隣のあの子の好感度
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「「…………」」
隣の席から、鞄が置かれた音がした。
それだけで、何か言われたわけじゃないけど、俺たちは思わず言葉を切る。
俺の隣の席は、雪浜彩乃の席だ。つまり、雪浜さんのご登校ってことだ。
雪浜彩乃と言えば、この学校で知らない奴はいない。
入試では満点を叩き出し、その後のテストでもいつも一位の秀才。しかも、頭だけじゃなく、そのルックスさえもこの学校の頂点に君臨する。
ところで、俺の中学の知り合いに、早く警察に捕まらないかなぁと常日頃から思っていたおっぱい星人がいる。
まな板は胸じゃないという謎の考えを決して曲げず、方々から袋叩きにあっても決してめげなかった巨乳好きの男子だ。座右の銘は「人は富を求める生き物」。
当然、俺とは馬が合わなかった。
そんな彼だけは、まな板の雪浜彩乃の事が好きにならないと誰しもが思っていた。
結果と言えば、告白して玉砕。その後は貧乳好きになって、小学生を守る自称紳士となりついに補導されたらしいが、まあそれはどうでもいいな。
一つ言えるとしたら、あいつの最後の言葉である「それでも小生は貧しきを愛す!」は滅茶苦茶かっこよかったです。
「何かしら?」
「あ、いや……なんでも……」
この、凍てついた氷のような眼差し。これを見るために告白するドM男子さえいたと聞く。
そう、彼女は、容姿端麗、頭脳明晰。まさに完璧超人なのだが、今まで浮いた話が一つもない。
今ではもう、話しかける事すら恐れ多いと、半ば神聖化されている始末だ。
「おはようさん」
…………こいつを除いては。
さすが翔馬だ。
一切気後れすることなく、自然に話しかけた。
「……おはよう」
この爽やかさには、氷の女王と呼ばれる雪浜さんも、少し間を置いてから挨拶を返した。
そして、俺にチラリと視線を向けてくる。
「えっと……おはよう?」
「…………………………………………」
なんで俺だけそんな間があるの!?
「………………………………おは、よう……」
おそらく十秒以上も待っていると、まるで思い出したかのように雪浜さんが挨拶を返してくれた。
何この翔馬との格差。これが顔面偏差の力か。
顔面偏差かぁ……(溜息)。
「ワリィ誠。邪魔しちゃ悪いから俺はもう自分の先に戻りまーす」
「てめえ、何逃げようとしてんだおら!」
「いやいやぁ……ほら、もうホームルーム始まっちゃうし? じゃあな!」
「あっ、おい! …………くそっ……」
うちの学校は、席構えがない。二年から三年にクラス替えもない。
最初は、この先が最高だと思ったさ。
窓際一番後ろだし、勉強もできる美少女が隣にいる。
でも今はもう、他の男子からも同情される始末だ。
「はぁ…………」
俺には無関心だろうけど、一応、雪浜さんのも見てみるか……。
俺は雪浜さんに目を向けて…………
「……は?」
そして、固まった。
個体名:雪浜彩乃(指令対象)
性別:女
年齢:十六
好感度:30/100
────聞こえるかご主人!
そして、俺の頭に届くオリガミちゃんの声。
────さっき指令が届いたのじゃ!
その言葉が、波乱の始まりを物語っていた。