外の世界へ飛び出すJK。
「ちょっと待ってろ……確かゆゆこっていったっけ? 君を帰還の石に紐づけするから」
「ちょっと待って。ここを出るの?」
私、もう永遠にダンジョンの中に居る事になると思ってたのに……。
ここを出るなんて考えてもみなかった……。
「よし、準備出来た。とにかく君には一度ここから出て、話しておく事があるから一緒に来てもらうぞ」
目まぐるしく状況が変わりすぎてもうどうしたらいいのか、何が正しいのか分からない。
だけど……私にまだ、何か出来る事があるなら。
やる事があるっていうのなら、その流れに乗ってみるのもいいかもしれない。
「わかりました。……じゃあ、よろしくお願いします」
「はいよ。じゃあここ出るぞ」
アーニャさんがそう言い終わる前に、周りの景色は一変してとても懐かしい自分の家に居た。
「……本当に、あの二人はもう……」
「ああ、説明したと思うが君の両親はどこかへ行ってもらったよ。驚くほど君に対して興味が無いようだったが、別にそんな事気にするような状況でもないんだろう?」
ショックと言えばショックなのかもしれない。
だけど、あの両親だったら私なんていなくても生きていけるし、むしろ居ない方が嬉しいだろう。
何せ私はゴキブリで鼠なのだ。
家に住み着いた害虫、もしくは害獣。
あの人達にとっての迷惑の象徴。
だからこそ、私はあの人達の前から消えてあげる事を選んだ。
そしてこの家を捨てた。
……だけど、あの人達がもうここを使わないと言うなら、もう要らないというのなら私はここにいてもいいのかな……。
「さっそくで悪いが一緒に来てくれ。迎えを呼ぶから」
「どこへ行くんですか?」
迎えを呼ぶと言うからには車でも呼ぶんだろう。もしかしたら組織の本部、とか?
「私達の……秘密基地だよ」
そう言ってアーニャさんは笑った。
「秘密基地……なんだか子供の遊びみたいだね」
「それならどれだけ気が楽か。だけどこれはお遊びなんかじゃなく命がけの仕事だ。……ん、返事がきたようだ……ゆゆこ、悪いが近場の学校まで一緒に来てもらうぞ」
アーニャさんはスマホを見つめ、部屋から出て行った。
慌ててその後を追いかけると、既に玄関に立っていた。そのまま家を出て行こうとするので呼び止める。
「待って下さい。どこかへ行くっていうなら、その……せめて着替えを」
「必要ない。君が今着てる服はお嬢……ナビ子がくれたんだろう? ならそれが最適装備だからそのままでいい。これから行く先で着替えは用意するし風呂にも入れる」
お風呂!
そうだ。私はもうずっとお風呂に入れてない。
いい加減気持ち悪くなってきたところだし、それに気付いてしまったら体臭が気になって来た。
臭くないかな……?
自分で自分の匂いを嗅いでいると、アーニャさんに呆れられてしまった。
「君は……とことんマイペースだな。そういう所は私の知り合いに似てるよ」
と、彼女は寂しそうに笑った。
死ねなくなってしまった彼女にとって、戻らない理由は両親だけでしたがそれも解消された今、ダンジョンに居続ける意味も無くなってしまいました。






