迷宮に挑むJK。
私達は満を持して押し入れを開ける。
そしてそのぽっかりと開いたダンジョンの入り口に足を踏み入れると、一瞬にしてまた見た事のない景色が広がった。
「おいおい、どうなってるんだ? ダンジョンなんでもありかよ」
「すっごい! 綺麗だね♪」
私達の目の前に広がっていたのは草原だった。
背の高めな草が沢山生えていて、花もところどころで咲いている。
どこからともなく風も吹いているし、なにより驚く事にここには太陽がある。
「ダンジョンっててっきり地下だと思ってたよ」
「……私だってそう思ってたさ。でもここが実際の世界のどこかって訳でもなさそうだぞ。ほら、モンスターが居る」
私がアーニャの言う方を見ると、確かにでっかいカタツムリみたいなモンスターがのそのそ歩いていた。
歩いていたって表現であってるのかな??
「外の世界にあんなものが居たら大騒ぎだろ? だからどっちかっていうと、異空間って所かもしれない」
胃空間? あ、異空間か。
確かにその方がしっくりくる気がするけど、今の私にはそんな事どうでもよくって。
「ねぇねぇすっごく綺麗だね! 天気もいいしポカポカで眠くなってきちゃうよ」
「馬鹿言ってないで散策するぞ。あのカタツムリは放っておいても大丈夫だろう。動きもゆっくりだし無駄に戦う事はないさ」
そうなのかな? モンスターだし倒した方がいいんじゃないの?
アーニャはモンスターに目もくれず草をかき分けたり遠くを眺めたりしてこの場所を観察していた。
もしかして宝箱を探してるのかな?
アーニャにも私の大虐殺バールみたいな武器があれば戦いやすくなるもんね♪
勿論ダンジョンに入るんだから大虐殺バールはきっちり装備してきている。
装備って言ってもただ持ってきただけだけど。
「そういえばアーニャ、このバールの炎って、外の世界で使ったらどうなるんだろう?」
「……外じゃ普通のバールだった」
……なんでそんな事が分かるんだろう?
「あんたが飲み物取りに行ってる間に試しに振ってみたから間違いないよ」
「辞めてよ! 私が居ない間に人の家を燃やそうとしないで!! いくらアーニャでも火事になってたら穏やかじゃいられないよ!?」
いったい何を考えてるんだこの子は!!
「ん、まぁ……それもそうだな。悪い。だけど、たぶん炎は出ないだろうなって思ってたからやったんだよ。ダンジョンを出てからそのバールに感じてた不思議な感覚が無くなってたからな」
アーニャってばいつからそんな感覚を身に着けたの?
「不思議な感覚ってなに?」
「あ? 不思議は不思議だよ。説明しにくい」
やっぱりこの子の心は迷宮だわ。