才能開花しないJK。
「なぁ、お嬢は本当に何も感じないのか?」
「分んないよ。どうやったらわかるの!? それとなんも見えない!」
「それはすぐ治るって言ってるだろちょっとくらい我慢しろよ」
「やだ」
一番調子に乗ってる時のアーニャを見れなかった時点で私のテンションはだだ下がりだよ。
「私の場合は魔法の才能、あと瞬発力? それと器用さの才能だってさ。魔法以外は抽象的でいまいちどう効果があるか分からないけどな」
「えーいいないいな。私だっていくつか食べたのになんで何もないの?」
本当に才能を開花できない才能でもあるのかなぁ。
後先考えずに残り二つの種を食べてしまおうか迷ったけれど、さすがに勿体ないしアーニャに怒られるから我慢。
「あっ、見えるようになった!」
段々視界が元に戻るとかじゃなくて、全く見えない状態だったのが急に元に戻った。
「なるほど。効果が切れる時はいきなり切れるって事か。これは気を付けないとな。いや、逆に有効利用する事もできるか……」
「なんで私の才能は何もないんだぁぁぁぁっ!」
嘆いている私を無視してアーニャは家に帰ってしまった。
明日またダンジョンに潜ろうと一言残し、私が「またね」という間もなく部屋から出て行く。
どこまでもマイペースな人である。
……しかし私の才能って?
種三つくらい食べてるのに……。
翌日。
学校へ行くと、アーニャが机に突っ伏して拗ねていた。
「アーニャおはよ」
声をかけると、ゆっくり顔をあげてこちらを見てくるが、その表情は暗く、目の下にクマができていた。
「……どしたの?」
「魔法が……使えなくなった」
アーニャは今にも消え入りそうな声で私を見つめてくる。
その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
やだ……めっちゃ可愛いやん。
「でも昨日は使えてたよね? どういう事?」
「そんなの私が聞きたい。 お嬢の方はどうだった?」
「え、私は結局何も分からないままだよ」
「そうか……。どっちが良かったんだろうな」
そう言ってアーニャは再び机に突っ伏してしまう。
アーニャの言うどっちが良かったのかっていうのはきっと、今の彼女のように使えるようになって、使えなくなるパターンと、私のように最初から使えないパターン、どちらの方がダメージが少なかったかって話だろう。
私は私でショックだったんだけどさ、確かに今のアーニャみたいにぬか喜びっていうか、そういうの辛いよね。
拾った宝くじが偶然五億当たってたと思ってくじ引き換えに行ったらそのくじ去年のだった、みたいな。
アーニャはきっと現実離れした何かに恋をしているんだと思う。
ダンジョンだったり、魔法だったり。
彼女にとって日常っていうのは退屈で、心底どうでもいい事なのかもしれない。
……私の事も含めてね。






