恋愛占い
「恋愛占い……?」
恋愛と聞いて、雪浜さんの表情が曇る。
自分が俺を嫌っていることがバレると思っているのだろうか。でも大丈夫、もう知ってるからね!
「どうする? やめる?」
「…………」
「……やっぱりやる?」
「…………っ!!」
「それともやめる?」
「…………」
「はぁ……やるわよ。こんな悲しそうな顔されたら、やってもらうしかないじゃないのよ……」
渋々というように、腕を差し出す雪浜さん。
…………ん? 血液検査と勘違いしているのかな?
「あら? 手相占いじゃないの?」
「違います。えっと……今から私がカードをシャッフルするので、二つの束からお二人はそれぞれ一枚ずつ引いてください。引いたカードが、恋愛運や相性の良い相手などを示してくれます」
「そうなの……手相占いじゃないの……」
どこか残念そうな雪浜さん。
そんなに手相占いが好きなのか? 生命線とか異常に長いのか?
そんなことを考えているとカードの束が差し出されたので、俺たちは二つの束から一枚ずつカードを引く。
その瞬間、ピリッと神力を感じた。
マジか……本当に恋愛の神様が関わってんのか……? この子、何者なんだよ……。
「ではまず、信憑性を高めるためにも、お二人について話していきます」
「私たちの個人情報を見るってこと?」
「人聞きが悪いですが……そういうことです。お二人の名前に、今好きな人、学校職場などを」
「へー、それはすごい…………ん?」
あれ? 恋占いしかできないとか言ってなかったっけ……?
それとも、これは占いに入らないのか?
「えっと……まず彼氏さんの方ですが、本名は恋ノ宮誠。高校二年生、恋愛経験はなし」
「そうなのかしら?」
「え? まぁ……実は……」
くっ……ギャラリーの視線が辛い!!
「彼女さんの方は……雪浜彩乃。同じく高校二年生。……おや? 告白された回数はとても多いのに、恋愛経験はないんですね?」
「ええ、昔から今まで、人を好きになったことなど一度もないわ」
「そ、そうですか……。あれぇ……? 恋占い頼む相手間違えたかなぁ……?」
薄々勘付いていたが、やっぱり、雪浜さんは人を好きになったことがないのか。勿体ない……。
てか、本当にすごいな、この子。さっきの神力の件もあるし、実は神様だったりしないか?
「ふふ、全て正解のようですね。さて、では早速、カードを見せてください」
「ああ」
「ふむふむ、成る程……これは面白いですね……」
「ど、どうなったんだ?」
ラブコメの神様として情けないが、俺は滅茶苦茶結果が気になっていた。
そりゃそうだよ! 好きな相手がいないから今は付き合う気もないけど、将来的なことを考えて相性とかは知っておきたいからね!
それに、雪浜さんの好感度を上げるヒントも貰えるかも知れない!
もう俺はすっかり信じているからね、君を!
「まずは彼氏さんから。彼氏さんは、キューピットの絵ですね。他人の恋を成就させる役回りが多いみたいですね」
「もう一枚は?」
「もう一枚のカードは……目隠しをした少女。これは独占欲を示すと共に、気付かない恋心を表します。恋を成就させるだけでなく、本当は貴方も恋をしているのではないですか?」
「おお…………」
すごい。少なくともキューピットは正解だ。
あまりのすごさに、俺はもう感嘆することしかできない。俺が恋をしているってのはよく分からんが……パフォーマンスか?
「そして彼女さんはもっと面白い。王様のカードと、天使に導かれる革命家のカードです。対になってますね。これは、二つの心が入り混じっている状態を表します。さらに言えば、王様に対する革命家、つまり恐れ。貴方は恋に恐怖しています」
ほう……。
チラリと横目で雪浜さんを見ると、雪浜さんは一切表情を動かしていなかった。
「……カード自体の意味は、なんなのかしら」
「王様のカードは、支配者、絶対者。貴方が望めば、手に入らない恋はほとんどないでしょう」
「…………そう」
「あまり嬉しそうではありませんね? でも、安心してください。天使に導かれる革命家のカードが出たということは、そう全て上手く行かないということです。
「どういうことかしら?」
「貴方が一番欲しいものを手に入れるのは、相当難しい。貴方はこれまで恋をしたことがないと言っていましたが、おそらく、貴方の初恋はかなり厳しい戦いになると思います」
「ふーん……」
初恋が叶わないだろうと言われているのに、雪浜さんは気にしていないようだった。
だから俺は、雪浜さんの代わりに聞く。
「じゃあどうすれば良いんだ?」
「はい、そこで貴方ですよ彼氏さん。革命家を導くのは天使、つまりキューピット。そして貴方は、他人の恋を成就させるキューピットの絵でした。嫉妬するくらい、お似合いですよ」
そう言って笑う、占い師の女の子。
すると占いが終わった途端、急に占いを見ていた女の子たちが騒ぎ始めた。
相性が良いという結果が、女の子的にヒットしたのか、コソコソと俺たちの話をしている。
「あ、ありがとう!」
それが気まずくて、俺たちはその場から逃げ出した。
と、その時、
「でも、先輩の恋愛は後輩が相手の時に一番輝くと思いますよ!!」
「「…………はい?」」
突然の言葉に、俺たちは立ち止まって振り向くが、
「すごいすごい!! あ、あの! 私と……せ、先輩の相性も占ってください!」
「わ、私もお願いします!」
「ボ、ボクも…………お願いして、良いかな……?」
「拙者も頼むでござる!」
占いを聞いていた女の子たちに囲まれていて、占い師の女の子は見えなくなっていた。
「…………どういうことだろ?」
「そのままの意味じゃないかしら?」
♢♢♢
「なんでお主は要らんことを言うのじゃ!!」
「だって、だってぇぇ……」
「だってではない! まさかお主、最初からこうするつもりで志願したのではあるまいな……?」
「ち、違いますよ! 勿論私も、最初はちゃんと相性抜群で終わらせるつもりでしたよ……。でも、楽しそうに喋っている二人を見て、極め付けに自分に気付いてくれない先輩を見て……ああ、私って先輩にとってただの後輩なんだな。ただの幼馴染なんだな。とか思っちゃって……」
「それで、思い出してもらうためにあの一言か……」
「うぅ……すみません……千代紙様……」
「はぁ……やってしまったもんは構わん。後は翔馬に任せて、吾輩たちはこの女子らを占うのじゃ。それに、占いの結果も悪くはなかったしの」
「で、でも個人情報はさっきは先輩だから言えたんですよ!? 彼女たちの個人的なことなど分かりません!」
「それは大丈夫じゃ。ここにいるのは、吾輩とご主人がこれまで支援してきた女子だけじゃからな。皆知っておる」
と、誠と彩乃がいなくなった後、占い師の女の子はコソコソと虚空に向かって話していたらしい。
※この占いは作者が考えたものです。実際に効果があるかは知りません。




