ボルテージ振り切れJK。
「おいキャロ! どういう事だ事情を説明しろ!」
なんだか部屋の外が騒がしい。きっとアーニャ達が帰ってきたんだろう。
「さて、私達もオペレーションルームに行こうか」
二人を促して部屋を出ると、案の定廊下でアーニャが騒いでる。
「とにかく中に入ってくれよ。話はそっちで聞けばいいだろう?」
興奮しているアーニャをなだめるように課長がぽんぽんと肩を叩いているが、アーニャはどうにも落ち着かない様子だった。
「ちっ……まぁいい。……丁度良かった。お前らもこっちに来い」
私達に気付いたアーニャが早く部屋に入れと顎で指示を飛ばしてきた。
いつになくアーニャがイラついてる。
そんなにあの軍曹さんってのはヤバい相手だったんだろうか?
とにかく私達もアーニャに続いてオペレーションルームに入る。
既にそこにはこじこじもキャロも居た。キャロは大分楽になったようで呑気にお茶を啜ってる。
「さて、キャロから報告があったその軍曹さんっていう大蜘蛛の件だが、一応以前の報告書は目を通しているので大体の事情は分かってるんだが……今は新入りも居るからね、改めてそこから説明してもらえるかな?」
課長がちゃんと課長らしく場を仕切ってくれたので私達にも軍曹さんの詳細というか、キャロ、アーニャ達の経緯が説明された。
アーニャのダンジョンの話。階層のボスの軍曹さんの話。倒すのにどれだけ苦労したのかなどなど。
「で、確か軍曹さんっていう大蜘蛛はアーニャのトラウマの具現化だったろう? アーニャの固有ダンジョンならともかくどうしてフリーダンジョンなんかに?」
「そうだ。そこだ問題は! あいつが再び現れただけでも大問題だがなんでフリーダンジョンなんかに居るんだ!?」
「そんな事わたくしに言われましても分りませんわ。ただ、間違いなくアレは軍曹さんでしたわ」
「くそっ、そのダンジョンへ今すぐ私を連れていけ! もし本当に奴だったとしたら今度こそ私が……」
……ちょっと黙ってられないなぁこれは。
「アーニャ、新入りだけど遠慮せず言わせてもらうね? ちょっと興奮しすぎ。キャロは今日私達を守りながらすっごく頑張ってくれたんだよ。超人化っていうのまで使ってさ、麻痺しちゃって動けなくなったんだから。アーニャがアレと因縁があるのは分かるんだけど、せめて明日にしてあげて」
「……」
「こりゃ一本取られたんじゃないか? アーニャ、少し頭を冷やしな」
アーニャはまだイラついてはいるものの、多少落ち着いた様子で私にぼそりと「悪かった」と言った。
「謝るなら私じゃなくてキャロに、でしょ?」
「あーもううるさいな……キャロ、悪かった。焦りすぎたよ」
「いいんですわ♪ それよりも、具体的な対策考えて今度こそ!」
……ちょっと論点ズレてない? どうやって倒すかじゃなくてさ、なんでそこに居るのかをはっきりさせるのが大事なんじゃないの?
アーニャにとってはお嬢達と協力して苦労して乗り越えた自分のトラウマがその辺にうろついてる現状が耐えられないのです。






