第27話 仲が良いですね
「……なんか良い事でもあったのか?」
「え?」
冒険者ギルドに向かっている途中、隣を歩くディックから突然そう聞かれた。
「昨日からにやにやしててキモイ」
「キモッ!?」
キモイとか普通に傷つくし、ひどくないか……? と思いつつ、そんなににやにやしていただろうかと頬を触る。
まあでも、にやついていたとしてもそれは仕方ないというか何と言うか……。
だって攻略対象キャラに全員会えただけでなく、推しキャラに……ジークに頭を撫でられたんですよ!? これはもう頬が緩み切っても仕方ない事じゃないでしょうかね!?
昨日は本当に夢のような一日だったなぁ……。
「キモイ」
「また言った!?」
◇ ◆ ◇
ようやく冒険者ギルドに辿り着いた。
もうここに着くまでにディックから何度「キモイ」と言われたか……。
「今日はやめとくか?」
「なんで!?」
ギルドまで来たというのに、彼は突然何を言いだすのか。
「お前気ぃ緩みまくってんだろーが。そんな状態で魔物とまともに戦えんのか?」
そう言ったディックに睨まれてしまった。
そう。今日はディック付き添いのもと、双剣の武器の特訓の為に討伐依頼を受けに来たのだ。
昨日の事でいつまでも気持ちが緩んだ状態の私は、彼から睨まれてきつく言われたってしょうがない。魔物の討伐という危険な依頼を受けるのだから、ちゃんとしなければ!
私は気持ちを切り替える為に、バチンと頬を思いっきり叩いた。
「〰〰〰〰っ!! うん、大丈夫! 切り替えた!」
「……そーかよ」
ディックと共にEランクの依頼が貼られている掲示板の前に立つ。見てみると、やはりFランクに比べて討伐依頼の依頼書が多く貼られている。どの依頼を受けようか……。
「お前今レベルいくつ?」
「16だよ」
「そんじゃあ、ボアベビーあたりで良いな」
そう言ったディックは、私の返事も待たずにボアベビーの討伐依頼の依頼書を掲示板から剥がして渡してきた。「私の意見は……?」と思ったけれど、ここは私よりも冒険者歴の長いディックの意見に素直に従っておこう。何か言い返そうものなら、耳が痛い思いをするハメになりそうだ。
依頼書を持って受付カウンターに行けば、ヴィーラさんがいた。
「こんにちは、ヴィーラさん!」
「あら、フィリアさん! こんにちは」
受付お願いします、と依頼書と冒険者カードを提出する。ささっと手続きを終わらせてくれたヴィーラさんは、私の隣にいるディックに目を向けた。
「ディックさんも受付いたしますよ」
「いや、俺はいいッス。今日はこいつの依頼に付き添うんで」
「そうなんですか?」
「はい! 私の特訓に付き合ってくれるんです」
「まあ……。二人は仲が良いんですね」
ディックと仲が良いと言われて、嬉しい気持ちになった。ちらっとディックを見てみれば、彼はものすごく嫌そうな顔をしていた。
「なんで!?」
「こいつと仲良しとか……」
「わ、私はディックと仲良しだって言ってもらえて嬉しいよ!」
剣の稽古に付き合ってくれて、今日も依頼に付き合ってくれて、ディックとは良い関係を築けていると思っていたのだが……。そう思っていたのが私だけだったというのは、なんだか悲しい。
「まあまあ、フィリアさん。ディックさんは照れてるだけですよ」
「え……?」
「べっ、別に照れてねぇよ!!」
「フィリアさん、浮気は良くないですよぉ……」
「うわあっ!?」
突然背後から声がして、びっくりしてしまった。振り返って見れば、そこにはラナさんがいた。
っていうか、浮気ってなんだ? 恋人のいない私が、なんで「浮気は良くない」と言われなければならないのだろうか?
「私、浮気なんてしてませんけど……」
「してるじゃないですかー。ジークさんがいるっていうのに、ディックさんにうつつを抜かして~」
「「はあ!?」」
私とディックの声が重なった。
「ジークさんがいるって……私はジークさんの恋人でも何でもないですからね!? ディックもただの友達ですし!」
「えぇ~ホントですかぁ?」
「本当です!」
「慌てているところがますます怪しい……」
「だから本当ですってば!! ね!? ディック!!」
同意を求めてディックの名を呼んだけれど、彼からの返事はなかった。
どうしたのだろうかと不思議に思ってディックを見てみれば、彼はなぜかボーッとしていた。
「ディ、ディック……?」
おーい、とひらひらと顔の前で手を振ってみれば、ディックがハッと我に返った。
「大丈夫? どうかした?」
「あ? 別にどうもしねぇよ」
「そう……?」
でも、ディックの表情は晴れていない。本当に大丈夫だろうか?
……はっ! もしかして、さっき“友達”と言った事が彼の気に障ってしまったのだろうか?
ヴィーラさんに「仲が良いんですね」って言われた時すごく嫌そうな顔をしていたから、そんな奴から友達認定されている事に嫌な気持ちにさせてしまったのだろうか!?
……ん? ラナさん、なんでそんな笑ってるんです? ヴィーラさんもなんだか微笑ましいものを見ているかのような表情をされてますが……?
「手続き終わったんだろ!? さっさと行くぞ!」
ラナさんとヴィーラさんの表情の意味が分からず二人を見ていれば、ディックが突然声を上げた。驚いている間にディックはずんずんと歩き出してしまって、私は慌ててカウンターに置かれている依頼書と冒険者カードを手に取って彼を追いかけた。
「お気をつけて!」
「はい! いってきます!」
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