今年の一年は……
あれほどあったストックが消えていくぅ〜
「雪浜梨沙だ。よろしくな!」
梨沙ちゃんは、快活そうな子だった。
見た目からして雪浜さんとは対極に位置するような子で、雪浜さんが黒髪ロングなら梨沙ちゃんはツインテールだ。
ニカッと笑う口から八重歯が覗いており、両手を腰に当てて堂々としている。
雪浜さんも堂々とはしているが、雪浜さんのが氷の女王様とすれば、こっちは元気なスーポーツ少女だ。
だがやっぱりなんというか、姉妹だなぁと感じる所はある。
例えばその美しい容姿だ。梨沙ちゃんの顔にはまだ幼さが残るものの、やはり雪浜さんと同じ血筋の人間だ。
あと胸の大きさ。それ以上は言わない。
「ん……あれ? 楓じゃないか!? なんだー! そういうことかー」
「えっ……あ、そ、それは……」
知り合いだったのか。
何か含んだようなニヤニヤとした笑みに、楓が顔を真っ赤にする。
その反応を見た梨沙ちゃんはさらに目を輝かせて、楓の耳元で何かを囁き始めた。
「…………っ!!」
すると楓が、さらに真っ赤になって俺の方をチラチラと見てきた。俺と目が合い、頭からプシューと湯気を出す。
梨沙ちゃんと楓が何か話しているようだけど、声が小さくて聞こえないな。
「さ、早くいきましょう。学年も違うしこの人数なら……屋上かしら?」
「ああそうだな。首を傾げてないで行くぞ、誠」
「え? わ、分かった。楓、梨沙ちゃん、話しているところ悪いけどもう行くって」
「っ!! わ、分かりました先輩! 梨沙も、もう行くからこの話はおしまいです!」
「チェー。楓があんな顔を真っ赤にするなんて、面白かったのになぁ……」
「い、良いから行きますよ梨沙!」
「あ、おい! 引っ張るなって! わ、分かった! ごめんって! か、揶揄ったのは悪かったからぁぁ!!」
かなり恥ずかしかったのか、いつになく手荒な真似をする楓に、梨沙ちゃんが本気で謝る。
それでも楓は頬を膨らませていたのだが、好奇心は猫をも殺すとは言え、流石に梨沙ちゃんが可哀想だ。
俺が注意すると、楓はしぶしぶと梨沙ちゃんの腕を離した。
「い、いてて……。……あ、ありがとな、その……」
「恋ノ宮誠だ、よろしくな」
「あ、ああ……よ、よろしくな……マコト」
いきなり呼び捨てか。
でもなんだろう、舐められている感じはしない。むしろ親しみを感じる。
梨沙(呼び捨てで良いと言われたので)と話しているうちに屋上についたが、俺たち以外には誰もいなかった。
「誰もいないなんて珍しいなー。いつもは五人くらいいるのに」
「梨沙はいつも来てるのか?」
「ん? まあ時々かな。な、楓」
「はい、教室で食べることが多いですが……天気の良い日なんかは屋上に出て食べますね」
へぇ……良いな、屋上。俺も今度から使ってみようかな。
何より、オリガミちゃんと話していても、周りに変な目で見られないのが良い。
「ま、なんにせよ人がいないならラッキーだな。おい誠、どこら辺で食う?」
「ベンチとかあれば良いんだけどな……。スカートとか汚れないか?」
「ああ、それなら大丈夫だぞ。確かこっちに……おお、あったあった!」
屋上の隅の方に走って行った梨沙が、何かを持って戻ってきた。
「じゃーん! ブルーシート! 天体観測とかで使うやつだけど、いつも勝手に使わせてもらってるんだ」
「勝手に使って大丈夫なのかしら……?」
「大丈夫大丈夫。実際天文部員に聞いたこともあるけど、『よく分からないけど楽しそうだからオッケー!』って言ってたしさ」
「それは駄目なやつでは!?」
「まーまー、細かいことは気にしない気にしない。ほらほら、さっさと食べようぜ」
「そうですね、先輩方も早く食べましょう」
「「「…………」」」
今年の一年はパワフルだな……。
俺たち二年生三人の間で、初めて意見が一致した瞬間だった。




