魔化しきれそうもない。
もうここは正直に話してしまおう。
それに……彼らなら、話してもきっと悪いようにはしないだろうから。
私は、ディックたちにすべての属性の魔法が使える事を話した。
でも、私が白状したのはそこだけ。
私が転生者で前世の記憶を持っており、この世界が私が前世でプレイしたゲーム「オリヴィリア」の世界である事は言わなかった。というか言えないし、この先も誰にも言うつもりはない。
「マジか……」
「まさか全属性とはな……」
ディックもキールさんたちも開いた口が塞がらない様子だ。
「証拠が必要であれば、今見せますけど……」
「それはいい。お前は嘘をついてないからな」
キールさん……。
ディックもルディさんも頷いてくれた。彼らは私の事をそんなにも信頼してくれていたのかと、胸があたたかくなった。
「え? 俺は見てみたい! 見せてくれ、フィリア!」
……さすがは“壊し屋ガルア”。
彼が壊すのは建物などの物だけではなく、空気すらも壊すようだ。
「ニコもみたーい!」
「僕も……」
あらまー。ニコちゃんたちも話聞いちゃってたのね!?
……まあ、話している場所が場所だから当たり前か。
「それじゃあ見せてあげるけど、私が全部の属性魔法が使える事、誰にも言わないって約束してくれる?」
「約束します!」
「ニコもやくそくする!」
アルドくんは大きく頷き、ニコちゃんも元気よく手を挙げた。
「ガルアさん、気をつけてくださいよ」
「今日みたいにポロッと言っちゃダメっすよ」
「おうっ! 気をつける!」
……大丈夫かな? ガルアさん。
「それじゃあ……」
まずは何の魔法を披露すればいいのだろうか。
どの属性魔法も攻撃技ばかりだから、室内で発動するのは躊躇われる。いや、魔力を操作して威力を最小限にすればなんとか行けるかも……? んー、でもなぁ……。やっぱり外でやった方がいいかなぁ……。
「ねえねえ、フィリア」
「何ですか? ルディさん」
どうしようかと悩んでいると、ルディさんに声をかけられた。彼に「ちょっと耳貸して」と言われて、私は彼に近寄る。
「あのさぁ……」
そうして耳元でこそこそと話された内容に、私は目を丸くしてしまう。
「……いいんですか?」
「いいよいいよ! だって、使うにしても相手が必要でしょ?」
「そうですけど……」
本当にいいんだろうか?
ルディさんをもう一度見れば、彼はすごく楽しそうに「やってやって!」と笑っている。
……もう! なんかあったらルディさんが責任取ってくださいよ!
「それじゃあ、いきます!」
意気込んだ私は、ガルアさんに向かって闇属性の魔法“スリープ”を発動した。
それは見事に成功し、ガルアさんはその場に崩れるように倒れ込んだ。近くにいたキールさんが慌てて受け止める。
「ガルアさん!?」
「おー! すごーい!」
ああああ、ガルアさんごめんなさい! 怒るならルディさんを怒ってくださいね!?
「わー!? いまのなんてまほう!?」
「闇属性の魔法だよ。“スリープ”って言って、一人だけだけど眠らせられるの」
「すごーい!」
キャッキャッとニコちゃんは喜んでくれた。
「本当にすごいですね……」
「ありがとうございます。でもこの魔法、命中率は高くないんですよ」
驚いているセレナさんにそう答えていると、抱きついてきたニコちゃんが「もっと! もっとみせて!」とせがんできた。
「なぁ、フィリア。光属性が使えるなら、ちと回復魔法を使ってもらいたいんだが……」
グレイグさんが申し訳なさそうに言ってきた。どうしたのだろうかと思って聞いてみると、寝違えてしまって首が痛いという。お安い御用だ!
光属性魔法の“キュア”を発動する。
「どうですか?」
「お……? おお! 痛みがなくなった! 助かったぜ、フィリア!」
「それは良かったです!」
「フィリア、ガルアさんはいつ目覚めるんだ?」
「えーっと、一定時間が経過すれば……。正確な時間はわからなくて……ごめんなさい」
キールさんに尋ねられて謝った私だったけれど、光属性の魔法で眠りから目覚めさせる事ができる事を思い出す。光属性の魔法スキルのレベルが上がっているので、確か覚えていたはずだ。私はすぐにステータスを開き、覚えている魔法を確認する。
「あ、あった。キールさん! 光属性の魔法を使えばガルアさんを起こせます!」
「そうか! それじゃあ、頼む」
「はい! “ウェイクアップ”!」
光属性魔法である“ウェイクアップ”は、眠っている対象の一人を目覚めさせることが出来る魔法だ。豪快にいびきをかきながら眠っているガルアさんに魔法をかけてみれば、彼の瞼が震えた。
そして、欠伸をしながらガルアさんが目を覚ました。
「あれ? 俺、寝てた?」
「すごーい! すごいすごい! ねえ、おねえちゃん! ニコにもまほうかけてかけて!!」
「え? えぇ?」
「ちょっとまっててね!」
一体なにを待つのだろうか?
待っててね、と言ったニコちゃんは突然走り出すと、思い切り壁にぶつかって見せた。
どうしてそんなことしたのニコちゃん!?
驚いていると、案の定ニコちゃんはぶつけた痛みから泣き出してしまった。
「いたぁい!!」
「そりゃ痛いだろうよ……」
「大丈夫!? ニコちゃん!?」
わぁ……おでこから鼻にかけてぶつけた為か真っ赤になってしまっている。これは痛そうだ。
私はニコちゃんの顔に手を翳して、キュアを発動する。魔法をかけ終えると、先ほどまで大泣きしていたニコちゃんはきょとんとして、それから満面の笑顔を見せた。
「いたくない! いたくないよ、おねえちゃん!」
すごいすごい、とニコちゃんがはしゃいでいる。
……そっか。さっき「魔法をかけて」と言っていたから、そうしてほしくて自分から壁に思い切りぶつかったのね。子供の行動力がちょっと恐ろしい。
「ねえ、ニコちゃん。魔法をかけてほしい気持ちはわかるけど、もうこんな危ない事はしちゃダメだよ?」
「どうして?」
「ニコちゃん、痛いのは嫌でしょ?」
「うん。イヤ」
「そうだよね。それにニコちゃんが怪我をすると、悲しい思いをする人たちがいるんだよ」
言い聞かせるようにニコちゃんに言って、私はセレナさんたちを見る。ニコちゃんの母親であるセレナさんは、今にも泣き出してしまいそうな表情をしていた。
「ニコ……。お母さんからもお願い。もう二度と、こんな危ない事しないで……」
そう言ってニコちゃんを抱きしめたセレナさんの目から涙が零れ落ちる。セレナさんの気持ちが伝わったのか、彼女の腕の中でニコちゃんは「ごめんなさい」と口にした。グレイグさんがニコちゃんの頭を乱暴に撫でる。
「それじゃあ、気を取り直してフィリアの魔法披露ショーを続けようか!」
空気を変えるようにパンと手を叩き、ルディさんが明るく言った。
というか、“魔法披露ショー”って……。
まあ、いいか。さて、次は何の属性の魔法を披露しようかな。




