そして勇者となるJK。
「あの娘一人でやるらしいぞ」
「ああ、可哀そうに。こいつの強さを知らないんだろうな」
適当な事言いやがって……私、それなりに苦戦してあげた方がいいのかな?
盛り上げて盛り上げてからの~ってやった方がいい?
「おいお嬢……あいつらムカつくから本気でやれよ。長引かせるな」
アーニャが私の背中を押す。
だったら期待に応えてあげないとだよね。
最初っから全力で行く!
「ガグルルルル!!」
ライオンみたいなそれは前足を上げて、私に向けて鋭い爪を振り下ろした。
私はスロウを発動しその動きを良く見た上でゆっくりと少し右に逸れ、その身体の下に潜り込んで愛用のバールでその顎をアッパー気味に思い切り振りぬく。
ばぼんっ!!
一瞬でモンスターの頭が吹き飛び、緑色の血液が宙に飛び散る。
奴は何が起きたのか理解出来ていないようにまだ身体が動いていて、さらに腕を振り回して来たのでそれをバールで受け止めつつ、今度は胴体にバールを突き刺し体内に炎をまき散らすと、数秒後に身体が内側からはじけ飛んだ。
きったない色の雨が降り、門番達が「うひゃぁ!」みたいな情けない悲鳴をあげた。
「どう? これでも納得いかない?」
「め、めめめ滅相も無い! 我等の町へようこそ勇者様!!」
そう言うと門番たちは慌ててその大きな門を開いた。
「ねえアーニャ聞いた!? 私勇者様だって!」
「はいはい。良かったな勇者様」
「勇者美麗の誕生ですわね♪」
「勇者のお姉ちゃんになったのにゃ☆」
アーニャの冷めた目とは違ってキャロちゃんとこじこじはぴょんぴょん飛び跳ねながら私の事を褒めてくれた。
「うんうん、君たちは可愛いなぁ。なでまわしちゃる」
私はキャロちゃんとこじこじの頭をわしゃわしゃと撫でたんだけど、ちょっと気になる事が。
「ねぇ門番さん、私達お風呂とか入れてもらえたりしないかな?」
さっきのモンスターの血の雨のせいであちこち緑色なんだよね……。
「はっ! すぐに用意いたしますので!!」
なんだか急に私達に対する態度が変わったのは、それだけ私達の力がちゃんと伝わったって事なんだろう。
さてさて、これからこの町で何が起きるんだろうね。
っていうかこの門の中は町になってたのか……。
なんでダンジョンの中に町があるの?
いろいろ疑問は尽きないけど、とりあえず早くお風呂入りたい。
「お前があんな殺し方するから血の雨が降ったんだぞ……?」
アーニャがぶつくさ言い出した。
「ごめんごめん。アーニャも可愛いよ」
もしかして私が二人だけ可愛がってたから嫉妬してくれたのかな? とか思いあがってアーニャの頭を撫でたら思い切り頭を叩かれた。
まだまだこの子との心の距離は遠い。
ここでいう所の勇者、は読んで字のごとく勇ましい者、であり伝説の勇者様!という訳ではありません(笑)






