表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブコメの神様ですが、一部女子に好かれすぎて困っています。  作者: 猫まんま
一章:永久凍土も時には溶ける!…………よね?
8/35

Another view

楓視点のお話です

 

 腕を組んで、相合い傘。

 本当に、恋人のようです。

 胸を押し付けるなんて……はしたなくて、すっごく恥ずかしいけど……頑張って我慢します。

 だって、これくらいしないと私はスタートラインにすら立てないから……。

 多分、これはオリガミ様に私が勝っている唯一のもの。


 遠くから轟く雷の音も、アスファルトを激しく叩く雨の音も、私の耳には届きません。だって私の五感は、全部先輩に向けられていますから。

 少しだけ過剰に言えば、私の世界は先輩で構成されているのです。

 先輩が隣にいるだけで、心が幸せに満ちてしまう、他のことが気にならなくなります。


「『しのぶもの』は、隠す物じゃないですよ?」

「ん? 何か言った?」

「いえ、何も」

「???」


 まったく……先輩は、本当に古典が苦手みたいですね?

 それとも、私が知らないだけでしょうか? 『しのぶもの』には、隠す物という意味もあるのでしょうか?


 でも、だとしても……私は今ここで『しのぶもの』を、隠す物とは違う意味で使いましたから。

 その意味はもちろん、恋心です。……合ってますよね?

 相合い傘ができないのは、先輩じゃなくて私の方です。でも、私は勇気を出しました。

 私は、私の『しのぶもの』を外に出しました。


「私の恋の気持ち、ちゃんと、見せられましたかね……」


 先輩は、きっと私のこの気持ちに気が付いているのでしょう。

 それは多分、好感度のせいじゃありません。ずっと前から私は先輩を好きでしたし、先輩もきっと気が付いていました。


 先輩の助手に千代紙様が来て、それから段々と本格的に疎遠になっていったのは、先輩が私に気を遣ってくれたからです。

 知らない女の子(しかもすっごく可愛い子)が、先輩と同じ家に住む。それが私を傷付けるだろうと、先輩は私から離れて行きました。

 それが何より、私にはショックでしたが……過ぎたことなのでもう良いです。


「こうして、また一緒に歩けるわけですし」


 そうそう、私がタイミング良く先輩と出会えたのは、別に運命でもなんでもありません。

 今日、雨の中雷が怖くて急いで帰った私を、私の家で千代紙様は待っていました。

 そこで私は、先輩が傘を持っていない事だけでなく、先輩の状況についても聞いたのです。

 ラブコメの神様である、つまり恋愛を司る神様である先輩がモテない。

 それはおそらく悲しむべきことなのでしょうが、悪い子の私はそれを聞いて少し嬉しく思ってしまいました。


 だって、それ程先輩が好きですから。

 そして、先輩は既に私の好感度を見たはずです。だから、私が腕を組んでも振り払ってこないんです。

 先輩は、優しいですから。


「先輩……」

「どうした?」

「いえ、なんでもありません」


 どうせバレているのなら、もう諦めようとか身を引こうとかは思わない事にしました。

 先輩がそういうのを嫌う事は、長い間近くにいた私が一番知っていますし。

 今までは、先輩との関係を変えたくなかったから秘めてきましたけど。

 世界に恋愛を広げる先輩と、先輩を陰ながら支える私。そんな幸せな二人でいたかったから、ずっと伝えていませんでしたが。

 ずっと我慢して、距離を取ってきたけど……。


 もうバレているのなら、隠す方が滑稽ですね。

 これはきっと私の最後の希望にして、最大のチャンスなのですから!

 利用しない手は、ありません。


「…………雷が鳴ってるのに、やけに嬉しそうだな?」

「へ? あ、そ、それは……」

「???」


 ひどい先輩です。私の好感度の数値を見て、もう分かっているはずなのに。

 でも、それくらじゃ折れませんから。そんな意地悪に、負ける私じゃないですから。

 だって先輩は、これから女の子に好かれようと努力し始めるんでしょう?

 そうなれば、先輩の魅力に気付く女の子がどんどん増えて、私はどんどん下に……。


 だから、だから……もう私は手加減しないことにしたので、


「覚悟してくださいね? 先輩♪」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ