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外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
第6章:迷宮区【サンドグレイヴ】

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第8話【迷宮区パニック】

「よーし、じゃあ出発しようねー」



 休息を終えて肝心の食事を済ませてから、赤い三つ編みが特徴の食いしん坊探索者(シーカー)ことルーシー・ヴァニシンカは意気揚々と歩き出した。

 こういう迷路形式の迷宮区ダンジョンには慣れているのか、彼女の足取りに迷いはない。聖堂を中心にあちこちへ伸びる道の一つを選んで、躊躇なく飛び込んでいった。


 フェイもルーシーの背中を追いかけようとするのだが、ユーリが「こっちだよ」と言ってルーシーが突き進んでいった方角と逆の道を示す。



「え、だってルーシーさん言っちゃったけど……」


「言ったねェ」


「追いかけなくていいの?」


「いいんだよ」



 ユーリはルーシーが突き進んでいった方向を見やると、



「ルーシーは嗅覚に優れているのさ」


「うん」


「だから魔物の臭いも分かるのさ」


「うん」


「……アイツが突き進んでいったのは、魔物が大量にひしめいている危険な道だよ。そんなところに飛び込めるモンかい」



 そういえば、この迷宮区ダンジョンにはミイラ系の魔物が大量に出るとか言われていた。むしろそれしか出ないと情報にもあった気がする。

 ご主人様であるユーリはミイラ系魔物やゾンビ系魔物などの、お化けっぽい魔物が大嫌いである。ミイラ系魔物はまだマシな部類にいると本人は主張するが、それでも嫌い具合で言えばゾンビ系魔物とどっこいどっこいである。


 なるほど、彼女は率先してミイラ系魔物と出会いたくない訳だ。フェイも納得したように頷いた。



「分かったんなら行くよ」


「マスターはどうしてその道を選んだの?」


探索者シーカーとしての勘さね」


「そっかぁ」



 ご主人様の勘は当たるので、別に文句はないフェイだった。


 いざユーリの選んだ道に突き進もうとした矢先のこと、ルーシーが消えた道から「ほぎゃあああああああああああ!!!?」という絶叫が轟いた。

 弾かれたように振り返れば、三つ編みを暴れさせながら爆走する半泣き状態のルーシーを目撃することになった。彼女を追いかけているのはボロボロの包帯で全身を包み込んだミイラ男で、風のような速さで逃げるルーシーを物凄い速さで追いかける。


 ユーリとフェイは白目を剥きそうになった。どうして連れてきちゃうんだ。



「ルーシーさん、スキルを使ってください!!」


「そうだよルーシー、アンタは意外と強いスキルを持ってるじゃないかい!!」


「無理だよー、無理だよー!!」



 ルーシーは「うえーん」と泣きながらユーリとフェイがいる方向へ駆け寄っていき、



「だって朝ご飯が美味しかったんだもんー!! お腹いっぱいでスキルが使えないよー!!」


「この馬鹿ルーシー!! あれだけ『少しにしときな』って言ったのに!!」


「奴隷君のご飯が美味しいのがいけないんだー!!」


「携帯食料を水でふやかして味付けしただけなのに!?」



 フェイは頭を抱えた。自分は何て言うことをしたのだろう。


 ルーシー・ヴァニシンカが持つスキルは【暴食の罪(ベルゼブブ)】――どんなものでも食べることが出来る強力なスキルだ。初めて見た時は街灯を食らったが、本来は魔物さえも食うことが出来る恐るべきスキルである。

 ただしスキル発動の際に必要なのは空腹感であり、お腹を空かせれば空かせるほどスキルを発動できるという訳である。彼女は朝食を食べてしまったので、見事にお腹がいっぱいになってしまったのだ。


 泣きながらフェイに抱きついたルーシーは、



「助けてー、お腹が空かないと戦えないよー」


「マスター、どうする!?」



 フェイはユーリに判断を仰ごうとするが、振り返ったところにユーリはいない。

 どこに行ったのかと思えば、彼女は飛び出してくるミイラ系魔物に恐れを成してフェイの背中に張り付いていた。ミイラ系魔物なんかに見向きもしなかった。ぺっとりとフェイの背中に張り付いて、ミイラ系魔物が迫ってくる現実から逃れていた。


 フェイは何とも言えない気持ちになり、



「マスター、俺が囮になってどこかに連れて行くから離してくれる?」


「…………」



 ユーリは首をぷるぷると振って、フェイの腰に自分の腕を回した。絶対に逃がさないという強い意思を感じる。


 そんなやり取りをしているうちに、ミイラ系魔物が目の前まで迫っていた。ただフェイが簡素な十字架を胸元から下げているので、簡単に手を出してこない様子である。

 よし、これなら勝てる。フェイは密かに拳を握り、手を出してこないミイラ系魔物を袋叩きにしようかと画策する。


 こっちは意外と怖がりな一面を併せ持つ可愛くて強いご主人様を守らなければならないのだ、あんなミイラ男程度で怖がっていたら奴隷失格である。



「一〇万ディール装填」



 ヌッとフェイの脇の間から銀色の散弾銃を伸ばしたユーリは、



「《包帯が解けて死にな》」



 銀色の散弾銃に願いを込めて射出する。


 ガチンという撃鉄が落ちる音がフェイの耳朶に触れた。

 それと同時に、フェイへ今まさに迫ろうとしていたミイラ男の包帯が解けて、ミイラ男は甲高い断末魔を響かせながら消えていった。何だったのだろうか、あれは。


 拳を握りしめて覚悟を決め損ったフェイは、その場で立ち尽くして「ええ……」と言うしかなかった。ご主人様に格好いいところを見せられるかと思ったのだが、残念ながらご主人様は苦手な魔物を相手でもそつなく倒してしまった。



「ふぅ、何とかなったようだねェ」



 魔物の脅威が立ち去ったことで、ユーリはようやくフェイの背中から離れる。



「フェイ、アンタは魔物を素手で殴ろうとするんじゃないよ。噛まれて病気にでもなったらどうするつもりだい」


「え、いやでも、あの」


「魔物を殴って倒すなんて馬鹿な真似はよしな」


「はぁい……」



 怒られてしまった。さすがのフェイもしょんぼりである。


 すると、お腹が空いていないので役に立たない食いしん坊探索者(シーカー)のルーシーが、すすすとフェイに近寄ってくる。

 ぷりぷりと怒った様子のユーリを一瞥し、何故か楽しそうに笑いながらフェイに耳打ちしてきた。



「ゆりたんは十分に奴隷君のことを格好いいと思ってるから、大丈夫だと思うよー」


「え」


「二人で何を話しているんだい、早く行くよ!!」



 照れ隠しなのか何なのか、ユーリは自分が選んだ道を突き進んでしまった。――が、すぐに引き返してきた。



「ミイラいたミイラいたミイラいたミイラいたミイラいたミイラいた!!」


「マスター落ち着いて、別の道を探そうか」


「ミイラいたーッ!!」


「落ち着いて」



 格好いいとは言ったが、やっぱりご主人様は可愛いのかもしれない。

 涙目で縋りついてくるユーリを別の道に誘導し、フェイは生温かい目で背中に張り付くご主人様を観察するのだった。


 ちなみにその間、ルーシーは自分の事情を棚に上げてゲラゲラと笑っていた。



 ☆



「はあ、酷い目に遭ったさね」


「そうだね、マスター」


「ゆりたん大変だったねー」


「アンタは他人事じゃないかい」



 フェイに誘導されて別の道を進むユーリとルーシーの会話を適当に流しながら、フェイは生温かい目を止めない。

 あれから出てきたミイラ系魔物を何とかご主人様のスキルで退け、ミイラ系魔物がいなさそうな道に誘導したのだ。今のところミイラ系魔物は出ていないので、ちょっと安心である。


 ユーリは壁を触りながら薄暗い道を突き進んでいき、



「全く、迷宮主のいる部屋はどこさね。永遠に彷徨い続ける羽目になるのは嫌だよ」



 そう言った瞬間、カチッと何かを押すような音がした。


 見ればユーリが今まさに触れている煉瓦の部分が、ベッコリと凹んでいた。明らかに何か罠が作動するような仕掛けである。

 バッコンと音がして、フェイたちの立っている箇所の床が消失した。その向こうにあったのは大きな穴である。


 何が起きたのか理解できなかったが、この先に何があるのか分かった。



「ぎゃああああああああああああ!?」


「きゃああああああああああああ!?」


「ひゃっほー」



 フェイとユーリは情けない悲鳴を上げ、ルーシーは楽しそうに歓声を上げながら、穴の向こうにあった滑り台で迷宮区ダンジョンの奥底に滑り落ちていくのだった。

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