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外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
第7章:大迷宮【アビス】I

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第2話【深い穴の底】

「わー……わー……」



 穴に飛び込んだ時はぎゃーぎゃー騒いでいたフェイだが、いつまでもどこまでも続く深い穴にやがて叫ぶことを止めた。

 浮遊感は嫌なものがあるけれど、耐えられない訳ではない。そもそも毎日のように落ちて吹っ飛んで狭い場所を駆け回っているので、もう慣れたものである。


 腕に張り付くご主人様のユーリは、



「長いねェ」


「マスターが大迷宮ラビリンスに潜り込んだ時、こんなだった?」


「こんなじゃなかったねェ」



 ユーリは深い穴の底を見つめながら、



大迷宮ラビリンス【アビス】は一つの入り口しかないように見えるけれど、穴に入った途端にあちこちの階層に飛ばされるんさね」


「決まってる?」


「決まってないよ」



 くじ引きみたいな感じで潜り込む最初の階層が違ってくるとは驚きだ。やはり大迷宮ラビリンスと銘打たれただけあって、普通の迷宮区ダンジョンとかなり勝手が違ってくるようだ。


 フェイは「ほへぇ」と間抜けな声で応じた。

 これほど穴が深いということは、おそらくより深い階層に送り込まれている最中なのだろうか。そうなった場合、一週間で迷宮区踏破も夢ではない。大迷宮【アビス】は一週間で踏破しなければならない時間制限が決まっているのだから、気合を入れなくては。



「お」


「わあ」



 落ちている穴に変化があった。


 ゴツゴツとした壁に、何か光るものが埋め込まれているのだ。

 よく見れば自ら発光する形式の魔石が大量に埋め込まれていて、さながら星空のような光景がフェイとユーリを大迷宮のさらに奥へ誘う。


 首を回して周囲を確認するフェイは、



「凄いな、これ全部魔石かな」


「いくらぐらいになるかい?」


「えーとピンキリだから、一個三〇〇〇ディールから五万ディールまで様々」


迷宮区ダンジョン【スターダスト】より安いねェ、粗悪品かい」


「多分拾えないからだと思うよ、マスター」



 手を伸ばしても届かず、壁に張り付くことも不可能だ。足場がきちんとあれば【鑑定眼】のスキルでじっくりと観察できるのだが、現状では無理みたいだ。


 ユーリは「そうかい」とつまらなさそうに応じた。

 ここで金銭を大量に貯蓄へ回し、踏破できる為の弾丸を増やすつもりだったのだろう。ご主人様の思惑は外れてしまった。残念である。



「そろそろ着くね」


「え、分かるの?」


「下を見てみな、地面らしきモンがあるよ」



 ご主人様の指示通りに足元へ視線をやれば、確かに薄ぼんやりと地面らしきものが見えていた。このまま行けば物凄い速度で地面と正面衝突を果たしてしまう。

 最初から終幕ではないか。踏破するもクソもない、大迷宮ラビリンス【アビス】は何と過酷な迷宮区ダンジョンなのだろうか。


 すると、腕に張り付くユーリが銀色の散弾銃を引き抜く。銃口を足元に向けて、



「五万ディール装填」



 金銭を対価として捧げ、ユーリは願いを告げる。



「《浮かべ》」



 地面と正面衝突を果たす寸前で、フェイとユーリの身体がふわりと浮かぶ。痛さもなく、地面スレスレの場所をぷかぷかと浮かんでいた。

 フェイが試しに地面へ足をつければ、重力が戻ってくる。身体とはこんなに重かっただろうか、と少しだけ考えてしまう。


 さて、ついに大迷宮ラビリンス【アビス】のどこかの階層へ到着した。


 ゴツゴツとした岩肌がフェイとユーリを取り囲み、白い光を放つ魔石が大量に埋め込まれている。まるで星空のような光景が、ここにも広がっていた。

 安全な場所に着地することが出来たので、フェイは心置きなく【鑑定眼】のスキルを発動させる。視界が値段でビッシリと埋め尽くされ、落ちてくる時に見た魔石よりもより純度が高くて値段も跳ね上がった魔石が揃っていた。



「マスター、一〇万ディール」


「はいよ」


「そっちは二五万ディール」


「随分と値段に差があるねェ」


「魔力の保有量と純度の問題じゃないかな」



 一応、ご主人様のこのような質問に応じられるように、値段に差がある時の情報を学んでいるフェイだった。


 全ての魔石を取ると真っ暗になってしまうので、値段の低いものはあえて伝えておかないようにする。塵も積もれば何とやらとは言うが、今は少しでも高額な魔石を食って貯蓄に回したい。

 なるべく高そうな魔石を選んでご主人様に金額を報告するフェイは、ふと背後から生温かい風と同時に悲鳴のようなものを聞いた。



 ――あああああぁぁぁぁ……。



 誰かがいるのだろうか?



「マスター、誰かいる?」


「多分、他の探索者シーカーがアタシらよりも下の階層に放り込まれたか、もしかしたら同じ階層にいるのかもねェ」



 フェイの【鑑定眼】が三〇万ディールという値段をつけた魔石を取り込みながら、ユーリは声のする方角を一瞥する。



「仕方ないねェ、行くよフェイ」


「うん」



 ご主人様のユーリが先頭になり、唯一伸びていた道を突き進んでいく。


 壁に埋め込まれた魔石が足元を照らしてくれるのでありがたい。

 それでもぼんやりとした光しか得られないので、フェイは転ばないように気をつけて歩く。先程の星空のような空間に埋め込まれていた魔石は純度が高くて値段も跳ね上がったが、道端の魔石はやはり値段が少々お安めである。


 一つ二万ディールの魔石を一瞥するフェイは、徐々に大きくなっている声を聞いた。



「戦ってる?」



 裂帛の気合いを想起させる声が響き、遅れてガキィンという硬いものに金属が擦れるような音が耳朶に触れた。


 フェイとユーリが歩く道はすぐに終わり、やがて音源の元に辿り着くことが出来る。

 二人がちょうど現れたのは竪穴のような場所で、下の階層を覗き込むことが可能だった。試しに覗き込んでみるとかなり下に地面があり、その地面ではキラキラと輝く巨大な生物と探索者シーカーらしき人間が対峙していた。


 そのキラキラと輝く巨大な生物だが、全長が熊ほどもありふかふかとした毛皮に魔石が埋め込まれていた。まるで鎧のように魔石を纏うその生物は、鋭い爪が生えた腕を屁っ放り腰になった探索者に向かって振るう。



「ぎゃッ」



 名前も知らない探索者シーカーは壁に叩きつけられ、動かなくなった。死んだのだろうか。



「助けなくてよかった?」


「一ディールの価値にもならないよ。お荷物を抱えるつもりは毛頭ないさね」



 ユーリはそう言って、竪穴の底を目指して飛び降りた。フェイも慌ててあとを追う。


 ご主人様のスキルが発動され、ユーリとフェイは安全に地面へ降り立った。

 竪穴を根城とする魔石を埋め込んだ熊は、新たな侵入者である二人の探索者をギロリと睨みつけた。唾を吐きながら咆哮を上げ、鋭い爪を振り上げる。


 フェイは頑丈なゴーグルを装着し、ユーリから賜った銀色の拳銃を引き抜いた。



「やろう、マスター」


「そうこなくちゃねェ」



 銀色の散弾銃で肩を叩くユーリは、威嚇する魔石を身体中に埋め込んだ熊を見上げて余裕の笑みを浮かべていた。


 大迷宮ラビリンス【アビス】に於ける初戦闘である。

 まだ誰も踏破したことのない迷宮区ダンジョンの探索は始まったばかりだ。

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