行き場のないもやもやが発生するJK。
「ねぇ、ナビ子やってたんだったら私のダンジョンがあとどのくらいあるのかって分るんじゃない?」
気になってた事をお嬢に問いかけてみる。
彼女は振り向く事もなく魔法陣を探しながら、「そこまで深い訳じゃないよ。あと一階層ってとこだと思う」と言った。
「一階層ってどのくらい?」
「大体十フロアってところだよ」
うげー。まだ結構あるじゃん……。
「その間にもダンジョンのボスとかに出会う可能性あるんだよね?」
「そうだね。第二階層のボスは居る筈だよ。さすがにそいつがどんな奴なのかまで私は調べてないけど」
なんでも知ってるって訳じゃないのか。
「もうそういうのは調べられないの?」
「そりゃそうだよ。ナビ子の時はちゃんとナビゲータールームからアナウンスしてるんだからさ。あそこならいろんな情報も調べられるけどここからじゃいくら私でも無理だなー」
もう完全にあっちの人じゃなくなってるって事だろう。
「もしかしてさ、私が無理矢理連れてきちゃったからお嬢が狙われたりするのかな?」
「うーん。それの返事は難しいね。正直言えばそうだったよ。ゆゆも知っての通り、私は神様候補だったし、龍神のおっさんの面子を潰しちゃった形になるから、何されても仕方なかったし追手は来ると思ってた。まさか龍神のおっさん本人が来るとは思わなかったけどね」
そうか……でもその代わりにこじこじが連れていかれちゃったから……。
「あのおっさんは私の代わりをこじこじにやらせるつもりだろうからもう私を追ってきたりはしないだろうけど、逆に言えば私に手加減する必要も無くなっちゃったわけだからね。最悪の場合あのおっさんと戦う事になるかも」
神様と戦う……もうレベルが違いすぎて実感もわかないや。
「そういえばこじこじが神様になる素質あるみたいに言われてたけどあれはどういう事なの?」
「あー、あの子は人間じゃないからね」
人間じゃなきゃなんなのさ。神様でもないわけだし、毎日普通に会って話をしていたこじこじが人間じゃないとか言われても全然そんな気がしない。
「ボクちょっとだけ聞いた事があるよ。たしか思念体みたいなものだって言ってた気がする」
思念体? あれが??
「私の学校のクラスメイトの妹がね、固有ダンジョン持ちで、ダンジョンに入ったまま行方不明になったんだよ」
お嬢はこじこじと出会う経緯を語り始めた。
お嬢が言うには、その固有ダンジョン内でこじこじの元の人が妙な才能に目覚めて自分と思念体を分離させちゃったとかなんとか。
結局のところダンジョンのボスを倒した事でその本体は目覚めたけれど、ただの本能で動くだけの分身だった筈なのに知恵の実みたいなのを食べちゃったせいで自我が芽生えて、思念体のままのこじこじは行く場所も無いしどうしようってなったらしい。
それでお嬢がこじこじを引き取って一緒に暮らしてたんだってさ。
人間じゃない特殊な存在だから神様になる素質があるって事なんだろう。
寿命だってあるかどうかわからないし。
こじこじって凄い人だったんだね。
ちなみに本体の女の子はそんな事も知らず平和に暮らしているらしい。
まぁ、わざわざこっちに首を突っ込む事はないよね。才能で分離したこじこじがこっちに居るんだから今は才能無しみたいなもんだろうし。
ただ、なんだかちょっとだけもやっとした。
こじこじはこんなに大変な目にあってるのに不公平だなって。
もう登場する事はありませんが、こじこじの元になった子やその姉はダンジョンと関わる事もなく幸せに暮らしております。






