モンスターとJK。
「よーっしでっぱつ!」
「でっぱつってなんだよ」
「出発の出ってでるって漢字だから」
「分ってるよ真面目に答えんな」
ひどい! 聞いてきたから知らないと思って答えてあげたのに!
「ほら行くぞ」
私の家だというのにアーニャが先導して押し入れを開ける。
「ちょっと待ってよー!」
私はいつの間にかほどけていた髪の毛を手早く後ろに纏めて手近にあった紐で縛りながらアーニャを追いかけた。
そこは洞窟の入り口のようになっていて、真っ暗な空間が口を開けている。
一歩足を踏み入れると不思議な事に一瞬でダンジョンの中にワープ……するのだが。
「……あれ、最初と雰囲気違くない?」
「……違うな」
うわー超冷静。
アーニャってばちょっと冷めてんじゃないの?
と思ったけれど、よく見るとニヤリとたちわるい感じに笑ってるのでアレはアレでご機嫌なんだろう。
前回はすっごく綺麗に整えられた通路が迷路みたいになってる感じだったけど、今は結構広々とした空間で、しかも岩とかゴロゴロしてて荒れ地みたい。
「しかしどういう事だ? ダンジョンって毎回入る場所が変わるなんて報告は無かったぞ」
「そーなの? 私はよく知らないけど、これって結構珍しいダンジョンなのかな? 入るたびに中身が変わる! みたいな? なんかゲームでそういうのあったよね」
「それはまだ断言できないな。入るたびに中身が変わるのか、入るたびに飛ばされる場所が変わるだけなのか。何度か試してみないと」
うーん。やっぱりアーニャは賢い。頭いい!
そんな事言うと「あんたが馬鹿なだけだろ」って言われるので褒めてあげない。
「でもでも、さっきと違うんじゃあのデブに仕返しできないじゃん!」
「ばーか。もしもう一度会ったとしても私らがどうやってあんなのと戦うっていうんだ。ちょっとは考えろ」
褒めてないのに馬鹿って言われた!
「……何ショック受けたような顔してるんだよ」
「ショック受けてるんだよ!」
「あんたの馬鹿は今に始まった事じゃないだろ……まぁいいや。少し散策してみよう。使える物が落ちてるかもしれないだろ」
そう、ダンジョンって少し歩くだけで良い物が結構落ちてるんだよね。
例えばその辺に生えてる草は葉っぱが回復薬……俗にいう薬草だし、そこら辺に落ちてる瓶には蘇生薬が入ってる。
誰が置いてるんだか知らないけど。
そんなのを集めて売り捌くのが目的だったんだけど、ぶっちゃけダンジョンには当たり前のようにあるし流通量が多いからあまり高くは買ってもらえないんだよね。
だからもっと面白いものがあったらいいな♪
ダンジョンではレアアイテムの報告もたまにあるみたいだし、そういうのは高く売れるだけじゃなくて国に報告すると報奨金がでるのだ!
「おいお嬢、止まれ」
「アーニャ……? どうしたの?」
「いいから止まれ。音を立てずにゆっくりそこの岩の影に移動するぞ」
なんだなんだ? もしかしてあのデブが居たのかな? だったら今度こそ私のウルトラ天空クロスチョップを食らわせて……ってなんだありゃ。
「アーニャ、あれなぁに?」
「知るか。私に聞くな。でも……あれはどう見ても……」
そうだよね。
どう見てもアレだよね。
世界一有名なモンスター。
そう、奴の名は……!
「スライムだな」
「もう! 私のセリフ取らないでよ!」