大事な事を繰り返すJK。
「お嬢が勇者って呼ばれてるのは偶然あの時試験を受けたのがこいつだったってだけだろ。こじこじがやってたら勇者こじこじになってたさ」
「そうかもしれませんわね」
ちょっとそこ、何二人で私の肩書を偶然手に入れたみたいにしてるの?
「ぐ、偶然だったとしても! 運だって勇者には大事な事なんじゃないかな?」
トントン。
私の言葉が終わる頃、腰のあたりを誰かに叩かれた。
と言っても目の前にアーニャとキャロちゃんが居る時点でこじこじしかいないわけだけど。
振り返ると、こじこじがなんだか哀れむような目で、うんうんとうなずきながら再び私の腰のあたりをトントン叩く。
それはあれか?
よしよし、みたいな感じで肩をトントンやってるつもりなのか?
くっそう……こんな少女にまで哀れまれてしまうとは……。
「皆がそう思っていたければ勝手に思っているがいい! 勇者美麗は実績で勇者である事を示してみせるぞ!」
「ほーそりゃ楽しみだな。せいぜい頑張って龍退治してくれよ。そしたら私達は楽できるからな」
「ごめん嘘。みんなちゃんと手伝って」
「わたくしはちゃんとお手伝いしますわよ♪ なんといいましてもわたくし勇者のお仲間ですもの」
「わたしもにゃー!」
キャロちゃん……こじこじ……。
私はいい仲間を持ったよ。
それに引き換え私を冷めた目で見てくるアーニャときたら……。
私達って恋人同士でいいんですよね?
それとも付き合ってると思ってるの私だけですか?
なんだかちょっと冷たすぎませんか?
それってあれですかね、ダンジョンに入ったから意識が私よりそっちに持っていかれてるって事ですか? 泣くぞ?
「私とダンジョンどっちが大事なのよ!」
「なんだいきなり」
「答えろーっ!」
「……う、あ……りょう、ほう……かな?」
「最低な答えだ! でもちょっと嬉しい」
「なんなんだお前は……」
アーニャがやれやれとため息をつきながら私の頭を軽く小突いた。
それはアレか、あははーこいつー♪ 的なやつか? 多分違うな。
「ほら、めんどくさい女になってないでさっさと行くぞ?」
アーニャが私の手を掴んで引っ張る。
私の手を掴んで引っ張る。
私の手を掴んで引っ張る。
大事な事だから三回言った。
あぁ、この子は間違いなく以前よりも私の事を意識してるし大事にしようとしてくれてる。
ぶっきらぼうだしダンジョン狂いだしすぐ暴力を振るうけれど、それでも私にとっては特別な人。
そして彼女にとっても少しくらいは特別だと思って貰えてるんだろう。
……だよね?
ちょっと不安だけど勝手にそう思う事にしておく。
その方が私のモチベが上がるから。
お嬢は本来自分に自信がある方じゃないので常に不安は感じています。
お気楽な性格でコーティングしているだけの繊細な女の子なのです。多分。






