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外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
第9章:大迷宮【アビス】Ⅲ

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第3話【夜会用のお洒落】

「うーん」



 雨粒が叩きつけられる窓を鏡の代わりにして、フェイは自分の格好を確認した。


 現在、フェイが身につけているのは古い形式の燕尾服だ。真っ黒な上着と仕立てのいい襯衣シャツ、それから皺一つない洋袴ズボンという出立である。

 加えて両手には白い手袋を装備、フェイの普段からご主人様に嬉々として手入れされている綺麗な金髪も後頭部に撫で付けられて額が全開となってしまっている。さすがに恥ずかしい。


 整髪剤で固められた自分の金髪を指先で摘んでいると、



「やっほー、ワンコ君。お待たせ」


「あ、ドラゴさん」



 女性たちの更衣室からひょっこりと出てきたドラゴは、フェイと同じ形式の燕尾服を着ていた。

 どちらかと言えば男性的な印象を受けるので、彼女も燕尾服がかなり似合っている。身長も高く、普段の迷宮区ダンジョン探索のおかげで身体が鍛えられているので女性でありながら男性の格好が似合うとは極めて珍しいのかもしれない。


 燃えるような赤い髪を整髪剤で流すドラゴは、



「整髪剤って慣れないなぁ」


「そうですね。俺もあまり付ける機会はないですけど」


「ワンコ君はユーリさんがつけさせてくれなさそうだよね。『匂いが嫌だ』とか言って」


「ご名答です」



 そもそもユーリはフェイが整髪剤をつけるのをあまり好ましく思っていないらしい。フェイも奴隷なので整髪剤などという高級品は身につけないのだが、前に一度だけ「身なりを整えるためにつけようか?」とご主人様に問うたことがある。

 その時は物凄い嫌な顔をされた。それから「つけなくていいよ、あんなモン」などと言われたのである。さすがにフェイも断念した。


 ドラゴは笑いながら「そっかぁ」と頷き、



「まあ、ワンコ君はそのままでも格好いいからね」


「褒めても何も出ないですよ」


「褒めてないよ。あたしは事実を言っただけ」


「ドラゴさんの方が俺より格好いいのに」


「ありがと!!」



 にへらと笑うドラゴに、フェイもつられて笑った。


 すると、背後にあった更衣室の扉が叩かれる。その向こうから「もう出るよ」とユーリの声がした。

 待ちに待ったご主人様の綺麗なドレス姿である。ユーリは見た目もかなり飛び抜けた美人なので、きっとドレス姿も映えるだろう。


 建て付けの悪い扉が開かれ、おめかしをした女性陣が姿を見せる。



「お待たせしました……」



 眠そうに頭をグラグラと揺らすアルアは、新緑色の可愛らしいドレスに身を包んでいた。フリルやレースなどが随所にあしらわれ、まるでおとぎ話に出てくるお姫様のような豪華なドレスである。

 髪も複雑に編み込みが施され、緑の花を使った髪飾りで留められていた。普段の緑色のドレスと違って、やはり舞踏会に適したドレスと言えよう。


 ドレスのスカートを摘んで微笑むアルアは、



「フェイ殿、どうですか……見違えたでしょう?」


「まあ、はい。お綺麗ですよ」



 フェイも一応はお世辞を口にする。綺麗ではあるのだが、興味がないというのが現状だった。



「おい、私のドレス姿も見ろ。自信があるぞ!!」



 自慢げに平坦な胸を張るメイヴもまた、お嬢様らしくドレスアップしていた。

 彼女が身につけるのはシャンパン色のドレスだ。肩や胸元が大胆に露出した、普段の厳格な格好とは真逆の形式である。胸元を飾る黄色の宝石があしらわれた首飾りが、天井の照明器具を反射して煌めく。


 ドレスのスカートはやや短めで、ふんわりと釣鐘のように広がっていた。なかなか乙女な雰囲気のあるドレスである。



「あー、はいはい」


「返事が適当すぎるぞ、下僕のくせに!!」


「メイヴさんの下僕ではないですねー」



 適当な返事をするフェイは、顔を真っ赤にして訴えてくるメイヴから視線を外した。



「――――」



 視線を外した先に、女神が立っていた。


 透き通るような銀の髪を背中に流して、紅玉にも似た鮮烈な赤い瞳には化粧が施されている。艶やかな口元と淡雪のような白い肌が目を惹く。

 瞳の色と合わせた真っ赤なドレスは、胸元から首にかけて薄い布地が覆う仕様となっている。ドレスの裾は引き摺るほど長く、二の腕まで覆う真っ赤な長手袋には白い小さな宝石が散りばめられていた。


 銀髪赤眼の女神は「どうだい?」とフェイに笑いかけ、



「久々にドレスを着たものだねェ」


「あ、マスターだったんだ」


「誰だと思ったんだい」


「女神様かと」



 不機嫌そうな態度から一転し、フェイの「女神様」発言にご主人様のユーリは恥ずかしそうに頬を赤らめた。



「綺麗だよ、マスター。よく似合ってる」


「そうかい」


「でも珍しいね。マスターの露出が少ないや」


「そりゃそうだろう? 前の露出は控えたさね」


「…………前の露出は?」



 何か聞き捨てならない言葉を聞き返せば、ユーリは銀色の髪を掻き上げて背後をフェイに見せた。

 髪で上手く隠されていたが、ユーリの背中は大胆に開かれていた。背面の布地がないとはなかなか上級者の見せ方である。真っ白な背中と肩甲骨の線が異性の劣情を誘う。


 生唾を飲み込むフェイに気分を良くしたユーリは、



「どうしたんだい、いつもの露出と違うから驚いたかい?」


「お、驚いた。だって背中を出すことなんてなかったじゃん」


「水着姿も見たってのに、アンタは反応が面白いねェ」



 くすくすと声を押し殺して笑うユーリは、



「ほら、さっさとエスコートしな。行くよ」


「う、うん」



 伸ばされた手を取って、フェイはぎこちなくユーリのエスコートをするのだった。


 ちなみに置いていかれそうになったアルアとメイヴは、二人の間に突撃をかまそうとしてドラゴに頭を握り潰されていた。

 せっかくお洒落したのに早くもぐちゃぐちゃになってしまった。自業自得である。

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