知らないおじいさん
「荒くれ者よそこで何をしておる」
突然言われたその一言に、俺は心底驚いた。
「なんのことですか?」
俺はとくに荒くれ者でもないし、荒くれ者らしき言動もしていないからだ。
そもそも俺に言ったのか?
俺はとっさに質問で返してしまった事を言ったあとに後悔していた。
「お主以外におるまい」
俺の事だった。
その人は、どこにでもいそうなありふれたおじいさんだった。
もしかしたらこのおじいさんからすれば、ただ、歩いてその場を横切った俺が荒くれ者に見えていたのかもしれない。
「そうですか。」
その後、俺はそのおじいさんが俺を荒くれ者を言った真意を知ることはなかった。
俺はその場はまた咄嗟に、さってしまったのだから。