人生を終わらせようとするJK。
私はいったい何をやっているんだろう。
こんな所までやってきていったい何をしたいんだろう?
私の家の中にダンジョンが現れたのはつい三日前。
最初はこんな危ない所に入ろうなんて全く考えていなかった。
だけど……。
どうせ死ぬならいっその事、今まで経験した事のない貴重な経験をして死にたい。
そう思ってしまった。
私は家族にとって要らない子というやつで、何をしたって殴られる。
逆に何もしていなくたって蹴り飛ばされる。
そんな毎日だった。
父は私の本当の父親ではなくて、家の中にいる異物か何かだと思っているらしい。
一度、父親に「お前はゴキブリだ」と言われた事があった。
意味が分からなかった。どうして真面目に生きているだけでゴキブリ呼ばわりされなければいけないのだろうと悲しくなった。
だけど今なら分かる。
ゴキブリが家に現れたらどうする? 殺虫剤を吹きかけるか、叩き潰すか……大抵の場合はそのどちらかだろう。
父が言うには私はゴキブリな訳で、だから私は家に現れるゴキブリなのだ。
だとしたら、ゴキブリを発見した人間は私を殺そうとする。
それは当然の流れのように思う。
そう理解してしまった。
それに気付いたのが数日前の夜中で、それからずっと考えていた。
どうやって死のうか。
生きていても意味がない。
母親も私の事は必要ないらしい。
むしろ、自分が旦那に愛される為には私がどうしても邪魔らしくて、「お前なんか生むんじゃなかった」が口癖だった。
母親からしたら私は屋根裏に住み着いた鼠のような物らしい。
生きているだけで鬱陶しくて、目に入らない場所に居たって存在しているという事実が気に入らない。
だけど一度住み着いてしまったら簡単には排除できない。
そういう存在らしい。
唯一私の心の支えだった妹は、一週間前に死んでしまった。
私が高校から帰ると冷たくなっていて、隣の部屋で父がお酒を飲んで寝ていた。
起こして、何があったのかを殴られながら聞き出すと、物音がしたから部屋を見に行ったらもう死んでいたのだそうだ。
嘘。
そんな事は分かってる。どうせ父親が殺したのだ。
妹は、父の本当の娘だったのに。
まだ小学四年生だったのに。
私より全然小さくて、それなのに私と同じように辛い思いをしてきた。
だけど、いつだって笑顔だった。私が生きていられたのは妹のおかげだった。
どうして私は寝ている父親をそのまま殺してしまわなかったのだろう?
心残りがあるとすればそれか。
だけど、もう何もかもどうでもよくなってしまった。
ダンジョンなんて不思議な物が家の中に出来て、一時の未体験を味わって……そして化け物に殺されて終わる。
そんなくそったれな人生が私にはお似合いだと思う。
今まで家族と言う物に縋りついて、そこから抜け出す努力をしてこなかったくそったれな私に相応しい末路だ。
『初めまして。私は……えっと、ナビゲーションのナビ・ゲタ子って言うんだけど……あなたのお名前は?』
いきなり陰鬱な滑り出しですが、今回より第二部スタートです。
新キャラのゴキブリ鼠少女がこの先何を思い、何を糧に生きるのか、もしくは死んでいくのか。
見届けて頂けると幸いです。






