チート能力が許せないJK。
「よしよしもう大丈夫だからね?」
なんだか小さな子供のように泣きじゃくるもちゃはとっても可愛らしかったんだけれど、少し意外だった。
子供っぽい所はあったけどこんなふうに大泣きするキャラだとは思ってなかったんだよね。
それだけお嬢との戦力差がショックだったのか、それとも純粋にセクハラが怖かったのか……。
「ごめんって、もうしないから。ね?」
「……うー、ボクこの人キライ」
「ごめんよう……困ったなぁ……」
お嬢は本気で焦ってる。
あれだけ強い人がこんなに慌ててるっていうのも面白い。
「もちゃ、戦ってみてどうだった?」
「……強いよ。悔しいけど……でもさすがにアレはずるいと思う」
ずるいって言うのは才能の事かな?
「お、じゃあ私の才能がなんなのか分かったのかな?」
「分った。あんなの……早い、じゃ説明がつかない。時間止めてるでしょ」
時間止めるとか最強かよ!! さすが神様候補はやることが違うなぁ。
私が羨望の眼差しをお嬢に向けると、少してれたように頭を掻き、「ちょっと違うんだよね」と呟く。
「……違う? 何が違う?」
もちゃも自分の推察が外れたのが不思議だったのか、さっきまで怖がってたのも忘れてお嬢の言葉を待った。
「私は、時間を停止させるってほどにはまだ力を強化出来て無いよ。ただ、限りなくゆっくりした時間の中を自由に動く事が出来るだけ。私はスロウって呼んでる」
……ゆっくりした時間の中?
「それってお嬢が時間の流れを変えられるって事?」
「どうなんだろうね? その辺はよく分かってないんだ。時間の流れをゆっくりにしてるのか、私の感覚が異常に鋭くなってゆっくりに見えてるだけなのか」
「ゆっくりに見えるだけならあんな動き出来る訳ない」
もちゃはお嬢の説明じゃ納得がいかないみたい。
「そう言われてもねぇ。私も最初はゆっくり見えるだけで、自分もゆっくりしか動けなかったんだよ。そのおかげでゆっくり自分が死ぬところとかを見る羽目になってしんどかったなぁ……」
お嬢は懐かしむように、遠い目をして、嫌な事を思い出したのかしかめっ面をした。
「だからさ、どちらかと言うと感覚が鋭くなってゆっくり見えるだけの才能だったんだよね。いろいろあって龍神のおっちゃんの血が身体に入っちゃってさ……それから急にゆっくりした時間の中で自由に動けるようになったんだ」
確か基地に龍神さんが来た時に、お嬢の事を神の血を取り込んでどうのこうの言ってた気がする。
「要するに、お嬢はもともとあったそのゆっくり見える才能に、神様の力が加わって、周りはゆっくりだけど自分は自由に動ける……そんな感じ?」
私が纏めると、「そうそう♪ それ!」とお嬢が喜ぶ。
「だからゆっくり見えるプラス私がすごい速さで動いてるって可能性と、時間をゆっくりにして私が自由に動けるって可能性の二つがあるんだよ。普段はそんなに早く動ける訳じゃないけどね」
「どっちにしたってずるい。あんなの勝てる訳ない」
確かに、こちらとは生きる時間が違うみたいなもんだし、急に目の前から消えたように見えても仕方ない。勝てってのはさすがに無理がある。
「凄いでしょ? これを使えば誰が相手でもセクハラし放題♪」
神はどうしてこの人にこんな危険な力を与えてしまったんだ。
お嬢は結局すごい力を手に入れても妙な使い道ばかり考える人なのでした。
どこまで本気か、は置いといて。
余談ですが、いつも誤字報告助かってます!!(^_^;)






