惨劇とJK。
「愛菜。そいつらをどうするつもりだ?」
私は……アーニャに嫌がられるのを覚悟で、ポケットの中からイル君を引きずり出した。
一瞬何が起きたのか困惑していたけど、壁に張り付けにされた黒服達を見てイル君の顔色が変わる。
「……馬鹿兄貴が今更何の用だ? 私達はついさっきまでこいつらに締め上げられてたんだぞ? キャロなんて顔を殴られたんだ。誰のせいだと思ってやがる」
「てめぇ入間! 貴様どこに隠れていやがった!? 組長を殺した罰は償ってもらうぞ!」
アーニャは自分の言葉を黒服にかき消されたのがかなりご立腹だったようで、その黒服の脇腹にナイフを飛ばした。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!!」
「愛菜っ! それ以上はダメだ。お前はそんな事するな」
「うるせぇよ! お前のせいでこっちは大変だったんだぞ! 今更ごちゃごちゃ言われる筋合いはねぇんだ。こいつらは絶対しななきゃダメな奴等だ!」
アーニャがイル君を睨みつけ、ナイフを先ほどの黒服に再び飛ばしたが……。
「ぐっ……」
「イル君!? 何やってんの!!」
思わず私も叫ばずにいられなかった。
だって、黒服の前に飛び出したイル君の背中にナイフが深々と突き刺さっていたんだもん。
「……そんな奴等を守ってどうするんだよ。そんな奴等死んで当然だろ!?」
「愛菜。勘違いしないでくれ……こいつらが死んだ方がいい奴等なのは間違いない。だけど、こいつらを殺すのはお前じゃない」
「……何を言って」
そこから先は、意図せずスローに見えてしまった。
イル君が背中から血を流しながら笑いかけ、鋭い目つきで黒服を睨んだかと思うと懐から拳銃を取り出して一発。
凄い音がして黒服の肩のあたりから血が噴き出す。
アーニャも目を丸くして驚いていたけど、イル君は顔色を変えずにもう一発。
今度はその黒服の頭に直撃して血飛沫が舞う。
隣に張り付けにされているもう一人の黒服が絶叫。次は自分だという恐怖で泣き叫ぶ。
イル君は無言でそいつの右肩、左肩、そして腹部を撃ってから脳天に一撃。
出来るだけ苦しませて恐怖を味合わせてから殺しているのかもしれない。
そして……。
「オジキ……なんで薬なんかに手を出した。……いや、それだけじゃない。どうして組長を殺そうだなんて……」
イル君は拳銃をオジキさんの頭に付きつけながら呟いた。
え、どういう事?
組長さんを殺したのはイル君じゃなかったの?
「お前……嵌められたのか?」
アーニャが、消え入りそうな声でイル君の背中に問いかける。
「オジキ……いい事教えてやるよ。組長は生きてる。あんたらが毒盛って倒れてからすぐに俺が闇医者に駆け込んだからな」
「くくくっ……そうかい。これで俺の野望もおしまいかと思うと寂しいが……そのお嬢ちゃん達にまんまとしてやられたよ。特にお前の妹……そいつはカタギにしておくにはもったいな……」
バスン。
オジキさんが言い終わる前に、イル君がその脳天に銃弾を撃ち込んだ。
血まみれになった私の部屋……これどうするんだよ……。
久しぶりに登場したと思ったら急に殺人事件。(;´∀`)






