あっ…………
「……何をやってたんですか?」
畳の上に直接正座させられている俺の前で、楓は腕を組んで足はしっかり肩幅に開く仁王立ちで、上から俺を見下ろしている。
「どういうのが嫌われるか研究してました」
「それが何故あんな状況になるんですか?」
「演技とはいえオリガミちゃんにあんなことをさせたのなら、俺も誠心誠意本気で取り組むべきだと思ったんです」
「それで、結構本気で嫌がるオリガミ様を押し倒して?」
「いや、吾輩は別に嫌では……むしろ嬉し……」
「オリガミ様は今黙っていてください!!」
「了解じゃ!」
ピシッと敬礼したオリガミちゃんは、素早く俺の隣に正座した。
自分も説教されるべきだと考えたのだろう。
神の俺とオリガミちゃんが、神に仕える巫女である楓に説教させられる……。
考えてみればすごい光景だな。
「つまり整理しますと……。嫌われそうなシチュエーションを試していたら、本気で楽しんでしまったと」
「いや、それは少し語弊が……」
「うむ、ほぼ正解じゃ」
「ちょっと待って!? ここを肯定したら終わりでしょ!」
「わ、吾輩は嘘がつけない性格じゃからな! 仕方がないのだ!」
何故か胸を張るオリガミちゃん。
まぁ確かにそうかも知れないし誇るべきことなんだろうけど……
「と、とにかくじゃな! これは吾輩の暴走なのじゃ。ご主人は悪くない」
「へ? い、いや俺の方が悪いだろ! 無理矢理棒アイスを食べさせて……俺が触れている物しか触れないから、オリガミちゃんの身体は汚れないけどさ……」
「ひゃんっ! ご、ご主人……き、急に肩に触るでないぞ……」
そう言って、オリガミちゃんは赤くなった頰を膨らませる。
お、おぅ……ごめん。
「な に を……イチャイチャしているんですかぁぁ!!」
「へっ?」
「いっ……イチャイチャじゃと!? そ、そんなことしておらんぞ! そ、そうだよな、ご主人!」
「あ、ああ! さ、さあさっさと作戦会議だな!」
俺とオリガミちゃんが半ば強引に話を進めると、まだ楓は不満そうだったが、溜息をついて座布団を渡してきた。
そろそろ足が限界だったのでありがたい……。
だが、立ち上がった途端、
「あ、あれ?」
「ご主人!」
「先輩!?」
フラリと視界が揺れた。
俺は咄嗟に伸ばされた手を掴んだものの、次の瞬間後頭部を畳に打ち付けて目に涙が滲んだ。
「い、いっつぅ……」
冗談でもなんでもなく、畳じゃなくてフローリングだったら、俺の頭は割れてたんじゃねえか……?
「てか、これって誰の…………」
誰の手なんだ? そう言おうとして、目線を自分の身体に向けた瞬間、言葉どころか呼吸も止まった。
「あ、せ、先輩……」
俺の身体の真上に、楓がいた。
しかも、倒れる瞬間に腕どころか身体も引き寄せてしまったのか、俺は楓の腰に左手を回して、右手は楓の左腕を強く掴んでいた。
シャワーを浴びたばかりの女の子の良い匂いが俺の鼻腔をくすぐり、顔がカァッと赤くなるのを感じる。
「「…………」」
俺か楓のどちらかが少しでも動けば、きっとキスしてしまいそうな程近い距離で見つめ合う。
オリガミちゃんが楓の背後で固まっているのが見えたが、今は俺はそれどころじゃなかった。
と、その時、
「楓ー、誠くんとオリガミ様が来てるんだってー?」
「お父さん!?」
「やばいっ!」
楓の父親の智典さんは神主で、そして小説家でもあるため、大体いつも家にいる。楓と同じくオリガミちゃんを敬っているし、いつか来るだろうとは思ってたけど……!
いやいや流石に今はまずいだろ!?
「は、早く起きてくれ楓!」
「そ、それが……足を軽く捻ってしまったみたいで……」
すまなそうに謝る楓の目には、涙の粒が浮かんでいた。それほど足が痛いのだろう。
だが、楓が動けないとなると、その下にいる俺も動けないんですが……。無理矢理楓の下から逃げようにも、生憎と俺の足も痺れたままだ。
「そうじゃご主人! 神威を解放するのじゃ! そうすれば足の痺れなんて関係ない!」
「で、でも……」
「でももめーでーもないわ! 娘が自分のいる時に男に襲われておるのじゃぞ? 色々とまずい!」
「メーデーってそう意味じゃないからね!? ああっくそっ! 分かったよ! 本当はダメだけど今はそれどころじゃないからな!」
確かに、オリガミちゃんの言っていることは一理あるかも知れないか……。
……神威解放。
それは、簡単に言えばリミッターを外すことだ。
神によっては、仕事中に事件に巻き込まれることもあるからな。そんな場合のための対策だ。
ラブコメの神様である俺の場合、本当は恋愛事情に暴力が関わった時だけ……誘拐とか強姦を見つけた時にしか使ってはいけないが……。
「神威……」
「ま、待って────」
「解放!」
「〜〜〜〜ッッ!!」
巫女と神が抱き合っているところを、巫女の父親である神主に見られる。
その状況を防ぐためなら、多分天界も許してくれるはずだ……!
そう思ったのだが…………
「そうじゃ! 楓は巫女じゃった! ご主人の神威を真正面から受けたら大変なことになる! すぐにやめるのだご主人! 多分、誤解された方がマシじゃ!」
「え? そ、それって……」
腕の中の楓に目を落とすと……
「先輩のが流れ込んできて……あ、ああっ! 気持ち良すぎて、あぅぅ……何、コレェ……!!」
「か、楓!?」
「だ、ダメ……見ないで……あ、ぁぁぁぁ!!」
「す、すまん!!」
詳しい描写ははぶくが、色々とヤバイと思った俺は慌てて解放をやめる。
「は、はぁぁぁぁ〜〜……まってって、わたし言ったのにぃ……ふぇ……グスン……」
身体の中を、人間には多すぎる量の神力が駆け巡ったのだ。
神に仕える存在である巫女の、神力に対する感度は非常に高い。だからこそ、巫女はまず神力に慣れる訓練をするのだが……。
巫女として若い楓は、まだ神力に慣れる訓練が中途半端だったのだろう。
許容範囲を超えた強すぎる快感に、楓は俺にしがみついて、荒く熱い息を吐いている。その目には涙が滲み、俺を見る目もどこかトロンとしていて……。
そして、そんな状況の中……
「まったくもう。僕に言ってくれないなんてひどいじゃないか…………」
躊躇なく襖が開けられた。
さて、笑顔で固まった智典さんは何を見たのでしょう?
最初の時点ではハードな描写だったので、それを直すのがまぁ大変……。
(力を解放しただけですよ?)
年齢制限なしは本当に怖いですね。R15にしようかな……と思ってみたり。(表情は変わらないですが)




