第一試合を観戦するJKその四。
「響子よ。お前は一つ大事な事を忘れていないか?」
「ほう、興味あるね。それがなんなのか是非教えてもらいたいもんだ」
マスターはゆっくりと立ち上がり、不敵に笑う。
「人間の攻撃にそこまでの威力があるとも思えんが……仮にあれが相当の威力だったとしよう。だが……」
そこで、ハム子の構えた巨大な砲台が光り輝き、ついに砲台が火を噴いた。
きっとハム子の能力を最大限活かすためにいろんな属性を付与している筈だ。
「どんなに強力な攻撃であろうと……当たらなければどうという事もない!」
一直線に突き進むエネルギーの塊を白虎は高速で移動し、あっさりとかわしてしまう。
「馬鹿だなぁ。そのくらいの対応、考えていないとでも思ったのか?」
マスターが悪者がするような凶悪な笑顔を浮かべていた。
あの顔をしてる時は大抵ろくなことがない。
きっとマスターは既に勝ちを確信しているんだろう。
「対策……?」
白虎が不思議そうにマスターに何かを問いかけようとした時、彼目掛けて再びあのエネルギーが向かって行く。
「追尾……だと? これはあの女の能力か? ならば……!」
白虎が再び高速移動をし、砲台を抱えてフラフラしているハム子を蹴り飛ばした。
彼女はもう立ち上がれないだろう。
「残念だがね、一度放たれた力は消えはしないし追尾は彼女の能力ではない」
ハム子を蹴り飛ばして安心していた彼の元へ再びエネルギーの塊が迫る。
「いつまで逃げても意味が無いという事なら、正々堂々受け止め、かき消してやろう!」
白虎が両掌を前に突き出し、砲撃を正面から受け止めようとしたその瞬間。
掌に砲撃が触れた瞬間。
大爆発を起こしリングの半分が消し飛ぶ。
煙幕が吹き上がる。
モニターは煙で何も見えなくなり、やがてそれが晴れた頃、陥没した地面の中で白虎が透明なクリスタルのような物に閉じ込められ固まっていた。
「爺さんの敗因は……ハム子のその砲撃が、攻撃だと思ってしまった事だ。人体その物を砲弾として使用した事、あらかじめ爺さんの身体に刻印を刻んだ事、すべてがうまく行った……まさに計算通りというやつだね」
どっと歓声が上がる。
私達だけじゃなく、どこかで同じ映像を見ていたらしい神界の人々の大歓声が聞こえる。
というかイル君の姿が見えないと思ったらハム子の砲弾に使われていたらしい。生命エネルギーを力に変えるとかそういう類の攻撃かな? 正確には攻撃じゃなくて封印、だったみたいだけど。
丸焦げのイル君が白虎の傍らに落ちてる。
最初にイル君が白虎に触れた際に付けたのがきっとマーキングみたいになってて攻撃を全てそこに吸い寄せていたようだ。
「やれやれ……上手くいったけど私は疲れたよ。これだから労働は嫌いなんだ……」
そう言ってマスターはゆっくりとリングから降りる。
そして、何かが砕け散る音が聞こえた。
第一試合終了……。
とはいえ、もうちょっとだけ続きます。






