母性を刺激されるJK。
「で、この布団はどっちに敷けばいい?」
もちゃはワクワクが止まらないという感じで目をキラキラさせながら身を乗り出してくる。
ちょっと……近いって。
私パーソナルスペースは割と確保したい派なんだけどなぁ。
「ねぇねぇ。一階? 二階?」
でもこの子の子供のような目を見てたら断れなくなっちゃったというか、あまり悪い気がしないというか。
「じゃあ二階にお願いできる? 普段は私が使う事になると思うし」
「わかったー」
もちゃは布団の表裏もよく分かってないみたいで、四苦八苦しながら二段ベッドの二階部分に布団を敷いてくれた。
私はそれを下で見てたんだけど、まぁなんていうか当然の事ながらパンツ丸見えだなぁ。
「できたできたーっ! 見てみて来て来て早くこっち!」
「はいはい分かった分かった」
ほんとにこれじゃ無邪気な子供だなぁ。
梯子を上って上にあがるとちょっとだけ天井が低くて頭ぶつけそうになる。
「いでっ!」
昇り切る直前、梯子の最後の一段に足を引っかけてバランスを崩して布団に突っ込んでしまった。
直接布団、ならまだよかったんだけどその間にもちゃが居たんだよね。
「うわっ、だいじょうぶ??」
もちゃのそれなりに育っている胸部とふとんのふわふわのおかげで、引っかけた足以外は全然痛くなかった。
「あーごめん。びっくりしたよね」
「ううん。ボクこんな風に人とくっつくの子供の頃ママにだっこしてもらった時以来だからなんか嬉しいかも」
そう言ってもちゃはそのまま私の身体をぎゅーっと抱きしめてきた。
正直言うとちょっと苦しい。いや、結構痛い。
だけど、あまりに嬉しそうにしてるもんだから別にいっか。ってなってしまう。
私ももしかしたら一人でダンジョン内サバイバルを続けてたから人恋しくなっちゃってたのかもしれない。
「ゆゆあったかい……」
「よしよし」
私の胸に頭を埋めてくるもちゃの頭を撫でる。ぼさぼさだったけど、寝癖が酷い上に整えてないってだけで髪の毛自体はとても綺麗。
本当に妹か何かが出来たみたいな気分だなぁ。
「このまま寝ていい?」
「ダメ」
「どうして?」
「布団のふかふかは分かったかもだけどまだ毛布の気持ちよさを知らないでしょ? ほら、寝るなら中に入ろう」
「うん」
もちゃは素直に私から離れて布団に潜っていった。
ちょっとだけ寂しさを感じるのはなんなんだろう。かなり母性刺激されている感ある。
「……ゆゆも早くこっちきて。一緒じゃないと寝られない」
なんでだよ。……別にいいけど。
私も布団を捲って中に潜る。結構上質な毛布だったらしくて肌触りがすごくいい。
「でも今まで誰かに襲われてもいいようにああやって寝てたんでしょ? どうして急に布団で寝る気になったの?」
疑問だった事を聞いてみて私はちょっと後悔した。
「……ゆゆがね、死んじゃったママにちょっと似てるの。だから……」
この子は母親の面影を感じて、布団で寝たいのではなく私と一緒に寝たかったんだ。
きゅっともちゃが私の手を握る。
私は無言でその手を握り返した。
愛を求めているという意味ではこの二人に大きな共通点がある訳ですが、生きて来た環境がお互い違いすぎるのでそこをどう埋めて行くのかが問題。そんなもの埋める必要も無いのかもしれませんが。






