表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
第7章:大迷宮【アビス】I

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/113

第6話【クリスタルベアー】

「この階層に出現する魔物の名称は『クリスタルベアー』と言います……とても希少価値のある魔物ですよ……しかもお肉まで美味しいです……」


「そうなのかい」



 足場の悪いゴツゴツとした道でも関係なしに車椅子で突き進むアルアの説明を、ご主人様のユーリは珍しく耳を傾けていた。

 どうでもいい雑談なら聞き流しているだろうが、迷宮区ダンジョンに関する情報なら少しでも得たいところだ。特にアルアはその頭の螺子が丸ごと消失したような性格はともかくとして、迷宮区に関する知識はご主人様のユーリを上回るものを持っている。


 クリスタルベアー、という聞き覚えのない魔物の名前にフェイは首を傾げた。聞き覚えはないのだが、どこかで見覚えのあるような名前である。



「見た目は可愛らしい熊なのですが……体表から魔石が飛び出して……とても凶暴です……」


「ん?」



 ここでユーリも疑問に思ったようだ。紅玉ルビーにも負けない赤い瞳をフェイに向けると、



「フェイ」


「どうしたの、マスター」


「さっきアタシらが食べた熊の肉だけど、あれは確か身体に魔石が飛び出していたね?」


「そうだな、マスター」



 先程フェイが料理してしまった熊には、大量の魔石が埋め込まれていた。料理をする時に魔石は抉り出して【強欲の罪(マモン)】の貯蓄に回してしまったが、あれにはいいお値段がついた。

 さらに熊肉の方も美味しかった。弾力があり、臭みは全くなく、煮込めば舌の上で蕩けるほど柔らかくなったのだ。肉の方にもいいお値段がついたので、半分ほどフェイとユーリで食べてしまったが残りは【強欲の罪】の貯蓄に回した。


 もしかして、あれがクリスタルベアーではないのだろうか?



「……この階層の主、倒しちゃったのかな」


「主よりも大きさは小さかったよ。あれで主だなんて呼ばれるんじゃ、大迷宮ラビリンス【アビス】も落ちたものさね」


「そうかなぁ」



 ユーリの言う通り、見上げるほど大きい熊ではあったが階層の主と呼ぶには些か小さい気がする。今までの迷宮主と比べると、明らかに見劣りする迫力だ。

 ここはご主人様の判断を信じよう。――いいや、元から疑う余地などないのだが。


 コソコソと会話をするフェイとユーリを怪しんだアルアは、



「どうしました……?」


「何でもないさね」


「何でもないよ」


「もしかして階層の主を食べました……?」


「あれは階層の主じゃないよ」



 ユーリはアルアにハッキリと「階層の主ではない」と主張した。



「階層の主だったらもっと大きいだろう?」


「確かに……クリスタルベアーはとても大きい熊と聞きます……お料理するのも簡単ではありません……」



 アルアは納得したように頷き、



「もし食べてしまったのであれば……フェイ殿の身体を調べてみる必要がありますね……ふふふ……」


「ドラゴ、そのお荷物はここに置いて行きな」


「うん!!」



 車椅子を押していたドラゴは、アルアの乗った車椅子から手を離した。

 このゴツゴツとした足場の悪い道で、車椅子による移動を貫くのであれば誰かの介助は確実に必要となってくる。ドラゴは力も強いし加減もよく分かっているので、車椅子を押す役目としては最適だ。


 介助がいなくなり、ポツンとその場に取り残されてしまうアルアは、徐々に遠ざかっていくフェイとユーリ、それからドラゴに向かって呼びかけた。



「待ってくださいよー……お願いですからー……もう変なことを言いませんからー……」


「仕方ないね!!」



 ドラゴはアルアの元に戻って、先程までと同じく車椅子をキィキィと押し始める。本気で置いていかれると理解したのか、アルアは車椅子の上で大人しく座っていた。



「ドラゴ、本気で置いて行ってもいいんだよ?」


「ううん、連れてくよ!!」



 ユーリの言葉に、ドラゴは満面の笑みで否定する。



「だってユーリさんやワンコ君と一緒にいても苛立たないからね!!」


「ああ、それだと弾丸が稼げないのかい」


「お嬢だとワンコ君絡みで余計なことばかり言うから、弾丸の貯蔵が捗るんだよね!!」


「私は知らず内にドラゴを苛立たせていたようです……悲しい……悲しい……」



 シクシクと車椅子の上で縮こまって泣くアルアに、フェイはどうしようも出来なかった。少しでも優しくしようものなら襲い掛かられそうだ。

 最初からご主人様以外の女性に対して眼中にないフェイなので、アルアに詰め寄られても何とも思わないのだ。せめてドラゴなら「腹筋が凄え……」と羨望の眼差しを向けるのだが。


 その時だ。



 ――ぎゃあああああああああああああああああああ……!!



 誰かの悲鳴が、どこまでも伸びる道の先から響き渡った。


 弾かれたように駆け出すユーリ、車椅子が煩わしく思ったのかアルアを抱えて走り出すドラゴ。先を急ぐSSS級探索者(シーカー)の三人を、フェイは慌てて追いかけた。

 悲鳴を上げた探索者を助ける義理などフェイたちにはないが、おそらくこの先に階層の主であるクリスタルベアーがいるのだろう。果たしてどんな魔物なのか。



「く、来るな来るな来るなーッ!!」



 大迷宮ラビリンス【アビス】の仕組みを舐め切って軽装で突入した探索者シーカーが、巨大な熊の手に薙ぎ払われて壁に叩きつけられる。硬い壁からずるずると落ちた探索者は、物言わぬ死体と化した。


 高い位置にある天井には、無数の魔石が埋め込まれて満天の星空を想起させる。壁にも大小様々な魔石が埋め込まれて、こちらもキラキラと幻想的な輝きを放っていた。

 その広々とした空間に、仁王立ちをする熊が一匹。フェイとユーリが倒した熊とは二回りほど大きな熊であり、頭部の右側を巨大な魔石が占めていた。潰れた右目の代わりに、鋭い左目で絶命した探索者をジロリと睨みつけている。


 焦茶色の毛皮を突き破って大振りな魔石が何個も埋め込まれ、鋭い爪には真っ赤な何かが多く付着していた。多数の探索者を屠ってきた実績が、そこにある。



「――グルルルル」



 低く唸り声を上げるあの熊が、クリスタルベアーなのか。


 ユーリは銀色の散弾銃を、アルアは緑色の狙撃銃を、ドラゴは赤い拳銃をそれぞれ引き抜いた。フェイもまたユーリから貰った銀色の拳銃を拳銃嚢ホルスターから抜いた。

 この階層を制する為の戦いが、今始まる。



「よし、頑張ろう」



 頑丈なゴーグルを装着し、フェイは自分自身に気合を入れるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ