満足のいく死を迎えるJK。
今度はもう少し上。肘の内側に鉈を振り下ろす。
ゴリっと音がして半分くらいしか食い込まなかったのでさらに繰り返し、三回目で切り落とした。
「いっ……! やだ、やだやだ! 何これ痛いよもう辞めてよっ!!」
「だったら逃げなよ。惨めにさ、やっぱり死にたくなんかないよ助けてって逃げてごらん。それか私を殺せば? 空間転移してさ、背後から私をどこかに消し飛ばしてみせなよ」
「……っ!! ッ!? できない、出来ないよどうして!? 何したの……!? 痛いっ!! たすけ……」
「助けなんか来ないよ。私も助けてなんてあげない」
「ひっ……!!」
「生きるって、生きてるって凄い事なんだよ。そのありがたみを噛みしめて死んで」
出来る限り生きてるって事の素晴らしさを思い知らせて殺してあげる。
今度は五回振り下ろして足首を切断した。
私も返り血で真っ赤。嫌な臭い。
「下手に慣れちゃってるからなかなか意識を失えないでしょ?」
「……た、たす……けて……しに、たく……」
はぁ、それが本音? 死にたくない? 今更遅いんだよね。
「……最後に、それに気付けた事はきっと良い事だよ。君は私の仲間まで殺した。だから後悔して後悔して後悔して死んでよ」
「い、嫌……たすけて、死にたくない……」
「……はぁ、そればっかり。ごめんなさいは言えないんだね。だったらもういいよ、わかった。終わりにしよう」
一際大きく鉈を振り上げ、
「さよなら」
思い切り鉈をゆゆの顔面へ振り下ろした。
じぃんとこちらの手に響く感触。
柔らかい物を切り分け、硬い物にあたる振動。
錆びた刃で無理やり切開された肉から噴き出す鮮血。
そして、そして……。
「ど、どうして……?」
ゆゆは目を見開き、目の前で起きた事に困惑と驚きの声をあげた。
「ボク……は、ゆゆに、生きて……ほしかった、から」
まるでヘッドスライディングでもするかのように私が振り下ろした鉈とゆゆの間にもちゃが割り込んできて、さすがにもう手を止められなかった私はもちゃの肩に鉈を振り下ろしていた。
「……もちゃ、ここまでどうやってきたの?」
「……っ、アーニャ、が……多分、ここだって……」
ああ、目が覚めたアーニャにこの場所を聞いて、あっちで復活させたマスターか四神連中にここまで転送してもらったってわけか。
これは予定が狂っちゃったな。
でもゆゆはこれだけ血を流しているからそろそろ意識も薄れてくるだろうし、もう少ししたら死ぬだろう。
それよりもちゃだ。
思い切り振り下ろしちゃったから結構えぐい食い込みかたしちゃった。
下に居るゆゆが溺れるんじゃないかっていうくらい血が流れている。
「もちゃ……ごめん、私、私……」
「いいの。もう、いいから……」
「死にたく、ないよ……」
涙と鼻水をだらだら垂れ流しながらゆゆは死を嘆く。
「……ゆゆ、ボクも……ごめん。本当は、ダンジョンから離れていれば殺せるって……死ねるって、知ってた。だけど、ゆゆと一緒にいたくて……それで……」
「…………」
「ゆゆ? ……ゆゆ……」
意識が消えかけたゆゆが、最後の力を振り絞ってもちゃの頬を撫でた。
「大丈夫、怖くないよ。ボクも一緒だから……大好きだよ」
もちゃが懐から短刀を取りだし、自分の首を切り裂いた。
ゆゆの上に崩れ落ち、まるで抱き合うような姿で、二人は息絶えた。
そんな二人の表情は、とても満ち足りた顔をしていて、それを見た私は……。
なんだかとても腹が立ってしまった。






