お城に誘われるJK。
「じゃそういう事で解散っ!」
ハム子課長の合図で私達はぞろぞろと秘密基地から出て、それぞれの目的へ向かう。
ちなみに会社、ではなく秘密基地と呼べというのはハム子課長の命令だ。
「うぅ……まぶし……溶ける……」
建物を出るなりもちゃが陽の光にやられて消滅しそうになる。
「おのれはヴァンパイアか」
「バンパ……?」
「吸血鬼の事。太陽の光を浴びると灰になっちゃうんだよ」
というかヴァンパイアって一般教養の範囲内じゃないの? それくらいは知ってるものと思ってたけど、やっぱりもちゃは余程一般人とは別の環境で生きて来たらしい。
「吸血鬼……ボクは吸血鬼なの?」
「灰になって消えちゃうならそうかもね?」
もちゃがビクビクしながら私の腕を掴む手に力を込めた。
こういう子供っぽいところはとても可愛い。
何も知らないからこそ、どんな事を詰め込まれるかでどんな色にも染まってしまうだろう。
その点において上司がハム子っていうのは丁度良かったのかもしれない。
能天気のアホだった事でもちゃが良くない方向へ染まる事がなかったのかもしれないし、反面教師的なのもあるかもしれない。
「さて、とりあえず広い通りにでてタクシーを拾う♪」
課長は何故か上機嫌でスキップしながら道路へ向かって手を振る。
課長っていくつなんだろう?
見た目的には私達よりも少し年上だろうなとは思うが、それにしてはアホ過ぎる感じがある。
これがただの個性で、ちょっとノリがおかしいだけの人だったらそれでもいいけど、その場合は私が所属している組織の偉い人がヤバい奴という事になってしまうし、メンバーも大体ヤバい奴なので私一人が浮いてしまう。
まともなのが自分だけになってしまったらどんどん周りに感化されておかしくなっていっちゃうに違いない。
そんな事を考えているうちに道路の脇まで辿り着いた。
「ヘイタクシーっ♪」
課長がノリノリでタクシーに合図を送るけど、二台程課長を無視して通り過ぎていった。
ちょっと面白かったけど、このままって訳にも行かないので代わりにタクシーを停めてあげた。
「なんでっ!? 私だけどうしてスルーするのよ……」
「内側からにじみ出る何かを察知したんじゃないの?」
思わずそんな適当な事を言ってしまったが、きっとある意味では当たってる筈だ。
第三者からみたら私達は充分変な奴等なのかもしれない。
もちろん私以外の話だけどね。
そして乗り込んだ先のタクシー運転手が、私達に言った。
「お嬢ちゃんたち、これから一緒にお城に行かないかい?」
……お城??
意外と子供っぽいハム子課長なのでした。
と言っても他の子達から比べて2~3歳上なだけですが。






