感覚が麻痺したJK。
「そう言えば忍者ってどういう事するの? お父さんとかは忍者の仕事してたんでしょ?」
「うん。本当は人に言っちゃだめなんだけど……政府から密書が届いて、その内容通りの事をするのがお仕事。ボクも中学からは仕事してたよ」
「えっ、中学でもう仕事してたの?」
すごいなぁ。私とは根本的に違う。
「仕事の内容は分からないけど、私なんて中学の時は自分の事だけで精一杯だったよ」
「……ううん。ボクも自分の事で精一杯だったから仕事をするしかなかったんだ。だってちゃんとやらないとパパが叱るから……」
そうか、この子も私とある意味では一緒だったのかもしれない。
私は親の期待に応える事ができなかったけど、もちゃは必死に応えたんだ。
それが親の道具になる事だったとしても、それで親が喜ぶなら……。
違うか、それで自分が叱られずに、体罰を受けずに済むなら、なのかもしれない。
「仕事はいろいろだったよ。マスコミに気付かれないように特定の相手に書類を届ける仕事とか、誰かが持ってる都合の悪い証拠品を盗んで来るのとか、暗殺とか」
「……ん、暗殺……? そっか、確かそういう仕事もあるって言ってたっけ……それはパパがやってたの?」
大変な仕事を国から押し付けられた一家だったのかもしれない。それが忍者の生き方だというなら私は何も言えないけど、国の為というよりは一部の権力者の為の仕事……。
「……ボクもやってた。パパは途中から体調を崩しがちだったから、メインはボクだったんだ。万が一気付かれても子供の方が何かと
怪しまれずに済むし」
マジかよ……。
じゃあもちゃは既に殺人を経験しているという事になる。
「でも、ほら今のご時世死んだって蘇生薬で生き返れるでしょ? だからセーフじゃない?」
「セーフ? 生き返られると困るから死体を遺棄するところまでがお仕事だよ。人目のつかないところに隠したり、そもそも人が来ないような場所で殺したり……完全に失踪したって勘違いされるように仕向けたり。国が味方だからバレても多分大丈夫なんだけど、そんな中途半端な仕事はしない」
それを語る時のもちゃの目はとても鋭くて、先ほどまでの子供のような表情ではなかった。
「……何人くらい……殺したの?」
「多分だけど百は行ってないよ。六十までは数えてたけどそれ以上はもう数えるのも面倒だったから正確な数字はわからないや」
百人弱殺してるって事? 普通に考えたら大量殺戮者、大犯罪人だ。
「秘密だからね? 誰にも言っちゃだめだよ?」
「もし……私が誰かに言っちゃったら?」
にっこりともちゃが私に笑いかけて、言う。
「殺すよ。悲しいけれど、そうしなきゃいけないの」
あぁ、恐怖よりも先に、この子なら私を殺せるのかなって、そんな事を考えてしまった。
もちゃは明らかに普通ではありませんが、すでにゆゆこも普通の女の子では無くなっているのでした。






