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ラブコメの神様ですが、一部女子に好かれすぎて困っています。  作者: 猫まんま
一章:永久凍土も時には溶ける!…………よね?
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せめて名前くらいは……!!

 

 少し遅めの昼食を摂った俺たちは、二人でパンフレットと睨めっこしていた。

 既に一通りは見て回ったものの、それはあくまで覗き見程度。残りの時間で、何について詳しく調査するかを決めているのだ。


「軽音部ライブとかは必要ないよね? 俺たちが知りたいのはクラス単位の出し物だから」

「ええ、部活動、個人単位の物は除外して……」

「一年のは参考にしなくていいかな? この高校の二年三年のクオリティを超えれば目標達成だから」

「そうね……。ノウハウのない一年生では、準備期間がこうも短期間だとどうしてもクオリティが低くなってしまうわ」

「二年三年の中で特に盛況だったクラスをピックアップすると……」

「かつ準備期間の長さがクオリティに比例する物といえば……」


 俺たちは一つのクラス、いや、一つの場所を同時に指差した。


「「演劇」」


 ♦︎♦︎♦︎


 というわけで体育館にやってきた俺たちだったが、開始まで三十分近くあるとはいえ、既に体育館は満員まであと少しという盛況ぶり。

 これを最後に見て帰ろうと考えている人が多いのだろう。時間帯も重要……これはメモだな。


「人混みって苦手なんだっけ? 大丈夫?」


 これは今日知ったのだが、雪浜さんは騒がしい場所や人の多い場所が苦手らしい。

 遊園地が苦手と言っていたのも、これで納得がいった。

 文化祭なんだからどこも人混みだろ? と思うかも知れないが、そこは雪浜さん。そのあまりの美しさに、俺たち二人を中心にちょっとしたスペースが生まれるのだ。

 というか、ずっとついてくる男子生徒諸君がSPのように周囲を近づけさせないようにしている。


「ええ、秩序だった人混みは大丈夫よ。満員電車とか、バーゲンセールのショッピングモールのような場所が苦手なだけ」

「そう、なら良かった。えっと席は……」


 混んでいるとは言え、まだ満席ではない。

 二人分くらい、すぐに見つかるだろうと思って探したのだが……


「うーん……見つからないな」

「南高校の演劇は有名なのかしら?」

「生憎とそういうのには疎いんだ……」

「大丈夫よ、私もだから」

「大丈夫とは……?」

「ふふ」


 演劇で始まる恋は圧倒的に少ない上、文化祭ともなると、俺の力が直接的に必要なかったりする場合がほとんどだからな。

 もう少し早く来るべきだったか……。


「す、少しお時間頂戴してよろしいでふか!?」


 と、俺たちが席を見つけられずに困っているのを見て、ここの生徒だろう子が話しかけてきた。

 変な仮面をつけているので顔は分からないが、声と格好からして女子だろう。

 噛んでしまったことには触れないぞ?


「え、えっと……どちら様?」

「はい! 私はこのクラスの文化祭実行委員であります! このたびはお二人にお願いがあるんでござりまする!」

「うん、ちょっと落ち着こうか」

「これが落ち着いてられますか! 見てください!」

「これは……」


 九十度腰を曲げたかと思えば、ガバッと顔を上げる忙しい女の子が、携帯の画面を突きつけてくる。

 えっと……どうやら、メッセージアプリのグループトーク画面みたいだけど……。


「男女がピースしてる写真がどうしたの?」


 ついさっき送られて来た画像には、楽しそうにピースしている男女が写っていた。

 男子も女子も、上位と呼ばれる容姿をもっておられるが……。


「この二人、この劇の主演の二人なんです! これがストライキってやつですか!? でも忙しい役に立候補したのはあの二人ですからね!?」

「え…………ええっ!? そ、それってかなりまずくない!?」

「演劇できないじゃない……」

「そうです! そうなんです! 練習が多くてデートの時間は取れないことを承知の上で立候補したのに……『付き合いきれねえわwww』ですよ!? ちょっと殴って良いですか!?」

「え!? もしかして殴るって俺を!?」

「なんかMっぽいので!」

「俺と君初対面だよね!?」

「否定しないのね……」

「否定する! 否定します! 誤解しないで雪浜さん! 俺はMじゃありませんから!」


 俺から半歩だけ離れるその態度が何より辛い!


「Mなの……?」「彼氏Mなのか……?」「まあ彼女がそれっぽいからな……」「俺も踏まれたい……」「くっ……オレもMなんだ……!! すまない、相棒!」

「だからMじゃねえから! あとやっぱり最後の奴は出てこい!」

「ああ、そんな話をしている間にこんな時間!」

「半分くらい君のせいじゃないかな!?」

「もう半分はあなたのせいね」

「ぐっ……!!」


 雪浜さんの冷静なツッコミ……。


「それで? まさかとは思うけど、他校の私たちにその主演をやれってことではないでしょうね?」

「いやいや、流石にそんなことは……」

「はい! そのまさかです!」

「「…………え?」」


 聞き間違いかな?


「お二人には主演をお願いしたいのです! ああもちろん、台本全てを暗記する必要はありませんし全部アドリブで結構です!」


 どうやら、聞き間違いじゃないらしい。

 あれ程騒いでいた奴らも、シーンと静まり返っている。

 そりゃそうだ。他校の生徒に出演を頼むなど、多分初めてのことだろう。


「それだと、ストーリーが崩壊しないか?」

「大丈夫です! 話は語り手の私が上手く繋げるので、お二人はラストシーンだけの登場で構いません! 彼女さんくらいの美しさだと、むしろ最後に初めて登場する方がインパクトがあるので!」


 最後に女の子は、「私たちを救ってくだせえ!」と言いながら、キッチリ九十度の角度で頭を下げた。

 だが…………俺はともかく、雪浜さんはこういう目立つのは嫌いだろう。

 ここは、女の子には悪いが断って……


「仕方、ないわね……。あなたは大丈夫かしら?」

「え? やるの? いや俺は別に良いけどさ……」

「まあ……私にも、思うことがあるのよ。言っておくけど、やるからには本気でやるわよ。えっと……あなた、誰だっけ?」

「恋ノ宮誠! あれ!? もしかして今まで忘れられてた!?」

「し、失礼ね。ちょっと……ちょーっと、思い出せなかっただけよ。…………本当よ?」

「忘れられてたやつだこれ!」


 悲しい…………。俺、隣の席なのに……。


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