天気は豪雨
予約投稿忘れてた……!
────対象の好感度を70にせよ。
「…………」
それが、オリガミちゃんの脳内に届いた指令だという。
70で良いのかとか、まあ色々と言いたい事はあるが、今は気にしないでおこう。
というかそれよりも今は……
「雨か…………」
どうしようかとトイレでウンウンと唸って悩んでいたら、いつの間にか午後四時半を過ぎ。
台風レベルの大雨に、文化系の部活も中止。各クラスにある傘置きには、どれも一つの傘すら置かれていなかった。
天気予報では晴れだったのに、下校時刻になって突然の大雨だ。俺もさっさと帰っておくべきだったか。
時より雷が鳴っていて、その度に一年の女子がビクッと可愛らしく肩を震わせている。
この時のための置き傘、折り畳み傘だ。ほとんどの奴はそれで帰って行った。だからどこのクラスにも置き傘がないんだし。
もちろん、俺も持っている。一本な。
じゃあさっさと帰ろよ、そう思うだろ?
でもなぁ、ちょっと今の状況的にそれが気まずいと言うか……見捨てて帰るのは流石に味が悪いと言うか……。
「…………」
さっきから雷に怯えるこの女の子、どうやら傘を持っていないらしい。
置き傘や折り畳み傘を用意しない子なのか、それとも誰かに盗られたのか……。
いや、傘立てにボロボロになったビニール傘があるし、まあ多分そういうことだろうな。
人の物を無断で盗るとか、一体どういう考えしてんだか。確かに傘が壊れて困っていたのかも知れないけど、盗られた方が困るとか考えないのか?
…………。
………………。
「傘……使う?」
「へっ?」
俺も傘一本しかないし貸したら困るけど……バッチリ目が合ったりしてたのに、ここで無視して帰ったら寝覚が悪い。
仕方ないので自分の持っている傘を差し出すと、一年生の女の子は目をパチクリさせた。
目が悪いのか厚い眼鏡をかけていて一見地味だが、よくよく見ると顔立ちは整っている。
眼鏡をコンタクトに変えたりすれば、普通にモテるんじゃないか?
……この子はあれだな、図書室でぶつかって眼鏡を落とすシチュエーションだな。
それで男の方も、いつも地味だと思っていたアイツがこんなに美人だったなんて……的な感じでドキッとして……って待て待て、今はラブコメの神様の仕事はお休みだった。
「これが社畜か……」
「あ、あの……これ……良いんですか?」
「え? あ、はい。どうぞ。俺は鞄の中に折り畳み傘を持ってるからね」
まあ嘘だけどな。
でも、一年生の隠れ美少女な女の子が「ありがとうございます、ありがとうございます」と何度もお礼を言ってくれたから、損しかしてないのになんか得した気分だ。
助け合いって素晴らしいんだね。
ま、本当は、ラブコメの神様的には、学校内に残っている男子が来るのを待ってた方が良いんだけど……。
「こういうの、ほっとけないんだよなぁ……」
性分なので仕方がない。
仕事に私情を挟んじゃいけないのかも知れないけどな。ま、このやり方で上に認められて、オリガミちゃんと出会えることができたんだから、俺は間違ってないと思う。
「季節外れのゲリラ豪雨、どうせすぐに止む……よな?」
上履きに履き替えて、俺は図書室に向かう。
「…………」
その時、誰かの視線を感じたが、俺は特に気にしなかった。
ついに始まりました、最初の任務です!