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外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
最終章:大迷宮【アビス】Ⅴ

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第1話【最終階層】

 背後から聞こえていたドラゴンの咆哮が、いつのまにか消えていた。


 ゆだるような暑さもいつのまにかなくなり、暑くもなければ寒くもない空間をひたすら歩いていた。

 つるりとした石の壁には訳の分からない模様が刻み込まれ、等間隔に並べられた燭台しょくだいでは炎がゆらゆらと揺れている。相変わらず蝋燭ろうそくは設置されておらず、小さな炎だけが薄暗い廊下を照らしていた。


 先を急ぐユーリの背中を追いかけるフェイは、



「静かになったな……」


「気を引き締めな、フェイ」



 廊下の奥から強烈な光が漏れていた。


 あまりにも眩しくて、フェイは思わず目を細めてしまう。

 銀色の散弾銃を握りしめるユーリは光が漏れる廊下の奥を睨みつけ、フェイに「しぃー……」と人差し指を唇に当てて黙るように告げた。


 言われた通りに静かにすると、奥から何やら羽ばたきのようなものを聞いた。鳥か何かがいるのだろうか。



「マスター、この音って……」


「最終階層さね」



 ユーリの赤い瞳が音もなく眇められる。



大迷宮ラビリンスの最終階層は決まってるって噂さ」


「そうなんだ」


「一〇〇年前じゃ、アタシもここまで来れなかった。価値あるものなんて全然見極められなくて、すぐに弾切れを起こしちまうからねェ」



 ユーリはフェイのボサボサになった金髪を撫で、



「アンタのおかげだよ、フェイ。一緒にいてくれて助かってるさね」


「俺もだよ、マスター」



 ご主人様であるユーリから、多くのものを学ばせてもらった。奴隷という立場でありながら、同じ人間として彼女は扱ってくれた。一度も酷いことはしなかったし、いつでもフェイに面倒が被らないように守ってくれた。

 世界で一番優しい主人に購入されて、フェイはこれ以上ないほど幸せだった。だから、ユーリ・エストハイムという女探索者(シーカー)の為になるなら何だってする。


 世間一般では外れスキルと称されるフェイの【鑑定眼】も、彼女の前では何にも代え難い黄金だ。フェイは購入された意味を全うするだけである。



「行こう、マスター。俺はマスターの為なら、弾丸でも囮にでもなるよ」


「ははッ」



 フェイの腕を小突いたユーリは、



「アンタはアタシの大切な弾丸さね。アタシの為に死のうだなんて考えるんじゃないよ」


「考えないよ。俺はまだマスターと一緒に迷宮区ダンジョンを探索したい」


「そうかい」



 さあ、ついにこの向こう側は最終階層だ。何が待ち受けているか不明だが、この最強の女探索者(シーカー)がいればフェイに怖いものなんてないのである。



 ☆



 フェイとユーリはようやく最終階層の床を踏んだ。


 白い石造りの壁がどこまでも伸び、等間隔に並べられた石柱が高い天井を支える。高い天井に描かれているのは宗教画ではなく、真っ青な青空と白い雲だ。

 天井の中心に埋め込まれた強烈な光を落とす丸い照明は、さながら太陽を象っているかのようだ。大迷宮ラビリンス【アビス】の地下深くにありながら、ここまで光に溢れた空間があるのかとフェイは驚いた。


 そして、廊下で聞こえていた羽ばたきの音の正体も理解できた。



「ふふふ」


「あはは」



 虚な笑い声を響かせ、青い空が描かれた天井付近を小さな羽根が生えた子供たちが飛んでいる。

 絵本などでよく見かける存在――天使だ。地下の奥底に天使がいるなんて考えられない。彼らは真逆の位置にいるはずなのに。


 呆然と天使を見上げるフェイの脇腹を、ユーリは問答無用でつねった。



「イダダダダダダダダダダ」


「油断するんじゃないよ、フェイ。親玉はこの先さね」



 ユーリが顎で部屋の奥を示す。


 まるで玉座の間を想起させる部屋の奥には、玉座の代わりに大きな扉が設置されていた。あの向こう側に、この天使の親玉が存在しているのか。

 ただ、簡単に天使たちが部屋の奥に向かわせてくれるだろうか。絶対にあり得ないと思う。


 フェイはゴクリと唾を飲み込み、



「何が待ってるんだろう」


「天使の親玉と言えば?」


「え、神様……?」


「つまりはそういうことさね」



 銀色の散弾銃を握りしめたユーリは、天井付近を笑いながら飛び交う天使を見上げて言う。



「ほら来るよ、フェイ」


「え、うわッ!?」



 それまで優雅に飛んでいたはずの天使が、急にフェイとユーリめがけて襲いかかってきた。

 空飛ぶ弾丸と呼んでもいいだろう。天使は急降下すると、フェイとユーリに頭突きをかまそうと突っ込んできたのだ。おおよそ天使らしくない雑な攻撃である。


 フェイは「わああああッ!?」と慌てて床を転がって天使の頭突きを回避すると、



「何で頭突き!?」


「当たるんじゃないよ、フェイ!!」



 華麗に天使の頭突きを回避するユーリは、



「天使の頭突きに当たると天使の仲間入りしちまうさね!!」


「仲間入りって何!?」


「アンタはあの格好をして笑いながら空を飛びたいのかい!?」


「やだ!!」



 天使の仲間入りということは、あの半裸も同然の白い布を纏って翼を生やし、虚な笑い声で空を飛ぶ変態の仲間入りということか。絶対に嫌だ、死んでも嫌だ。


 フェイは懸命に天使の頭突きを回避して、天使の仲間入りに抵抗し続ける。あんな頭のおかしな天使の仲間入りを果たしたくない。

 ユーリも天使の頭突きを回避し続け、たまに天使を撃ち落としながら部屋の奥を着実に目指していた。さすが最強の探索者シーカーである。


 絶対に負けるものか、特にこんな最終階層で無様に敵の手に陥落してたまるか。



「あー、クソどっか行けよ天使!!」


「あはははは」


「笑ってんじゃねえ!!」



 笑いながら弾丸の如き速度で突っ込んでくる天使たちに、フェイは苛立ちをぶつけるのだった。

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