あたまのおかしいJK。
次回。
一匹はほぼ役に立たない程に弱っていて、残りの一匹がそいつの前に出て必死に守ろうとしていた。
こいつらも生きる為に必死なんだろう。
わたしを食べる事でこいつらが幸せなんだったら、私はここで永遠にこいつらの食料になる事が正しい答えだったのかもしれない。
だけど私だって生きたい。他の命を奪ってでも、先に進みたい。
ダンジョンの奥へ行きたいという意味じゃない。
私という存在、ここにある心を、少しでも先に進ませたいのだ。
後ろに戻る事が出来ないから。
後戻りできなくなってしまったのだから少しずつでも前に進みたい。
その為には狼だって殺す。
他の命だって奪う。
だけど、この心の痛みだけは忘れないで生きて行こうと決めた。
私はなんとか、元気な一匹を滅多蹴りにして殺す事に成功した。
あとはフラついた一匹だけ。
やっとだ。やっとここまできた。
私は何度食べられただろう?
だから、あと一回くらい。
一回くらいなら……いいよね。
最後の晩餐、という訳じゃないけれど、私は自分がディープキスまでしてしまったその満身創痍な狼に、一度だけ自ら身体を捧げた。
もっとサクっと食べてくれればいいのに、あちこちガタは来てるし口の中も痛いみたいでゆっくりしか食べてくれない。
結局最後まで意識が飛ぶことは無かった。
身体が少しずつ齧られ、抉られ、内臓を引きずり出されてぐちゃぐちゃに散らかされていくのを眺めながら、もっと上手に食べてよ……なんて事を思った。
そして分かった事。
ゆっくりじゅくじゅく再生していく訳じゃなくて、治り出したらとても速かった。
私の身体の千切れた部分から筋肉の繊維みたいなのがしゅるしゅると飛び出して、手足を形作っていく。
同じような感じで内臓も作り直されているんだろうか?
そして私は立ち上がり、自らこの身を捧げた狼の居る場所へ向かう。
魔法陣のすぐ近くにある狼の巣へ。
そいつはもうかなりぐったりしていて、私が近付いてくるのに気付いて顔を上げたけれど、ガルルルと唸るだけで立ち上がらなかった。
私はそのまま魔法陣で次のフロアに行く事も出来た。
だけどそうしなかった。
仕返しがしたかったわけじゃない。
だけど、きっとこのまま放置してもこの狼は数日中に死ぬだろう。
誰にも気付かれる事なく、ひっそりと死んでいくだろう。
私はそんな事とても許せなかった。
いつの間にか私はこの狼に強い愛着を持ってしまっていて、自分でもおかしな感情だと思うんだけど、死ぬのならばこの手で殺してやりたいと思った。
怒りも怨みも無い。
ただ、私とこいつらの間にそういう繋がりを勝手に感じてしまったんだ。
頭のおかしい女だと我ながら思う。
さらに頭のおかしな事に、私はその狼を殺して、
泣きながら、ひどくえずきながら
狼の身体を食べ尽くした。
生きるという事は他の命を奪う事。
それを嫌という程【味わった】JKなのでした。






