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第一試合を見届けるJK。


「……何?」


 マスターがゆっくりとリングの方へ振り返る。


 クレーター状に抉れたリングで、氷のようにも水晶にも見えるような物体に閉じ込められて固まっている白虎が、わずかに動いた。


「まずい! すぐに止めを……ぐわっ!」


 マスターが突然何かにぶつかるように仰け反っておでこを抑えた。


「な、なんだこれは!?」


 マスターはべちべちと何もない空間を叩く。


「おいナビ子! 説明しろこれはどういう事だ!?」


「はいはーいナビ子でっす! あー、えーっと……言いにくいんですけどぉ……」


「いいから早く説明しろ! 爺さんが目覚めちまうだろうが!」


 あっ。

 私は今何が起きているのかが分かってしまった。


「だからマスター……最初に説明あったじゃないですかぁ……自分からリング降りたら降参なんですってばぁ……」


「はぁ!? 終わったから降りただけだろうが! 終わってないなら戻るぞ!? 降参なんてしてない!」


 ばきん!


 封印が、解ける。


 ビキビキと亀裂が大量に入り、やがてバラバラと崩れて白虎が首をぐるぐる回しながら自由になってしまった。


「……ふぅ……こいつは参った。儂は完全に人間を甘く見ていたよ」


「おい、冗談じゃないぞ! ジジイ共! これを見てるんだろう!? これはさすがにおかしいだろうが!」


 マスターが上空を睨んで叫ぶ。


 その様子を見て朱雀が呆れたように呟いた。


「詰めが甘い。人間達が命を賭して神をも超えられるところだったが……お主の甘さがそれらを無駄にしたのよ」


「なっ……!!」


 マスターが、今まで見た事がないような怒りに満ちた表情になり、そしてだんだんと絶望の表情に染まっていく。


「お主はなまじ頭がいいから大体の事は予測できてしまう。今回の件もそうだ……完全にここまでは予定通りだったんじゃろう? そういう部分の詰めの甘さが招く失敗というのをいつか教えてやりたかったが……まさかこんな形で実現しようとはなぁ」


「くそぉぉぉぉっ!!」


 どがん! とマスターが見えない壁を叩く。



「……なんだ響子はリタイアなのか? おい、この場合はどうしたらいい」


 自由になった白虎が辺りを見渡してナビ子に問う。


「あ、えっとですねー、まだ意識がある人がいるので、その人達が自らの意思でリングを降りるか全員が意識を失ったら試合終了になりますー」


「やめろっ! もう、私達の負けだ。これ以上は……」


「うるさい」


 白虎がマスターの言葉を遮る。


「お前にはこれが見えんのか? 絶対的に勝てないと分かり切った状況で、意識すら朦朧としながらこれだぞ? どうして手を抜けようか」


 イル君が……ボロボロの状態で、白虎の脇腹に長ドスを突き立てていた。


「死ねや……コラァ……」


「ふっ。漢よな……見事なり」


 白虎のボディーブローをモロに受けたイル君のお腹に、大きな穴が開いた。


 イル君は白虎を鋭い目で睨みつけたまま絶命した。

 ハム子は……もう意識は無い。


 つまり……。


「第一試合は白虎様の勝利でーす!」


勝った、という油断はダメっていう教訓ですね……。

とにかく徹底的にやっていれば勝ちを拾えていたでしょうが、こういう事もありますよね。

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