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外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
第6章:迷宮区【サンドグレイヴ】

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第1話【人数制限のある迷宮区】

「お」



 迷宮区ダンジョンの情報が纏められた羊皮紙が数多く張り出された掲示板を眺めるフェイは、一枚の羊皮紙に注目した。


 難易度はやや上位、踏破報酬も悪くない。

 最近になって申請された掘り出し物と見ていいだろう、これなら最強の探索者シーカーたるご主人様も納得してくれるはずだ。


 羊皮紙を掲示板から剥がしたフェイは、すぐ側であれでもないこれでもないと探索する迷宮区を探す美しき主人に引き剥がした羊皮紙を見せる。



「マスター、これどう?」


「何だい、フェイ。碌な迷宮区ダンジョンだったら承知しないよ」



 フェイの手から迷宮区ダンジョンの情報が記載された羊皮紙を強奪する銀髪赤眼の女探索者(シーカー)――ユーリ・エストハイムは、早速とばかりに羊皮紙へ視線を走らせる。

 迷宮区の内容を読み込み、踏破報酬を確認して、それから彼女はにんまりと笑った。よかった、お気に召したようだ。


 羊皮紙を指で弾いたユーリは、



「なかなかいい場所を見つけたじゃないかい、フェイ」


「お褒めに預かり光栄でーす」



 頭を差し出せば、ユーリの手が乱暴にフェイの金髪を掻き回してくる。髪型が乱れるとか、髪が抜けるとかそういう問題は見ないことにする。今はご主人様からの全力ナデナデを享受するだけだ。

 まあ、わざわざ頭を差し出さなくてもユーリは高頻度でフェイの頭を撫でてくれるのだが。こうして褒められるのは悪い気がしない。


 ユーリは「よし」と頷き、



「じゃあ手続きしてくるから待ってな」


「うん」



 ご主人様の命令に従って、フェイは奴隷待機所で待つことにした。

 迷宮区ダンジョン案内所の隅に設けられた奴隷専用の待機所まで行き、壁に沿って直立不動のまま主人の帰りを待つ。その際に何人かの探索者シーカーの女性から「あの人って奴隷なの?」「カッコいい……いい身体してる……」などと熱視線が注がれていたのだが、フェイの眼中に入ることはなかった。


 受付嬢と今日も迷宮区探索の交渉をしているが、今回はなかなか交渉が難航している様子だった。ユーリは受付嬢に何かを噛み付いているが、受付嬢は頑なに首を横に振っている。



「仕方ないねェ」



 ユーリは受付嬢にそう告げ、奴隷待機所で待つフェイの元までやってくる。



「どうしたの、マスター」


「人数制限さね」


「人数制限?」


迷宮区ダンジョンの方が指定の人数じゃないと潜り込めないって言ってるんだよ」



 そんな迷宮区ダンジョンもあるのか、とフェイは驚いた。長いことユーリの一緒に様々な迷宮区を探索しているが、こんな出来事は初めてだ。

 今回の迷宮区はなかなか特殊な事情を抱えていそうな予感である。探索するのが楽しみだ。


 フェイは首を傾げ、



「じゃあその人数ってのは?」


「三人さ」



 なるほど、二人組のフェイとユーリでは目標の人数に到達できない。

 迷宮区ダンジョンが指定する人数がいなければ潜り込めないのだから、このままでは確実に迷宮区へ入ることが出来ない。三人組なんて珍しくもないのだから、きっとすぐに見つかってしまう。


 ここで、この迷宮区を手放すのは惜しい。誰かを引っ張り込まなければ。



「ドラゴさんとかは?」


「必然的にアルアがついてきそうだねェ、特殊な事例だし」


「メイヴさん……は、ダメか」


「あの傲慢女を呼ぶぐらいならアタシはこの迷宮区ダンジョンを捨てるさね」


「イザベラさん」


「単純に邪魔だから嫌だ」


「あの、ほら、香炉を売ってくれた……」


「リディのことかい? アイツは止めておきな、アンタの身が危ないよ」



 ユーリの元仕事仲間である探索者シーカー組合『七つの大罪(セブンズ・シン)』に所属する探索者たちの名前を次々と挙げたが、ご主人様はどれもこれも却下した。


 彼らが無理なら、フェイに思い当たる三人目の探索者はいない。

 さてどうしたものか。このままではどこかの三人組に迷宮区ダンジョンを取られて終わりである。それだけは何としてでも避けたいところだ。


 その時である。



「あれー? ゆりたんだー」



 間伸びした声が、迷宮区ダンジョン案内所に響く。



「どしたのー? なんかあったかー?」



 ユーリとフェイの視線が、声の投げかけられた方向に投げられる。


 二人に手を振りながら歩み寄ってくるのは、赤い髪の女性である。

 燃えるような長く赤い髪を三つ編みにし、トロンと垂れた瞳の色も真っ赤だ。口元も情熱的な赤い紅を引き、彼女自身の白い肌をより際立たせている。


 すらりと身長は高く、さらに襯衣の布地を押し上げる胸部は豊かだ。細い腰を胴衣ビスチェで強調し、大振りの拳銃嚢ホルスターには紫色の散弾銃が収納されていた。

 紫色の散弾銃は、部品らしい継ぎ目がない玩具のような印象を受けるものだ。その作りはフェイのご主人様であるユーリも持っているが、あちらの方がユーリの持つ銀色の散弾銃よりも大きめである。


 彼女を認識したユーリは、驚いたようにその赤い瞳を見開いた。



「ルーシーじゃないかい、どうしたんだい?」


「んーとねー、たまたま見かけたからー」



 どうやらご主人様とこの女性は知り合いの様子だ。やはり『七つの大罪(セブンズ・シン)』の大罪の一人なのだろうか。



「マスター、この人は?」


「ああ、紹介するさね」



 ユーリはフェイに向けて、赤い髪の女性について紹介してくれる。



「アイツはルーシー・ヴァニシンカ。『七つの大罪(セブンズ・シン)』に所属している、アタシの仕事仲間さね」


「よろしくねー」



 ルーシーは手を振って、フェイに笑顔を向けてくる。警戒をしていたが、悪い人ではなさそうだ。



「それでー、どうしたのー? なんてあったー?」


「実は迷宮区ダンジョンの人数制限があってねェ、三人いなけりゃ潜り込むことが出来ないのさ」


「あー、それは大変だー」



 ルーシーは他人事のように頷くと、



「じゃー、わたしが手伝ってやろうかなー?」


「本当かい?」



 ユーリは「じゃあ頼むよ」などと赤い髪の女性――ルーシー・ヴァニシンカの加入をあっさりと許した。


 ご主人様が珍しい態度をするものだ。

 先程の態度は、面倒見のいいドラゴよりもいいかもしれない。彼女とは仲が良かったのかも。



「マスター、珍しいね。この人の加入をあっさり許すなんて」


「まあね。コイツのスキルはちと特殊さ、アタシのスキルでも真似できない」



 フェイは単純に驚いた。


 ユーリの持つ希少スキル【強欲の罪(マモン)】は、金銭を対価に捧げて願いを叶えてもらうという内容の反則的なものだ。彼女のスキルさえあれば、危険な迷宮区ダンジョンも楽々と歩ける。

 ただし、願いを叶えるには対価が必要だ。その為に外れスキルとも呼べる【鑑定眼】のスキルを持ったフェイが、彼女の願いを叶える為に迷宮区の素材を片っ端空鑑定して高額なものを引き渡しているのだ。


 そのユーリだが、大抵のスキルは対価を捧げれば叶えられる。瞬間移動も出来れば、相手の思考を読み取るのも可能だ。下手をすれば『七つの大罪(セブンズ・シン)』に所属する探索者シーカーたちのスキルも真似できるだろう。

 それが真似できないとは、こちらの方がさらに特殊なものなのか。想像が全く出来ない。


 さらに首を傾げるフェイの疑問を察知したルーシーは、



「わたしはねー、物を食べるスキルなんだよー」


「物を食べる?」


「うんー。ゆりたんには昔から『強いね』って言われてるんだー」



 ご主人様からの掛け値無しの称賛を浴びるとは、ますます興味が尽きないスキルだ。



「じゃあルーシーが潜ってくれるってことで、三人でいいね?」


「いいよ、マスター」


「いいよー」



 フェイとルーシーはほぼ同時に頷き、ユーリはこの三人で迷宮区ダンジョンの申請をしに行った。今度は受付嬢も目標の人数である三人の部分を合格しているので、何も言わなかった。


 奴隷待機所で大人しくご主人様の帰りを待つフェイに、ルーシーが「ねえー」と話しかけてくる。

 ルーシーは赤い瞳でじっとフェイを見つめると、



「あなたはー、ゆりたんの何なのかなー? 奴隷かなー?」


「まあ、そうですけど……」


「そっかー」



 ルーシーはへらりと笑って、



「一緒に探索できる人が見つかってよかったねー、ゆりたん。これからもゆりたんをよろしくねー」


「ええ、分かってます」



 フェイはしっかりと頷いた。


 彼女に買われた時から、フェイは彼女に飽きられるまでは一緒にいると決めたのだ。

 まあ多分、そんなことはないと思うが。


 フェイの偽りのない返答を受けたルーシーはにんまりと笑って、



「男前だねー、食べちゃいたいー」


「えッ」


「ルーシー、アタシの奴隷に手を出すたァいい度胸をしてるね。頭を爆発させられたいかい」



 銀色の散弾銃をかつての仕事仲間の後頭部に突きつけ、ユーリは威嚇する。ああまたしても見たことのある展開である。

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