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外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
第2章:迷宮区【スターダスト】

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第8話【星の卵】

 上を向いても、横を向いても、下を向いても、どこを向いても満天の星空が広がっている。


 夜が基本となった迷宮区ダンジョン【スターダスト】だが、角燈など必要ないぐらいに明るい。

 周囲に散らばった星屑が瞬き、進むべき道を照らしてくれているからだ。美しくもあり、道標の機能も果たすとは便利な星である。


 試しにフェイは、真横に浮かぶ青い星に自分のスキルを使ってみた。



「お」


「どうしたんだい、フェイ」



 星の鑑定をしたフェイの反応を見て、ご主人様のユーリが問いかける。



「マスター、この星って星じゃないんだな」


「何言ってんだい」


「星っぽく見えるけど、光る石だよこれ」



 そう、これは光る石だった。


 ユーリによって育てられたフェイの外れスキル【鑑定眼】は、物の価値を算定するだけではなく、それが何なのか知ることが出来るようになっていた。

 迷宮区ダンジョン全体に散らばって瞬くその星々の名前は『星屑の石』――割とそのまんまだが、値段はどれもこれも高額なものばかりだ。これら全てを【強欲の罪(マモン)】で奪えば、しばらくスキル発動に困らないぐらい莫大な値段を稼ぐことが出来るだろう。


 フェイは「どれも高いものばかりだよ」と言うと、



「じゃあ、適当なものを見繕って食らうよ」


「あれ、全部やっちゃわないの?」


「馬鹿を言うんじゃないよ、フェイ」



 ユーリは散りばめられた星を――正確には迷宮区ダンジョンの壁に埋め込まれた星屑の石をほじくりながら、



「これだけあれば明かりとして機能するだろう? 消耗品を使うのも面倒だ、迷宮主のいる部屋にある石だけを貰っていくよ」


「分かった。マスターがそう言うなら」



 ご主人様の判断は絶対である、フェイに逆らう意思はない。

 もちろん全部回収するつもりなら片っ端から【鑑定眼】を使う所存だったが、ご主人様が望まない行動はやらないのだ。フェイはよく調教された奴隷である、当然だがユーリ以外の命令は基本聞かないつもりだ。


 そんな彼らを見て、ドラゴに抱えられるアルアは嘆息を漏らす。



浪漫ロマンがありませんね……こんなに綺麗なのに……財宝や価値のある物にしか目がいかないなんて……悲しすぎます……」


「当たり前だろう?」



 ユーリはアルアを睨みつけると、



「実験馬鹿なアンタとは違って、こっちはスキル発動にも金が無駄にかかるのさ。少しでも多くの金額を稼ぎたいと思うのは普通だろう?」


「確かにそうですが……まあいいでしょう……どうでも……」



 アルアもこの話題には興味がないようだ。早々に会話を打ち切ってしまった。



「さて皆さん……もうすぐ迷宮主の部屋です……しっかり気を引き締めてくださいね……」


「え? もう迷宮主のいるところなのか? 早くない?」



 フェイは思わず聞き返していた。


 迷宮区ダンジョンは迷路のように道が複雑な場所や、数え切れないほどの罠が仕掛けられた場所が大半だ。以前踏破したばかりの【アクアフォール】も、迷宮区に飛び込んだ途端に激流で運ばれた挙句、空から落ちそうになった。あれぐらいの罠が巡らされているのが迷宮区の常識だ。

 この迷宮区【スターダスト】には、罠らしい罠が一切ない。星屑の石が導くまま、迷宮区を真っ直ぐに進んできていない。こんなの迷宮区でも何でもない。


 しかし、アルアは首を横に振った。



「こうした道が単純な迷宮区ダンジョンは……迷宮主が異常に強いと聞きます……貴殿らは我々の最大戦力ですので……死んでもらっては困ります……」


「アンタらが先に死んだら、そのまま死体は捨て置くけどねェ」



 ユーリは銀色の散弾銃に星屑の石を数個ほど食わせながら、



「フェイ。ドラゴの死体は持ち帰ってもいいけど、アルアは捨て置くよ」


「マスターが言うなら俺はそうするけど……いいの? それで?」


「いいんだよ。あんな実験馬鹿を丁寧に弔ってやる必要なんてないのさ、せいぜい迷宮主に頭から食われて未帰還ぐらいがいい死に方なんじゃないかい?」


「酷いです……あんまりです……しくしく……」



 ユーリから罵詈雑言を受けてしくしくと泣き真似を披露するアルアに、ユーリは「可愛こぶってんじゃないよ」と吐き捨てる。

 どうやらご主人様は、アルアに対して相当の恨みを抱えているようだ。過去にどんなことをされたのか不明だが、あまり首を突っ込まない方がいいだろう。


 静かに口を閉ざしたフェイは、ご主人様の背中を追いかけて迷宮主の部屋を目指した。



 ☆



 星屑の石を道標にし、ようやく迷宮主の部屋へ辿り着いた。


 部屋の外とは違い、広々とした空間は高い天井から壁や床に至るまで星屑の石がこれでもかと埋め込まれていた。白銀の星々だけではなく、赤い星や青い星など様々な石が瞬き、見事な夜空を描く。

 その部屋の中心には巨大な何かが蹲っていた。星屑の石が巨大化したのかと思ったが、違う。生き物の卵のように楕円形をしたそれは、内側からピカピカと一定の間隔で輝き、その中身を示す影を浮かび上がらせる。


 卵の中には、膝を抱えた人間のようなものが閉じ込められているようだった。まるで孵化を待ち望む雛鳥のようだ。



「……これが迷宮主かな」



 ポツリとフェイが呟く。


 迷宮主と評するにはまだ完全体ではないようで、強さの欠片も見出せない。こんな卵如きに多くの探索者シーカーがやられたのか?

 眠っているだけならまだしも、この状態で何人もの探索者が葬られたのだとしたら、孵化した場合は相当な強さを有するだろう。物の価値しか見られない【鑑定眼】のスキルが恨めしい。せめて相手の戦力がどの程度なのか判断できればいいのに。


 警戒するように光る卵を睨みつけるユーリは、



「フェイは下がりな。コイツはまずいよ」


「マスター、囮をやらなくていいの?」


「今回の迷宮主は本当にまずいんだよ、フェイ」


「何を根拠に?」


探索者シーカーの勘って奴さね」



 ご主人様が真剣な様子でそんなことを言うものだから、紛れもなくこの迷宮主はまずい相手なのだろう。


 フェイは言われた通りにユーリの背後へ下がる。まだ死にたくなかった。

 いや多分フェイは死んでも替の利く奴隷だけど、ご主人様が何を言うか分かったものではない。彼女を出来るだけ困らせたくないのがフェイの本音だ。


 ドラゴに地面へ下ろされたアルアは、眠たげな緑色の双眸で光る卵を観察する。



「なるほど……まだ孵化していない状態で大量の探索者シーカーが死に追いやられたと考えれば……この迷宮主は相当に強いでしょうね……」


「死んでもアタシは墓の前で泣かないよ。むしろ舌を出してやるね」


「せめて悲しむフリぐらいはしてください……いやフリも悲しいですけど……」



 すると、部屋の中央に居座る卵が唐突に強い光を放った。


 この偽物の夜空を照らさんばかりに輝くと、一条の光がアルアに向かって飛び出してくる。

 ユーリは巻き込まれないようにフェイの襟首を引っ掴んで回避するが、アルアは普段から車椅子を利用する御令嬢である。身体の自由が利かないのに、光線をまともに受ければどうなるか。



「わあ……危ないですね……」



 アルアは地面を転がって光線を回避し、ドレスについた砂埃を軽く払い落とす。



「動ける……?」


「フェイ殿、私を何だとお思いで……?」


「いや、あの、普段から車椅子に乗ってるから」



 てっきり足が不自由なのだと思っていたが、どうやら別の意味があるようだ。


 アルアは「心外ですね……」と細々と言う。

 心外も何も、普段から車椅子を利用していればそんな意味があるのかと思うのが普通だ。



「それよりも……ほら……正体不明の卵が襲ってきますよ……」



 フェイは光り輝く卵を見据える。


 あれが迷宮主で間違いないだろうが、卵の状態でも他者を寄せ付けない光線は厄介だ。それに、今回ばかりはフェイも足手纏いである。

 頼れるのはご主人様のユーリだけ。金銭さえあればどんな願いでも叶えられる、最強の探索者シーカーのみ。


 銀色の散弾銃を片手に不敵な笑みを見せるユーリは、



「いいねェ、燃えるじゃないかい!!」



 すでに戦闘へ思考回路を切り替えたご主人様は、様子見など一切考えずに突撃していく。


 放たれる光線を軽やかに回避するユーリの姿を見て、フェイは近くにあった星屑の石を次々に鑑定して値段をつけていく。

 金銭を対価に捧げるご主人様の補助をして、彼女に存分に戦ってもらおう。――奴隷のフェイには、それぐらいしか出来ないから。

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