親友が役に立ちすぎる
昼間、雪浜さんたちと昼食を摂ったが、俺とオリガミちゃんの行動には影響なかった。
今も、いつも通り、ソファに座った俺の膝の上でオリガミちゃんは本を読んでいる。
そして俺はそんなオリガミちゃんの頭を撫でながら、ラブコメの神様としてこの街に恋愛の種を飛ばしている。
分かってると思うが、種を飛ばすって言ってもあれだぞ? 空気中に神様的な力を漂わせているだけで、別にスイカの種とかじゃないからな?
それと、なんでオリガミちゃんが俺の上にいるのかについてだが……まあ、目を瞑ってくれ。気付けば毎日の光景になっていたんだ。
いや本当に、気が付いたら、いつのまにか。
とは言っても、俺の仕事が終わるとオリガミちゃんは膝の上から降りるので、時間にして大体三十分間くらいだ。
今日も、俺の仕事が終わるとほぼ同時、オリガミちゃんが読んでいた本を閉じた。
だが何故か、今日は一向に降りようとする気配がない。
「? どうしたの、オリガミちゃん」
俺が聞くと、オリガミちゃんはコテンと頭を俺の胸に預けて、天井の角の方を見ながらポツリと言った。
「ご主人、何かして欲しいことはあるか?」
「ん?」
「どこかご主人が浮かない表情をしておるように見えて……。悩みなら聞くぞ? と言っても、人生経験はご主人の方が圧倒的に多いのじゃがな」
そうなのか?
言われて自分の顔を触ってみるが、これで分かるわけがない。
鏡を見れば分かるかも知れないが、オリガミちゃんが膝の上に座っているので洗面所にも向かえない。
「うーん……悩みがあるとしたら……雪浜さんかな?」
「あやつがどうしたのじゃ?」
「いや、好感度が低すぎる気がしてさ。勿論好かれるとは思って無いけど、嫌われるようなことをした覚えもないんだよ」
「確かに、考えてみれば不思議かも知れんな……。ううむ……実はご主人のことが好きだったが、鈍感なご主人に気づかれないせいで拗らせて嫌いになってしまった……とかはないか?」
「ないと思うよ」
俺はラブコメの神様だぞ?
自分への恋愛感情に気が付かないわけがない。
いやまぁ、オリガミちゃんにしろ、楓にしろ、ちょっと予想よりも高くて驚いているけどね?
「はぁ……なんで嫌われてんだろ……」
考えても全く分からないな……。
と、俺が溜息をついていたその時、突然、ポケットに入れている携帯に通話が来た。
「ひゃうっ! ご、ご主人! 急に何をする!」
「いや俺じゃないからね!? ちょっと待って、電話だよ電話!」
俺に何をされたと思ったのかは知らんが、慌てて携帯を取り出して見ると、そこには翔馬からの通話が来ていた。
オリガミちゃんは顔を赤くして俺を睨んでいたが、それを見てちょっと恥ずかしげに目を逸らす。
「変な誤解しただろ」
「し、しておらん……」
嘘つけ。
でもまぁ良いか。
「どうした? 翔馬?」
「あー、千代紙様とイチャイチャしているとこ悪いな、すまんすまん」
「してないからな!?」
「ありゃ? そうか? してそうな時間を選んだつもりなんだがな……」
「余計なお世話すぎる……」
そのせいで変な空気になったじゃねえか!
「まあいい。そんなことより、お前に伝言……というか命令だ」
「命令? なんだ? 好きな子でもできたか?」
「そしたらお前の力を借りるまでもねえよ。確かこの時期、南高校で文化祭あんだろ?」
「このイケメンが……んで、なんだ? 確かにあるけど」
一学期中に文化祭を行う、少し珍しい高校だ。
決してグレードは高くないが、客を奪い合わないからか、訪れる人の数はそれなりのものらしい。
お互い近くにあるからか、うちの高校とよく比べられていて、我が校の文化祭実行委員は、南高校に敵対校として殺意を持っていたりもする。
「だから、敵情視察に行ってこい」
「…………は?」
「俺たちの文化祭は夏休み明け。もう六月だから、時期的にそろそろ文化祭を意識する必要があるだろ? んで、我がクラスの実行委員にお前らを推薦したの」
「…………は? お前ら?」
「そう、相方は……まあ言わなくても分かるな? 時間は、明日十時に南高校前だ。遅刻すんなよ」
「あ、ちょっと────」
問答無用で切られた……。
えっと……突然のことで頭の整理が追いついてないけど……これってつまり……
「どうしたのじゃ? ご主人」
「オリガミちゃん、俺、明日、雪浜さんと南高校の文化祭に行くことになった」
「…………は?」
ポカンとした、オリガミちゃんの表情。
そりゃそうだ。俺だって、未だに脳が理解を拒んでるぞ?




