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外れスキル【鑑定眼】持ちの俺、美人な女探索者と組んで世界最強の弾丸に!?  作者: 山下愁
第10章:大迷宮【アビス】Ⅳ

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第6話【ドラゴンとの戦い】

 灼熱の炎がすぐ近くを通り過ぎた。



「わあああああああああああッ!?」



 慌てて回避行動を取るフェイのすぐ横を通り抜けた紅蓮の炎が、足元の床を真っ赤に染める。熱された石の床に立てば靴が焼け焦げそうな気がする。

 こんなところで立ち止まっていれば確実に黒焦げだ。喉元まで迫り上がってきた恐怖心を押し殺して、フェイは真っ赤なドラゴンから逃げ出す為に走り始めた。


 長い首を揺らして高みから逃げ回るフェイを睥睨へいげいするドラゴンは、



「人間よ、無様に逃げ回るだけか」



 無駄に大きな翼を打てば、強風が吹き荒れてフェイの髪を掻き回す。

 髪の毛がぐちゃぐちゃに乱される程度ならまだいい。だって今は命懸けの囮の真っ最中だ。この程度で怖気付いていたら、最強の探索者について行くことなんて出来やしない。


 それでも本能的に感じる恐怖はあるので、涙目で走りながらフェイはご主人様から授かった銀色の拳銃を引き抜いた。



「確か……」



 ドラゴンの背後に回ると、先端に炎を灯した長い尻尾がゆらゆらと揺れていた。火蜥蜴の時もそうだったが、どうやらこの階層の魔物の尻尾は燃えているようだ。

 尻尾に炎を灯したドラゴンは、吐き出す炎にも価値がある。先程、ドラゴンが吐き出した炎へ咄嗟に【鑑定眼】スキルを使ってみたのだが、やはりそれなりにいいお値段がした。


 銀色の拳銃でドラゴンの尻尾に狙いを定めるフェイだが、



「ぬぅん!!」


「うおおおおッ!?」



 ドラゴンの尻尾が急に鞭の如く振られ、フェイは反射的に膝を折った。

 しゃがみ込んだフェイの頭上を真っ赤なドラゴンの尻尾が通過する。地獄が頭スレスレを通過して、フェイの肝が冷えた。心臓もバクバクと音を立てているような気がする。


 ドラゴンは「惜しかったか」と爬虫類の瞳を細め、



「ちょこまかと往生際が悪い奴だな」


「まだ生きたいもんで!!」



 フェイがベッと舌を出して叫ぶと、



「フェイ、何をサボってるんだい!! さっさとドラゴンの尻尾を回収しな!!」


「マスター、ここぞとばかりに鬼畜だな!?」


「いつも通りさね、ほらさっさと回収するんだよ!!」



 ご主人様のユーリが銀色の散弾銃を構えてドラゴンと相対する様を眺めながら、フェイは「うえー」とドラゴンの尻尾へ改めて狙いを定める。

 ドラゴンの注意はユーリ向けられていた。ここぞとばかりに今までの貯蓄を大盤振る舞いしてドラゴンの鱗をチマチマと引き剥がしている。そのおかげでドラゴンの真っ赤な鱗がそこかしこに飛び散っていて、鑑定するとやはりいいお値段がした。札束が転がっているようなものだ。


 ドラゴンの鱗は薬にもなるので、重宝される。市場に出回れば確実に高値がつくが、持って帰る気はサラサラない。そういうことは他の探索者に任せればいいだけだ。



「シルヴァーナ!!」



 フェイが叫べば、手の中の拳銃が形を変える。

 銃口が広がり、さながら獲物へ食らいつく肉食獣のように地面へ散らばったドラゴンの尻尾を回収した。広がった銃口が炎の灯るドラゴンの尻尾に食らいつき、先端だけを齧りとって貯蓄とする。ドラゴンの尻尾は珍味として有名で、好事家に売れば目玉が飛び出るほどの値段が算出されるのだ。


 貯蓄された金額に「よし」と頷くフェイは地面に落ちたドラゴンの鱗も回収しようとするのだが、



「ぎゃああああああおおおおおおおおおッ!!」


「わあああああああああああ!?」



 尻尾の先端を齧り取られた影響で、ドラゴンの口から絶叫が迸る。痛みを訴えるように巨躯を揺らすので、先端が消えた尻尾が鞭のようにフェイめがけて襲いかかった。

 齧り取られた尻尾から真っ赤な鮮血が溢れてくる。ドラゴンの尻尾全体を回収した訳ではないので、どれほどの痛みがあるのか不明だ。あれだけ叫ぶのだから痛いに決まっている。


 ドラゴンの尻尾から逃げ回るフェイを助けたのは、



「いただきまーす」



 のんびりした口調と共に、ドラゴンの尻尾が食い千切られる。


 紫色の散弾銃を構えたルーシーが、恍惚とした表情でドラゴンを見上げていた。食い千切ったばかりの尻尾に「おいしーい!!」と称賛の言葉を与える。

 彼女のスキルは【暴食の罪(ベルゼブブ)】――空腹であればあるほど、何でも食べることが出来る強スキルだ。このスキルは金銭さえ払えばスキルの真似事さえこなすユーリでも再現不可能なスキルである。


 ルーシーはトロンと垂れた赤い瞳をフェイに向け、



「だーいじょーぶー?」


「は、はい。何とか」


「よかったー、間に合ってよかったよー」



 ルーシーは「えへへー」と子供っぽく笑うと、



「ドラゴンの尻尾は珍味だからー、食べてみたかったんだよねー。お店でもなかなか取り扱わないしー」


「そりゃあドラゴンって希少な魔物ですからね……そんなに食べられるもんじゃないですよ」


「そっかー、じゃあ目の前にいるドラゴンは食べ放題なのかなー?」



 じゅるり、と涎を垂らすルーシー。子供のようにのほほんとした喋り方をしているが、その瞳は狩人を想起させる鋭さを宿していた。

 ああこれは完全に獲物を狙う目である。フェイは食われたくないのでそっと視線を逸らした。


 紫色の散弾銃を握り直すルーシーは、



「ゆりたーん、わたしもドラゴン食べたいから残しておいてー!!」


「倒せたら言いな!!」


「分かったー!!」



 奴隷の分際では分からない軽すぎるやり取りに、フェイは苦笑するしかなかった。


 一方でドラゴンの出現によって役立たずと認定された連中が二人ほどいる。

 火蜥蜴との戦いで蓄積していた睡眠欲を使い切ってしまった【怠惰の罪(ベルフェゴール)】のアルアと、そもそも地位が高い相手には命令が通じない【傲慢の罪(ルシファー)】のメイヴである。彼女たちはドラゴンから遠く離れた場所で待機し、フェイたちの戦いぶりに野次を飛ばしていた。



「フェイ殿、かっこいいのでやはり私に乗り換えませんかー?」


「貴様、あの下僕は私のものだぞ!!」


「役立たずのくせに口だけは回るんだね!!」



 フェイと一緒になってドラゴンの注意を引きつけるドラゴから「役立たず」という辛辣な評価を進呈された二人は、揃って撃沈していた。

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