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外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
最終章:大迷宮【アビス】Ⅴ

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第7話【踏破成功】

 気がつけば、大迷宮ラビリンス【アビス】が開いた場所であるアルゲード王国の中央広場に放り出されていた。



「…………はえ」



 ご主人様――ではなく、解放されたことで相棒となったユーリの手を掴んだ状態で、フェイは呆けた声を漏らした。


 中央広場には続々と探索者シーカーらしき人間が転送されていて、全員して「あー畜生」「踏破したかったぜ」などと悔しがっていた。大迷宮ラビリンス【アビス】がフェイとユーリによって踏破されたことは周知の上だった。

 大迷宮【アビス】に潜り込んでいた探索者が続々と戻ってきているのであれば、きっと彼らも戻ってくるはずだ。どれほど時間がかかるか不明だが。



「踏破成功おめでとうございます……」


「うおおお!? ビックリしたぁ!!」



 背後から唐突に張りつかれて、フェイは弾かれたように振り返る。


 髪やドレスの裾が若干焦げた状態のアルアが、眠たげな緑色の双眸をフェイに向けている。奴隷から解放されてしまい、今や元ご主人様であるユーリの庇護下にはいない。これからは自分で自分の身を守らなければならないのだ。

 アルアの出方を警戒していると、フェイの襟首が思い切り引っ張られる。強制的にアルアから引き剥がされ、代わりにユーリが「何だ、死んでいなかったのかい」などと言った。



「アンタについてはくたばってくれりゃよかったのにねェ」


「残念ながら……私は相当しぶといですよ……」



 アルアは小さな手をフェイに伸ばし、



「さあダーリン……頑張ったハニーにご褒美のナデナデを……」


「はいなーでなーで!!」


「イダダダダダダダダダダ」



 後ろからアルアの頭に伸びたドラゴの手が、問答無用でアルアの頭を乱暴に撫でる。ぐわんぐわんと首が揺らされ、とても痛そうだった。

 アルアが帰ってきていれば、すぐ側にいるドラゴも無事に帰還できることは予想できた。ドラゴがいればフェイも安泰である。


 ドラゴは「ごめんね!!」と相変わらず溌剌とした声で謝罪し、



「でも奴隷から解放されたんでしょ!! 共通認識がね、何か突然に頭の中にね!!」


「踏破した報酬で、大迷宮ラビリンスの創造主が何でも一つだけ願いを叶えてくれるって言ってくれたので」


「よかったね、ワンコ君!!」



 アルアの頭をギリギリと締め上げるドラゴは、



「どうせお嬢が行ったら『ダーリンを本物のダーリンにします』なんて馬鹿みたいな願いを叶えてもらうことになるからね!! 他人の唾付きを横取りするようなはしたない娘にはお仕置きをしてくれって旦那様から言われてるからね!!」


「アルアさんのお父さんも厳しい方ですね……」



 フェイは苦笑するしかなかった。

 確かに娘が他所様の伴侶に手を出すような真似をすれば、全力で止めるのが両親だろう。まあフェイには碌な両親はいないのだが。


 よかった、あの場所にアルアがいなくて。もしいたら、本当にアルアのダーリンにされるところだった。



「下僕、私も頑張ったぞさあ撫でろ撫でて褒めろ!!」


「メイヴさん!?」


「どいつもこいつもフェイに何の用だい!!」



 同じく自動転送機構によって大迷宮ラビリンス【アビス】から脱出したメイヴが、フェイの脇腹に頭突きしてきた。思いのほか強めの頭突きだったので、フェイは「うげえ」と呻いてしまう。

 彼女の場合は両親から止められることはないのだろうか。容赦なく鳩尾に頭をグリグリと押し付けてくるメイヴの対処をどうするか頭を悩ませるフェイだが、ユーリがメイヴを無理やり引き剥がしてくれたので助かった。


 メイヴは「何をする!!」と叫び、



「せっかく奴隷から解放されたのだからいいだろう!!」


「アタシの相棒に何をする気だい、この傲慢女が!! ついに強欲も併発したかい!?」


「それは貴様だろう、この強欲女め!! さんざっぱら下僕のことを連れ回したのだから、自由の身になってから私がちょっとぐらい連れ回してもいいだろう!!」


「よくないんだよ節操のないクソガキだね!!」


「何だと束縛する女は嫌われるぞやーいやーい嫌われろ!!」



 メイヴとユーリの取っ組み合いも、もはや慣れたものだ。フェイはどこか遠い目で激しい口論を繰り広げるユーリとメイヴを眺めているだけだった。もう疲れた。


 すると、騒ぐメイヴの頭にポンと誰かの手が置かれる。

 メイヴの口から「ピッ」と甲高い声が漏れた。それと同時に、メイヴの小さな頭に置かれた手がギリギリと彼女の頭を締め上げる。



「めいたんはー、人のものに手を出すほど我儘さんなのかなー? 頭を潰しちゃった方がいいねー?」


「ぎゃあああああああああああああ!!」


「ルーシーかい、お疲れ」


「ゆりたんもお疲れー」



 メイヴの頭を締め上げるルーシーは、トロンと眠たげな赤い瞳をフェイに向けると「奴隷君もお疲れー」などと手を振ってくる。



「あー、そういえば奴隷から解放されたんだっけー? じゃあふぇー君って呼ぼうかなー?」


「お好きにどうぞ」


「うんー、ずっと名前を呼びたかったから奴隷解放されて嬉しいなー」



 ルーシーが馴れ馴れしく呼んでくることに対しては、ユーリも何も言わなかった。これがアルアやメイヴなら喧嘩の火蓋が再び落とされようとしたが、ルーシーは可愛がっているので除外なのだろう。


 自分を包み込む喧騒に、フェイはようやく帰還できたことを実感する。

 いくつも迷宮区ダンジョンが重なって作られた神々から人類に対する挑戦状――大迷宮ラビリンス【アビス】。いつもの迷宮区よりも踏破は難しかったが、様々な世界を巡ったことは一生の思い出となるだろう。



「フェイ、何してんだい。帰るよ」


「了解」



 それまで共に行動をしていた仲間たちに別れを告げ、フェイとユーリは帰路に着くのだった。

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