消えた雪浜さん
忙しくて投稿遅れ気味です
講演が終わり舞台裏に戻った俺は早速、美琴という名前の女子に話しかけられていた。
「いやぁ、すごいよ君たち! なんかもうオーラがやばかった!」
「は、はぁ……あの、結構めちゃくちゃにしましたけど、大丈夫なんですか……?」
「うん! あのね! 姫がヒロインの恋愛演劇なんて、最後お姫様が告白すれば八割成功なの!」
「その理論は色々おかしくないですか!?」
いやまぁ、確かにお客さんはみんな満足してたけどさ!
「いやでも、私は本当に凄いと思うよ」
「雪浜さんは本当に凄いですよね……。俺も、付いていくだけで精一杯でした」
「ううん、彩乃じゃなくて、君のことだよ」
「俺ですか? ……て、あれっ? それにどうして、雪浜さんの名前を……」
「あ、やべ」
口を押さえて、冷や汗をツーと流す美琴さん。口が滑ったって感じだな。
「え、えーとね。私、彩乃と小中が同じでさ。あ、高校は学力の問題で別になっちゃったんだけどね」
「それじゃあ、雪浜さんの同級生だったってことですか?」
「うん、それも、私と彩乃は友達だったの。感情移入しやすい私と、冷静沈着な彩乃。自分で言うのもなんだけど、結構良いコンビだったと思うんだ」
「雪浜さんに、友達…………」
想像もつかないな……。
女子同士の友達がする連れションとかに対して、「非効率だわ」とか言って切って捨てそうなのに。
「君も中々失礼だね……。ま、でも、確かに彩乃は少し変わってたかな。女子なのに恋バナ嫌いだったし、告白は全部キッパリ断るし」
「昔から、やっぱり変わってないんだなぁ……」
「へー、今もそんな感じなんだ、彩乃ちゃん」
「うん、告白は少なくなったけど……入学した時は違うクラスの俺でも噂に聞いていたからね。それに今年も、何人もの一年が撃沈したらしいし」
「うわぁ……さすが彩乃……略してさすあやだね……」
本当、人の性格すらも変えるとか凄すぎだろ。
元巨乳好きのあの男子、確か転校したはずだけど今どうなってるんだろう……。
ああ、なんかロリに蔑まれて喜ぶ性癖に目覚めていそうだ……。
「でも、そんな彩乃が劇とはいえまさか告白するなんてねぇ……」
「…………」
「ま、なんだ。困ったら相談してくれたまえ! 連絡先でも交換しようか」
雪浜さんの友達か……。
もしかしたら、雪浜さんが恋を嫌う理由を、知っているかも知れないな。
連絡先を交換した後、それを聞こうと思って、俺が口を開いた時だった。
「す、すみません! あの、彼女さんが、どこかへ行ってしまいました!」
♦︎♦︎♦︎
「悪いこと、したわね……」
せめて、一言くらい言っておいた方が良かったかしら……。
あの人……恋ノ宮くんは、私を一人にするのを心配してくれていたみたいだし、今頃焦っているでしょうね。
現に、こうしてベンチに座っているだけで、何人もの男の人が足を止めて私のことを見ている。
「ねぇ、君、可愛いね。少し俺たちもお喋りでもしない?」
「…………」
「おっとこりゃ無視とは酷いな。ねぇ君、どこの学校?」
「まず、本当の用件を言いなさい。勿論、喋る相手を探しているのなら、他を当たってくれるわよね。もっとも、私が喋りたいように見えるというのなら、その前に眼下に行くべきだけど」
「へぇ……強気だね。俺、君みたいな強気な子がタイプなんだよ」
「それは光栄ね」
チッ、面倒くさいわね……。
文化祭だからって浮かれているの? 普通ここまで言われたら退くものでしょう? それとも、彼は日本語が理解できないのかしら?
私の質問に答えるくらい、簡単なことでしょうに。
「君はどんな子がタイプなの?」
「そうね……人に迷惑をかけず、人のために頑張れる人かしら」
「へー、奇遇だね、俺も人のためによく行動するし、人に迷惑をかけたことなんて一度もないよ」
へー、なら、これが初めて人に迷惑をかけたってことね。
「あとは、当然誠実さ」
「誠実? それ俺のことじゃん」
へー、それじゃあ貴方は、私利私欲なしに私に話しかけてきたってことね?
「あとは……私を好きにならない人とか、ね」
「それは無理だなぁ。だって俺は、君に興味を持っちゃったんだから」
「あらそう奇遇ね。私も、どんな思考回路をしたら名前よりも先に好きなタイプを聞けるのか、とても興味が湧いているわ」
「へー、俺たち、案外気が合うんじゃないか? なあ、お試し感覚で付き合ってみないか?」
髪をかきあげ、キメ顔をする男。
駄目ね、話が通じない。
これならまだ、表情や周囲の空気から感情を読み取れる赤子の方がまだマシよ。
第一、何のかしらその格好。
ベルトをつけていない制服のズボンから出されたシャツ。胸元を見せるようにして開けているシャツのボタン。
もう一度、国語辞典を傍にさっきの会話を思い出して欲しいものだわ。
「考えるくらいなら、お試しで付き合ってみようぜ?」
「どう断れば貴方を傷付けずに済むか考えたいたのよ。それじゃあ次はあの世で会いましょう」
「へ?」
間抜けな顔を晒している男を無視して、私はその場を後にしようとする。
「おいおい待てよ。それはないんじゃないか?」
「…………まだ何か用かしら。肩、離してくれない?」
「へー、そういうこと言うんだ」
「っ!! は、離しなさい!」
「言われた通り、肩は離したぜ? 俺が掴んでいるのは腕だ」
「腕も離せって言ってるの! 私は急いでいるのよ!」
「ベンチでゆっくりしていたくせに?」
っ……!!
ああ言えばこう言う……!!
誰も助けてくれないし……他校の文化祭ってのは、これが普通なの!?
「強気な子は好きだけど、お前は少し強気すぎるな。人生の先輩として、色々教えてやるよ。安心しなよ、気持ちいいことだから」
「っ…………!!」
力が……強い!
なんで! なんで誰も……! 女の子が、人に連れ去られようとしているのに……!
と、その時、手首の痛みで涙の滲む視界に人の腕が映った。
「おい、その辺にしておけ」
「え…………?」




