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外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
第4章:迷宮区【ディープブルー】

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第3話【銀獅子調査団】

「さて、これで迷宮区ダンジョン攻略に必要なものは揃ったかねェ?」



 フェイの抱える紙袋の中身を確認し、ユーリは「よし」と満足げに頷く。


 迷宮区ダンジョン案内所から貰った情報を参照にすると、今回の迷宮区味【ディープブルー】はとある崖から飛び降りると辿り着ける迷宮区のようだ。

 その世界は海の中のようであり、まさに【ディープブルー】の名前にふさわしい深海色の世界である。色とりどりの魚が優雅に泳ぎ、珊瑚礁が広がる雄大な海の世界。


 一説によれば人魚の姿まで確認できるらしいが、詳細は不明とのこと。果たして本当なのか。本当であれば人魚はかなり価値のある存在である。



「全く……いくら必要だからって、ここまで値段を吊り上げなくてもいいだろうに」


「あははは……仕方がないって、マスター。これって非常に珍しい素材なんだから」



 ユーリが紙袋から取り出したものは、小さな瓶の中で転がる真珠である。


 淡い白色の真珠は、瓶を揺らすとカラカラと音を立てて瓶の中を転がる。

 この真珠は水のある迷宮区を探索する際に活用する『人魚の涙』と呼ばれる素材で、この真珠を舐めている間は水の中で息が出来るという優れものである。今回の迷宮区ダンジョン【ディープブルー】は海の中の世界なので、当然ながら死にたくなければ必要となる代物だ。


 ただしこの『人魚の涙』はめちゃくちゃ高い。それはもう目玉が飛び出るぐらいに高い。ユーリも「スキルでどうにかした方が早いんじゃないかい?」と言うぐらいに購入を渋ったのだ。



「まあいいけどねェ、スキルの場合は継続しないことがあるしねェ」


「マスターの【強欲の罪(マモン)】は万能じゃないってこと?」


「継続して金を払わせようとしてくるのさ。厄介なスキルだよ」



 ユーリは『人魚の涙』の入った小瓶をフェイの抱える紙袋へ丁寧に戻し、それから「落とすんじゃないよ」と命じてきた。まあ、これだけ高額なものを落とせばかなりの損失である。扱いには十分に気をつけなければならない。


 不満げに鼻を鳴らしたご主人様の後ろに続くフェイだが、唐突に足を止めたユーリの背中にぶつかりそうになってしまう。

 彼女は道の先を睨みつけたまま動かない。小声で「何でこんなところにいるんだい……」などと言っているから、また元仕事仲間でも見つけたのだろうか。


 今度はイザベラのように面倒な相手ではないように、と心の中で祈りながらフェイはユーリが睨みつける方向に視線をやる。



「うわ」



 思わず声を上げてしまった。


 銀色と白を基調にした煌びやかな軍服を身につけた集団が、我が物顔で往来を闊歩しているのだ。通行人が迷惑そうな表情で集団を睨みつければ、集団の中で柄の悪そうな男が「何見てんだァ?」と威嚇してくる。

 明らかに触れてはいけない連中だった。奴隷であるフェイも問答無用で馬鹿にされそうだ。馬鹿にされるだけならいいが、暴力を振るわれるかもしれない。


 そっとご主人様の背後に隠れながら、フェイは「マスター」と呼ぶ。



「あれって」


「『銀獅子調査団』さね。ほら、迷宮区ダンジョン【ディープブルー】の予約をしたとか言っていた迷惑な連中だよ」


「ああ、やっぱり……」



 フェイが遠い目をする側で、ユーリは忌々しげに舌打ちをした。



「ここでアイツに出会うとは面倒だね。フェイ、別の道を通るよ」


「了解」


「……おやおや、逃げるのかね? 何とも情けないなぁ、強欲女」



 やたら相手を小馬鹿にしたような声が、フェイとユーリの背後から投げかけられた。


 振り向きたいのだが、ここで振り向けば相手の挑発に乗ってしまうような気がしてならない。絶対に振り向けない。

 相手は反応を示さないフェイとユーリに痺れを切らしたのか、低い声で「おい、無視をするな」と言う。相手は相当な短気らしい。まだそれほど時間も経っていないのに。



「…………ああ、誰かと思えば傲慢なチビじゃないかい。身長は相変わらず伸びていないみたいだねェ」


「何だとぉ!?」



 振り向いたユーリが相手を馬鹿にし返せば、その相手は怒りを露わにした。簡単に挑発へ乗ってしまうとは愚かだ。


 フェイはご主人様が振り向いたのであれば、とユーリが見ている相手へ向き直る。

 まず振り向いた先に相手がいない。柄の悪そうな男と目が合ってしまったので慌てて逸らせば、何故か顔を真っ赤にした少女が悔しそうに地団駄を踏んでいた。


 透き通るような金髪を貴族のお嬢様のようにくるくると巻き、爛々と輝く双眸は琥珀色をしている。顔立ちは愛らしいものだが、どこか気の強そうな印象が先に浮かんだ。我儘なお嬢様と言えようか。

 彼女は華奢で全体的に薄い体躯を白い軍服に包み込み、スカートから伸びる真っ白な長靴下に覆われた細い足で石畳を踏みつける。身長はあまりにも小さく、ユーリの胸元までの高さしかないように見えた。本当に子供かと思うぐらいだ。


 金髪の少女は「キーッ」と金切声を上げると、



「私を馬鹿にするのもいい加減にしろぉ!!」


「事実を述べたまでさね。どこも成長していないじゃないかい。立派な啖呵を切って『七つの大罪(セブンズ・シン)』を飛び出したのはいいけど、今じゃ迷惑組合の仲間入りだろうに」


「誰が迷惑組合だ!!」



 金髪の少女は余裕綽々とした態度のユーリに噛み付くが、彼女の後ろに控えるフェイを目敏く見つけると「何だ」と言う。



「そこの男は一体誰だ。私は知らんぞ」


「アタシが買った奴隷さね。文句があるかい?」


「貴様が奴隷を買っただと? 強欲女がよくもまあ奴隷を買うだけの金を出したな」



 この少女、声は可愛らしいものだが言葉遣いが傲慢そのものである。何だか悪者の御令嬢を想起させる。同じ御令嬢でもアルア・エジンバラ・ドーラとは大違いだ。


 少女は薄くてもはや平坦な胸元の前で腕を組み、高らかに自らの名前を明かす。

 別に聞きたくもなかったのだが。



「下賤の者よ、よく聞くがいい。私は」


「迷惑組合『銀獅子調査団』の首魁、メイヴ・カーチスさね。名前は覚えなくていいよ、迷惑軍団だと思いな」


「うん、分かったマスター」


「何も分かっていない!!」



 金髪の我儘な少女、メイヴ・カーチスは「馬鹿にして!!」と叫んだ。よく分かっている。



「奴隷に馬鹿にされるとは許せない、私を誰だと心得る」


「え……あの、すみません。マスター以外の言葉に従うとか考えられないんですけど」


「ムキー!! 奴隷にまで馬鹿にされるのか、私は!!」



 メイヴはダンダンダンダンッ!! と石畳を踏みつけ、



「もう知らん、無理やりにでも従わせてやる!!」


「なるほど、主人を差し置いて他人の奴隷にお熱とはいい度胸だねェ」



 メイヴが腰に手をやると同時に、フェイのご主人様であるユーリは赤い双眸を音もなく眇める。


 基本的に奴隷は主人の所有物であり、フェイはユーリ・エストハイムという最強の探索者のものだ。彼女がフェイの処遇を決定する権利を持ち、奴隷が悪いことをした場合は罰する義務を持つ。

 他人であるメイヴがフェイを従わせることも、罰することも出来ないのだ。むしろそれをやれば犯罪になってしまう可能性もある。


 ユーリは銀色の散弾銃を肩からかけた装飾品過多の外套コートの裏側から抜き、



「よほど死にたいようだねェ?」


「何だとぉ!?」


「一〇万ディール装填」



 金銭を対価に捧げて、ユーリはスキルを発動させる。



「《どこかに消えな》」



 引き金を引けば、彼女の願いは叶えられる。


 パッと白い軍服に身を包んだ厄介な集団が一瞬にして姿を消し、その場が水を打ったように静まり返る。

 通行人が驚いたような表情をしていたが、深くは触れずに通り過ぎた。所詮は彼らもその程度という訳である。


 フン、と鼻を鳴らしたユーリは、



「行くよ、フェイ」


「了解」



 多分、この件についてはあまり触れない方がいいのだろう。


 フェイはそう自分で判断を下し、ご主人様の背中を追いかけた。

 やはり案の定と言うべきか、ユーリのご機嫌は悪いように思えた。

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