天使の谷間で悶絶するJK。
「うぅ……」
キャロちゃんが隣で呻き出す。
「ど、どうしたの??」
心配になって声をかけると、キャロちゃんは突然私の身体を思い切りむぎゅーっと抱きしめてきた。
「ちょっ! え? なになにどうしたの? てか胸がめっちゃ当たってるんだけど!?」
「お嬢もアーニャさんも……すっごく大変な思いをしてきたんですわね……わたくし、わたくし……わたくしもお二人のお友達になりたいです!」
むぎゅーっ!
うおぉぉ……。
なんという破壊力……!
こうかはばつぐんだ!
「ダメ……ですか? わたくし、二人ともっと仲良くなりたいですわ」
「あのね、私もアーニャも慰めてほしいわけじゃないし同情は要らないよ」
「あっ……その……わたくしは……」
「でもね、そういうの関係無しでキャロちゃんが友達になりたいって言うなら大歓迎♪ 少なくとも私の方は友達になりたいし、もうなってるつもりでいたんだけどね☆」
「お嬢っ!」
むぎゅむぎゅむぎゅーっ!
再びキャロちゃんが私を思い切り抱きしめ、私はそのとてつもない破壊力の胸に挟まれて窒息しそうになった。
息が出来なくて窒息って事は死にそうって事でなんというかその、アレだ。至福。
「ねぇキャロちゃん。今度は私からも聞いてみていい?」
とてつもなく至福な谷間を抜け出して、私からそう切り出した。
「わたくしで応えられる事なら」
「キャロちゃんのお家って……」
「あ……あぁ、そうですわよね。いろいろ聞いてわたくしが教えないわけにもいかないですわ。でも、特に変わった話でもないですわよ?」
別にそれはいいんだ。
普通の話だって構わない。
「私達の友情の証として聞かせてくれたらうれしいな」
「はいですわ♪ ……わたくしは……」
言葉を選びながらゆっくりとキャロちゃんが自分の事、自分の家の事などを語り出した。
彼女の家は元々裕福な家庭だった。
以前はスイスで暮らしており、かなりの資産家だったらしい。
父親が日本人、母親がスイス人。
父親はスイスを拠点に会社を幾つも経営していたやり手だったそうだ。
だけど、彼女がまだ幼い頃に父親が亡くなり、母親が鬱になってしまって、しばらくふさぎ込んでいたらしい。
やっと現実を受け入れ始めた頃、父親の元部下と名乗る人物がやってきて、会社を引き継ぎたいと言い出し、経営には一切かかわってこなかった母親はいい様に騙されて全ての権利を奪われた。
その上、父親が亡くなる直前に展開していた事業が失敗し、その損失分の借金だけはすべて残された家族に押し付けられた。
父親の残した財産はすべてその補填に回し、ほぼ一文無し状態になってしまった彼女らは、父親の生まれ故郷である日本へと流れて来たらしい。
日本に来てからも波乱万丈な人生だったようだが、持ち前の明るさでキャロちゃんはなんとか乗り越えてきたらしい。
日本語も日本に来てから覚えたそうだ。父親は家庭では日本語を話す事がなかったらしく、まったく喋れなかったらしい。
あちこち転々としながら日本語を覚えてきたので変な方言の混ざり方をしたりしてたんだろう。
本人は標準語を喋ろうと気を付けてるみたいだけど……ところどころおかしいのはそういう理由だったのか。
「おっかちゃんはとても苦労してきたから……だから、少しでも楽をさせてあげたいんですわ」
「天使って、いるんだなぁ」
キャロはキャロでいろいろと苦労人なのでした。
そして、天使っているんだなぁ。(笑)






