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第16話 ホーンラビット討伐のはずが・・・


「これで6体目!」


 森の中を進んでいき、見つけたホーンラビットを倒し続けて、ようやく6体目のホーンラビットを倒し終えた。これで討伐依頼達成だ。村に戻ってカガチ村長に報告しよう。



 ガサガサッ



 そう思って踵を返したその時、近くの茂みが揺れた。

 突然の事で驚きはしたが、私は剣を構えて揺れた茂みを睨んだ。

 すると、そこから黒い影が飛び出してきた。

 ガキン、と剣が硬いものに当たった。ちょっと手が痺れた。

 一体何なんだと地面に着地したそれを見て私は、目を見開いた。


 茂みから飛び出してきたのは、なんとホーンラビットだったのだ!


 つまりは7体目のホーンラビット。

 どうしてまだホーンラビットがいるのか?

 依頼書には、「最近出没したホーンラビット6体を退治してほしい」と書かれていたのに。

 混乱してしまったが、とにかく今は目の前のホーンラビットを倒す必要がある。考えるのはその後だ。


「エアーシュート!」


 私は、魔法で作った空気の塊をホーンラビットに向けて放った。

 しかし、この攻撃はホーンラビットに避けられてしまった。攻撃の当たった箇所の地面が抉れる。


「シャー!」


 ホーンラビットが威嚇してくる。

 私は手の平をホーンラビットに向けて構える。

 威嚇していたホーンラビットが、地面を蹴って私に向かって突進してきた。

 

「エアーシュート!」


 私は再び攻撃した。

 それは見事命中し、ホーンラビットは木の幹にぶつかった。ずるずると地面に落ちていったホーンラビットは、それからピクリとも動かなくなった。


「どうして7体目が……」


 依頼書に書かれていたホーンラビットの出没数は6体だった。

 それなのになぜか今、7体目のホーンラビットが現れた。

 これは一体どういう事だろうか?

 村を襲ったホーンラビットの数が6体だっただけで、実は他にも生息していたということだろうか?

 そうなると、もしかしたら7体で終わりではない可能性もある。


 これは一旦、依頼を中止してサルビアに戻って冒険者ギルドに報告した方がいいかもしれない。その前に村に行って、この事を伝えよう。

 村に戻る為に歩き出すと、また近くの茂みが揺れた。

 もしかしてと思いそちらを見てみれば、茂みからホーンラビットが顔を覗かせていた。


 ……うん。そうしてると、額に角を生やしてはいるがウサギなので、何だか可愛げがあるなぁ。


 なんてのんきな事を考えていると、目の前のホーンラビットの視線が鋭くなった。


「キッシャ――!!」


 ホーンラビットが咆哮した。

 私は思わず両耳を塞ぐ。

 叫び終えたホーンラビットは身動ぎして茂みから抜け出すと、私を威嚇してきた。

 こうなったらこいつも倒すしかないと剣の柄に手をかけたその時だった。


「――え?」


 ひょこっ、ひょこっと、茂みから次々とホーンラビットが顔を出した。

 目の前の光景に驚いていると、今度は茂みの向こうから何体ものホーンラビットが飛んでやって来た。


 ……えーっと、これは一体、どういう状況でしょう?


 当初依頼では6体だけだと聞いていたホーンラビットが、なぜか7体目が出現し、それを倒したと思ったら今度は8体目が……と思ったら、9体目、10体目と次々とホーンラビットが現れた。

 目の前に集まっているホーンラビットの数は、確実に当初聞いていた数の倍以上はいる。

 呆然としていると、目の前にいるホーンラビットが一斉に飛びかかって来た。


「わぁあああああああああああっ!?」


 我に返った私は、慌てて襲い掛かって来たホーンラビットから逃げた。


 無理無理無理!!

 1体ずつならいいけど、こんな大量なホーンラビットを相手にするのはさすがに無理!!

 ちょっ、体当たりしてこないで――!!


 私は森の中を駆けまわる。

 HP回復ポーションも疲労回復薬もあるから体力切れになる心配は今のところないが、しかし、ずっとこのまま逃げ続けているわけにもいかない。かといって、大量のホーンラビットを引き連れて森の中から出るわけにもいかない。そんな事をすれば近くにあるキブシ村が襲われてしまう。

 そうなるとやはりこの何十体といるこのホーンラビットを倒さなければならないのだが……。まだ各属性魔法のレベルは低いので、全体攻撃技はまだ習得できていない。

 こうなったら火属性の魔法で森ごと燃やすか!? と思ったが、その考えはすぐに打ち消した。


 もう本当にどうしたら、と逃げ回っていた私は、森の中の開けた場所に辿り着いた。

 ここなら火属性の魔法を放ってもすぐにすぐ森の木々に火が燃え移る心配はなさそうだ。

 私は逃げる事をやめ、向かってくるホーンラビットたちを迎え撃つ。


「ファイアボール!!」


 火属性の魔法“ファイアボール”は、その名の通り火の球を相手に向けて飛ばす魔法だ。

 照準は地面にいるホーンラビットたち。跳躍して来たホーンラビットに向けて放ったとして、外した時にその先にある木に当たって火事になる事は避けたい。飛びかかって来たヤツは剣で叩き切る。

 ファイアーボールが命中したホーンラビットはその身体が燃やされ、近くにいたホーンラビットにもその炎が燃え移って燃えていく。これは結構良い作戦なのでは?




◇   ◆   ◇




 火属性魔法と剣でホーンラビットを退治し続ける事数十分。

 ホーンラビットの数はだいぶ減っていた。残りは10体。

 さすがに疲れた。魔力もだいぶ減っているし、何よりホーンラビットの角で切られた腕や足がじくじくと痛む。

 だが、あともう少しだ。踏ん張れ私!


 私は走り出し、剣を振るった。1体切り裂いた。これで残り9体。


 ファイアーボールで攻撃して、一気に3体を焼いて倒した。残りは6体。


 闇属性魔法“スリープ”を何度か発動した。半分のホーンラビットを眠らせる事に成功した。

 眠らせられなかったホーンラビットは、剣で切り裂いていく。

 残りの眠っているホーンラビット3体は、火属性魔法で燃やした。


「終わった……」


 私はその場に座り込む。

 一体どれくらいの数のホーンラビットを相手にしたのだろうか。そういえば、冒険者カードは討伐した魔物の数を記録できるんだった。ギルドに戻ったら魔道具で確認してみよう。


「痛っ」


 ホーンラビットの角で切られた傷が痛んだ。

 腕やら足やら切られて血が流れてしまっている。装備もボロボロだ。

 私は自分の胸に手を当てて、光属性魔法“キュア”を発動した。これは傷を治したり体力を少しだけ回復出来る魔法だ。この魔法のお陰で、身体についた傷はすべて治すことが出来た。


「こんな格好で帰ったら、グレイグさんたちに心配かけちゃうなぁ……」


 宿に帰る前にどこかで服を着替えて行こうかな。

 あともう少しだけ休憩したら、まずはキブシ村に戻ってカガチ村長に報告しよう。

 できれば一泊してしっかりを身体を休めてからサルビアに戻りたいが、キブシ村の宿屋を思い出して、私は頭を振る。疲労回復薬はまだ残っているから、村長への報告を終えたらそれを飲んでサルビアに帰ろう。


 ……あ。その前に素材を回収しておこう。換金すれば立派な収入になる。

 私は立ち上がり、周囲を見回した。

 かなりの数のホーンラビットを倒したからか、あちこちに角やら毛皮やらが落ちていた。これを全部換金すれば、結構いい額になるのではないだろうか。

 拾い残しはない事を確認した私は、そろそろ帰ろうかと振り返る。


 そして、目の前の光景に言葉を失った。





 私の目線の先、そこにいたのはホーンラビットよりもはるかに大きく強い魔物――ジャイアントラビットだった。




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